フリーレンの音楽よかった

フリーレンのアニメを見たんですけども。
独特の空気で戦う作品なので、「普通のよくある戦闘BGMが入ったらぶち壊しになってしまうのでは……」とドキドキしながら視聴していました。
いらん心配で本当によかったです。

フリーレンのフリーレンたる部分っていくつかあると思うのだけど、殺陣がない、苦悶のシーンがない、戦闘に高揚感がない、命を諦めるのが早い、等の「アツいバトルとか良くわからないです」と言わんばかりの淡白さが一番に来ると思っている。暴力嫌いの女性が「痛いの嫌いなんで……」と言いながら描いている様子が目にうかぶ。

少年漫画だと歯をむき出しにして楽しそうに突撃する人も多いので、あの淡白な戦闘シーンに謎の爽快感があった。子供向けの特撮ならまだしも、真面目な作品で多数の民間人の命がかかっている戦闘中に「俺強ぇ~!そしてスタイリッシュ!」みたいな顔をして戦う人を見るのがなんとなくイヤで、そこにカッコいい曲がかかる事にも疑問を感じていたからだと思う。

ただ、戦闘曲といえばテイルズのようなオシャレでカッコいい曲ほどテンションが上がるものなので、それはそれで正解だとは思うのだ。特に子供の頃はドラクエ1~3のような「苦戦してます!」的なしんどい雰囲気の曲が苦手で、FF4くらいがちょうど良かったのを覚えている。そんな中で出会ったのが真・女神転生2の戦闘曲だった。このゲームには戦闘に入る前に”敵と会話を挟む”というシステムがあり、ハイエナの群れに無言でゆっくりと周りを囲まれていくような嫌なリアルさを再現していた。そのリアルさとよく協調した素晴らしい戦闘曲で、エレキギターっぽい「狩ってやるぜ!」という強気な高揚感と「死ぬ死ぬ!やばい!」という緊張感をとてもいいバランスで両立させていた。確かにリアルに戦いなんて起こったらとにかく緊張しているはずで、”焦り”とか”恐怖”とか、”必至感”の中に高揚感があるのが正しいと思ったし、「俺は今、荒廃したこのゲーム世界の中に立っている!」と強く感情移入できたのだった。

ゲームの容量が増え、楽器も自由に使えるようになった頃、サガフロンティア2というのが出た。このBGMがまた凄いもので、何の高揚感も恐怖感も戦闘感もない、妙に穏やかな曲だった。しかも一つの戦闘BGMをアレンジしまくってあらゆる戦闘でこすり倒すという、かなり尖った仕様だった。「そんなにこの曲が気に入ってるの??」と思える、普通な曲だった。このゲームは中世ヨーロッパ風のファンタジーRPGで、大きな歴史の流れをオムニバス形式で辿っていく群像劇なのだが、話が進むほどこの穏やかな戦闘曲がなぜか馴染んできて、なんならカッコよく思えてくるのである。「大局的な目線で進む壮大なストーリー」というプレイヤーの感覚を損なわないように、それでいて飽きさせないようにアレンジしていたのだと、今になれば理解できる。”いい曲か”ではなく、”いかにその場面に合っているか”で名曲になるのだと、このあたりで気が付いた。今でも最高に好きな曲の一つである。

今回フリーレンの3話で対クヴァール戦の際に流れたのは、不穏な空気からのイントロに微かなハープ。(ボス戦の入りがハープ!?)クラシックギターかと思う弾き方で。そしてメインの旋律は多分ケルト音楽の縦笛。戦闘のメインが笛! しかもそれが見事にカッコよくて、フリーレンらしいアイルランドっぽいファンタジー感と女性的できれいな緊張感を演出していましたね! さすが今期の覇権、音楽にもいいスタッフが揃ってる。戦闘曲なのにドラムがほぼなしで、バイオリンを前面に出さずにゆるく重ねて情感をのせるだけだったのも、変にオシャレにならなくてとても良かったですね。ケルトの笛っていうと緩やかな曲や明るい曲が多い印象なのですが、祭のような荒ぶった笛が、戦闘というよりも”戦いの舞”って感じで「今回のフリーレンの為に色々試行錯誤しまして、楽器も曲もフリーレンの為だけに用意させて頂きました!」というスタッフの声が聞けたと思います。大満足です。

ただ、声優業界はいいかげん安元さんと杉田くん以外にも声の低い男性声優を育てていくべきだと思いました。
終わり。

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