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【作らない日常をどう作る?】もぐもぐMV考察#2「yonige / リボルバー」


はじめに

映像制作活動のアウトプットとしてなにかできないかということで、このnoteを書いています。
都内で副業映像クリエイターをしているまひかんと申します。


今回は、よくライブでも演奏されるyonigeの代表曲
「リボルバー」のMVについてゆるく考察していきたいと思います。


制作情報

出演:若葉竜也
監督:山口保幸

YouTube概要欄より引用


ジャンル

  • バンド

  • ロック


目を引いたポイント

自分がこのMVを初めて見たとき感じたのは
「なんだこいつ!!しゃんとせえ!!!」でした笑

基本的に登場する男性がダラダラと日常を過ごしていくカットで進行していくのですが、
このMVは本気でなんだこのグータラ男… と思わせてくれます。

こういった日常を映す系のMVを見るたびに自分は
日常感を演出しようとしてなんか画が浮いてるな…」と感じてしまいがちなのですが、
このMVに関しては特にその気持ちになることもなく
素直に映像にのめり込むことができました。

歌詞の内容からこの曲は
「既に終わった元恋人(彼氏)のことを思いつつも、すでに冷め切った比較的ドライな女性の感情」
を歌う曲であると思われます。

ゆえに登場するこの男性はその女性の元カレなわけですが、
いかにダメ男に見せるか、
いかに時間を無駄に過ごしているように見せるか("限られたMVの時間の中で"というある種逆説的な)
という点に注視して
今回はその演出方法を僕なりに考えていこうと思います。

撮影について

全カット手持ち撮影かと思われます。
もしかしたらFixにあとで手振れエフェクト入れたりしてるカットもあるかもですが。

すべて手持ち=手振れカットであるのには意味があると思っていて
今回のテーマである日常感の切り取りの演出には

「おもしろ同居人を盗撮しているような感覚」

が大切なのかなと個人的に感じました。

MVにドラマパートがある場合、たいていは決められた演技があり
その通り動いていくことで意図した演出を作り上げていると思います。

では、今回のような「本物の日常感」を切り取るようなドラマパートはどう演出するか。
具体的に以下のキーワードにまとめてみました。

  1. 被写体に感情を一切持たせない

  2. 被写体に気づかれない位置取り

  3. 残骸、事後カット


結局、日常感を意図して演出しようとしても浮きがちに見えてしまうのは
意図してるから、に尽きると思います。

ほどんどの人は普段、感情のスイッチをオフにして生きていると思います。
疲れちゃいますからね。
ゲームしてても無言、インスタントラーメン食べてても何も思いません。
「ヨッシャー!」とか「うんま!!!」とか言ってるのはタレントかYouTuberくらいです。

本当の日常には基本、感情は生まれないんです。
それがこの生っぽさのひとつかなと。


そして画角的な観点で被写体に気づかれない位置取り=盗撮感
というのもあるかと思っています。

すべてがその画角のカットではないですが、
盗撮感を感じさせるほとんどのカットには
登場人物の間抜けさ人間味を感じました。

盗撮してる=こちらに気づかない=素の状態である
ということが、この人普段からこうなんだなという安心感を与えてくれます。


そして残骸、事後カット
これは前半のラーメンや昼寝のカットの回収にもなっていますが、
脱ぎ捨てられっぱなしのジャージや汚ったないシンクが
だらしない=虚無=時間の浪費 を感じさせ、
ダメ男演出にとどめの一撃を加えてくれています。

ただただモノ撮りしているのではなく、
時間や出来事を感じさせてくれるアイテムにフォーカスして演出しているところが
計算されつくしていて素晴らしいなと感じますね。

編集について

カット編集のみで構成されています。

日常にフォーカスした映像ということもあり、
下手な演出は不要ということだと思われます。

ひとつグッとくるポイントとして、
最後男性が屋上でタバコを吸うシーン(ライター付かなくて吸えてないけど笑)にあわせて
ボーカルもその男性の背中にめがけて熱唱するような横顔カットが多用されていたのが
ふたりの関係性を表していて印象的でした。


※補足
最後に男性のもとに元カノが現れて戻ってくる演出があるのですが、
その際ちらっと見える足がボーカルのジーンズと一致しているので、
映像上の設定では男性の元カノ=ボーカル ということかと思われます。


もし自分が再現するなら

この世界観をどれだけ再現できるかは、
あの部屋のリアリティをどこまで深くイメージして小道具を配置し、
汚せるかにかかっていると思います。

単純にハウススタジオを借りて小道具を配置しただけでは
そこに住んでいる感を引き出せないかなと。


例えばこのカット。
今までは2人で使っていたけど、今は1人しか使ってないので
1つだけが開きっぱなしの傘。
だらしない男だけが家に残されているからこそのリアリティ。
凄い追求。




予算感は
小道具セット代に2万円
スタジオ代に5万円(6h)
衣装代に1万円
機材レンタルに2万円
ワンオペ撮影で十分といったところでしょうか。
もっと抑えられそうです。

さいごに

けだるい日常の映像とyonigeの世界観が融合した、
曲をより引き出す非常に良いMVだと改めて感じました。

日常を撮るという行為は、
なにか奇抜な、作られた世界観での映像表現よりも
もっとずっと色々なことを考え抜かなければならない。

積み上げてきた人生経験の中で磨かれた
共感力、予測力、言語化能力、記憶の再現力。

センスという能力だけでは絶対に表現することのできない
表現者の生きてきた証がモノを言う映像なのだなと思います。

ではまた次回。

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