内臓と関連痛について

関連痛(2020,Oka,k)
箇所Aに痛みは無いけど、箇所Bのせいで、箇所Aに痛みがある様に見えちゃう

神経系=体性神経+自律神経

・体性神経(運動神経、感覚神経)
→主に随意的(有意識)な活動が主
→運動機能の調整に関与
・自律神経(交感神経、副交感神経)
→主に不随意的(無意識)な活動が主
→内臓機能の調整に関与

内臓の痛み

内臓は感じない

自律神経(交感神経、副交感神経)が刺激されて活動電位を伴う

体性神経(運動神経、感覚神経)の神経路と同じ箇所に合流し通過する

感覚情報が統合された結果、痛みとして認知する
=内臓壁(腹壁)は自由神経終末の存在するので感知する

内臓の状態や正確な判断を確立していくためには、触診や体表解剖を熟知する(例えば肋骨や間隙の触診)能力が必要不可欠!

肺:Th1~4
肝臓:Th7~9
胆のう:C4~5
胃:Th6~L1
十二指腸:Th12~L1
空腸、回腸:Th10~L2
腎臓:Th11~Th12
膵臓:Th9~Th10
大腸:下位腰椎〜仙骨

それを筋(体性神経と自律神経が合流する筋)に該当する部位はこちら↓

ただ、ここで間違えてはならないのは
『必ずここに症状がでる!』
という解釈ではありません。

『ここに出る可能性が考えられる?』
というニュアンスの方が正しいかと思います。

内臓の問題と身体症状がリンクする模式図で表すとこちら↓

特にこの中でも特異的な圧痛点(マックバーネー点みたいな内臓特異的な圧痛点)を示すのがこちら↓

心臓
役割:
拍動による血液循環・運搬
場所:
胸椎5~8番目の高さ
心尖部は第5肋間(第5~6肋骨の間)にある
肺、気管、横隔膜と接触している
関連痛:
左胸部〜左前腕内側 左肩甲骨上角、(左頸部)

この辺に症状が出やすい↓

関係ないかもですが、実は心臓を支えている靭帯があり、胸骨等にも付着しています。

肺(横隔膜)
役割:
呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を排出
場所:
鎖骨の2~3cm上で肺尖部に触れることができる
胸郭を介して聴診可能
関連痛:
頸部〜肩甲帯上部 局所
圧痛点:
第3-4肋骨間隙、第4-5肋骨間隙

↑またもや豆知識。
『最小斜角筋』なるものが実はあるのでは?と言われています。
これは直接、胸膜を持ち上げている事もあるそうです。
確かにこの辺り症状も出るのかな?と合点もいきます。

※横隔膜について(筋だが腱に付着)

起始は
胸骨部:剣状突起に付着
肋骨部:第7~第12肋骨・肋軟骨の内側に付着
腰椎部:腰椎1~4、前縦靭帯に付着

停止は腹直筋腱
神経支配:横隔膜神経

呼吸器、循環器は全て横隔膜の頭側に位置している
  
横隔膜の運動=呼吸循環動態の変更を余儀なくする
(食道、腹部大動脈、下大動脈、大腰筋)


つまり…胸水等があれば横隔膜は上がって来れないし、
腹部大動脈瘤の破裂なんか起ころうもんなら、お腹の中は血の海になりますので、横隔膜の動くスペースなんか当然無くなりますよね。

だから横隔膜周囲の病変って、そもそもやばいのが多いのです。

役割:
食物消化 殺菌
場所:
高さはTh11〜L2付近 食道は心臓の高さから心臓を避ける為、やや右側に蛇行
横行結腸との境目で胃体部に触れることができる
関連痛:
みぞおち部分、後面脊柱中央〜やや左側(支配神経、T6~T9大、小内臓神経、その他腹腔神経節と上腸間膜動脈神経節へ走行)
圧痛点:
左第7(分泌)~8(緊張)肋骨間隙

ここでまた豆知識。
食後は正常では左上方に胃体部の位置が変化していきます。
なので便秘気味とか胃がしんどい時は右側下にして寝るのがおすすめです。

十二指腸

役割:
吸収を促進 空腸への誘導
場所:
臍と右乳頭を結んだ線上の臍から3横指上の位置
関連痛:
みぞ落ち周囲

圧痛点↓

オッティ括約筋:十二指腸下行部に 開口する総胆菅及び膵管の出口にある(括約筋)

小腸

役割:
栄養分の吸収と大腸への輸送
場所:
小腸間膜根をランドマークに(画像参照)
関連痛、圧痛点:
限局した臍周囲

ランドマーク↓

腸(虫垂含む)

役割:
小腸の残りの栄養吸収(主に水分) 不必要物質排出
場所:
S状結腸は腹直筋の直下
左結腸曲は第8肋骨の辺り(左側の方が深い  )
関連痛:
両側腰背部(腸骨上方周囲) 
圧痛点:
下腹部(小腸よりも下)

※大腸でよく多いのは虫垂炎ですね。少し取り上げます。
虫垂の機能:腸内細菌のバランスと免疫保持
虫垂障害症状: 腹痛、発熱、下痢、嘔吐(急性増悪〜12時間)
圧痛点:マックバーニー点(右ASISと臍を結んだ線のASISから1/3)
痛みは徐々に右側上腹部〜下腹部へ移動していく
大腸(腸全体として)蠕動運動あるので圧迫しすぎず適度な圧で。(目安の深さは体の1/3まで)

腎臓

役割:
尿の生成 血中酸素濃度や血圧調整
場所:
 T12〜L3付近右側の腎臓の方が左腎臓よりも下方に位置する(約1.5cm)
長さ12cm 幅7cm 厚さ3cm
※腎臓は大腰筋の前に位置
(よって左腎臓は上行結腸、右腎臓は下行結腸のレベルに位置)
関連痛:
骨盤周囲〜腰背部(腰痛に似た場所)
(経支配T10~L1交感神経、迷走神経、S2~4副交感神経)
圧痛点:T12~L1の横突起間 横突起先端

圧痛点↓




・肝臓

役割:
三大栄養素の代謝 有害物質解毒 胆汁の合成分泌 
場所:
横隔膜の下側、右側 右第6肋間隙〜左第7肋間隙 後面はTh11~12
関連痛:
右頸部〜肩甲帯上背部(支配神経T7〜10大、小内臓神経(交感神経、迷走神経)、肝被膜横隔神経C3~C5) 
圧痛点:
右第5-6肋骨間隙、第6-7肋骨間隙




・胆のう

役割:
胆汁の貯蓄 十二指腸で膵液と中和
場所:
臍と右乳頭の線の中央ほど 肝臓の後下方
関連痛:
胸郭下の右上腹部〜背部


・膵臓

役割:
三大栄養素の消化 血糖値調整
場所:
L1~L3の高さで長さ14~18cm 重さ70~80g
腹腔後壁(背中側)胃の裏にある。(膵頭は膵尾より低い位置にある)
オッティ括約筋から45°角度上方(身体の中央側)
関連痛:
みぞおちよりもやや左側(神経支配、迷走神経とTh5~T11までの交感神経) 
圧痛点:
T7-T8の横突起付近







・脾臓

役割:
免疫、造血(と破血)
場所:
胃の後方にある(胃の大湾より後方)。こぶしぐらいの大きさ。
Th9~11の高さで横隔膜と腎臓と同じ深層
関連痛:
みぞおち、左肩
圧痛点:
下腹部(小腸よりも下)




・膀胱

役割:
蓄尿
場所:
恥骨結合の真裏
関連痛:
直上 
圧痛点:
坐骨結節や大腿内側(鼠蹊部、付け根)




圧痛点↓






内臓の位置関係はなぜ大事なのか?(前項の続き)


理由は検査前の情報を洗いだす為です。
すなわち『検査前確率(Pre-test probability)』の妥当性を判断をする為です。

もっと簡単にいうと『本当に〇〇なのか?』を問う為ですね!


その情報を場所で判断していく事も大事ですよね!↓




上記の様に腹部を分割した時に、問題を想起できるか?は重要ですよね!

要は受傷起点等から現状の観察、確認を行い、情報統合から解釈を行うのが重要ですよね!


そこを基礎として、次に関連痛の要因を確認する必要が出てきます!




例えば『kehr's sign』なるものがあります。

これは、左上腹部、左肩にでる脾臓性関連痛のサインなのですが、
体動や侵害刺激で発生すると言われています。

実際の症例としては、肩痛の訴えがあり『kehr's sign』と判断しました。

そしてCTを取ってみた結果、『脾腫瘍』が横隔膜へ陥入しているのが分かりました↓


それを確認する為にはどうすれば良いか?

それは『侵害刺激を加えてみる』というのも一つの手段です。


例えば、先ほどのkehr's signで例えるなら↓

内臓に位置する部分を押圧してみて、肩症状の再現性を確認します。
(もちろん、急性外傷の場合もありますので、適応とリスクは当然考慮してくださいね!)


だから、冒頭でも伝えた様に『内臓の場所の知識』はred flagの確認に必須な知識と言えます。



また『Differential Diagnosis』を行うとするならば、上記知識に加えて『Carnett's sign』という手段もあります。



『Carnett's sign』↓



・方法
①腹部の圧痛所見を確認し、被験者に背臥位で両腕を胸の前で交差する
②圧痛が最も強い部位に検査者の手を置く
③被験者は頭部を前方に挙上させ、腹壁を膨隆(緊張)させる
④③の部位で①と同じ部位の圧痛所見を再度確認する

・判定基準
①圧痛減弱→陰性(不確定)→腹腔内臓(虫垂炎等)由来の疼痛
②圧痛不変or増悪→陽性→腹壁(腹腔外、腹直筋等)由来の疼痛

↓この報告によると『Carnett's sign』は感度88%と特異度97%らしいです



以下のサイトを読んで覚えておきたい内容を転載してます

https://note.com/medicallab/n/n265224ea05db

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