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読まれて完成

漫画読んでくれてありがとう


こんにちは。
前回の記事でも書いたようにジャンプ+に読み切りの漫画が掲載されました。


以前連載していたマンガの終了から実に7ヶ月ぶりの掲載、ということでたくさん読んでもらえてうれしかったぜ!
もちろんそのあいだも趣味でTwitterに漫画載せたりとか同人誌出したりとかはしてたわけですが、それらはやっぱりどうしても基本的に知ってる人が読んでくれてるわけで、こうしたメディア上に載ることでぜんぜん縁のない人に読んでもらえるのは格別の喜びがあるしうれしいしおもしろい。やっぱり漫画が載るのはええなぁ〜と思いました。

そして前々からうっすらと思ってはいたことなのですが漫画って──いや、別に漫画に限らず小説でもエッセイでも記事でも写真でもなんでもそうなのかもしれないけど──実は描き終わった(今回はもつさんに描いてもらってるわけですが)ときではなくて、読み終えてもらったときにはじめて完成するんじゃねーかと改めて思ったわけです。


意図してなかった読まれ方をされるとうれしい

なんだろう、こう、いわゆる「読まれるとうれしいしありがたいし感想を読むと励みになるからうれしいぜ!」ってだけの話ではなくて……もちろんそういう側面はあるんだけども!

例えば今回の漫画で言うと私としては完全に
「変な商品作ったコメディ」
として描いたつもりだったんですね。オチも含めて「こういううすら不気味な感じでヌルーっと終わるギャグ」として描いたつもりだったんだけど、まず担当さんから「世にも奇妙な~みたいな話ですね!」って言われて「えっ そう思われるのか」と意外に思ったんです。本人は。

で、公開されてみるとこれがまた結構思ってたより「世にも奇妙だ!」「ホラーじゃねえか」という反応があって驚いたし、おもしれぇ~って思った。

これ、もちろん「そこをうまく誘導できてないからお前はバカ! アンコ―トラブル!」と言われたらはいそうですって感じだし、「そういうつもりじゃなかったんだけど意図してない読まれ方をされた結果つまんながられてるよぉ~」ってトホホなパターンももちろんあるし、むしろ作り手としては反省するべきなのかもしれないんだけども、私としてはむしろそこがおもしれえな~、とすごく思っていて……。

もちろんオチ以外についても「そこはそう思うんだ!」「全然ウケてもらうつもりなかったところがウケてる! そこがおもしろいの?」みたいなこと、今回の漫画に限らずすごくあるんですね。そういう、「描いた私本人が全然意図してない反応」ってめちゃめちゃうれしくなってしまう。なんか、「私が描いた"先"がまだあったんだ……」みたいな……。「これってさあ! "自然"みたいじゃん!?」みたいな感じがして楽しい。ファジーなのがいい。

漫画は君たちの中にある

つまりどういうことなのかっていうと漫画って本当は「描かれた・印刷された紙」とか「画像データ」みたいなところには存在しないんですよ。一般的にはそこに存在していると思われがちなんだけれども。漫画の単行本がみなさんの家の本棚にもあると思うんだけど、実はそれらは漫画ではない。おそらく……(何言ってんだ?)。

じゃあ漫画ってどこにあるんだよって言うとそれは読んだ人の脳に発生してるんですね。読んで、「ふーん」って思ってるそのときの頭の中っ! それが漫画です。読んでいるものは媒介に過ぎない。

だから読んでる人の経験とか体調とかでいろんな解釈や感想が発生するし……なんなら描いた本人が意図してない物語が読んだ人のなかに発生するッッ! そのひとつひとつが全部漫画です。なんだこの話? 読んだ人の数だけ、その漫画を「基点」とした無限のパラレルワールド……マルチバース……が生まれている。それぞれの頭の中に。俺たちは同じ世界を生きているようで生きていないんだッッッ!

つまり口内調味みたいなもんです。私がお米を作ったとする。それを買って、炊いてご飯にした人たちがいる。でもそのご飯は炊いた人たちの家庭それぞれで魚といっしょに食べたり漬物といっしょに食べたりするわけじゃないですか。それぞれ違う体験が発生するわけですね。でもその人達はその体験をもとに「このご飯うまいな」「マッズ なんだこのご飯」と思ったりするわけです。漫画も一緒。それぞれの生き方を元にそれぞれの体験が発生する。だから「読まれて完成」なんです。「描き終わって完成」じゃない。

よく「読んでくれる人たちがいてこその漫画っす!」みたいな言い方があるけど、あれは単に需要とか売上の話じゃなくて……いや需要とか売上の話をしてるんだけどね! 世の中一般的なアレは!! でも実際はそれ以上にマジで「作品の完成」に貢献しているというか紡いでくれているんです。読んでくれた人たちは。

そしていわゆる「感想」というものはそうした無数に分岐していった物語を間接的に私たち描いたサイドに伝えてくれているわけです。俺が描いた漫画が無数になってる!!! 
だからうれしい。だから「俺が描いた漫画だけど……そうだったのか!!」ってなる。この刺激がいちばん脳にいい。そしてそうしたフィードバックを元に我々は次の漫画なりなんなりが描けるわけです。そしてそういう関係がなんか……ありがてえしおもしれえなあって思った! 今回改めて!!

ものすごくまとまりの無い話になったけども、そういうことを常々考えていておもしろいなあ、不思議だなあと思っています。書くと頭のなかに刻まれるので書いてよかった。また漫画を描くので掲載されたら読んで、みなさんの中で「完成」させてください。そして聞かせてくれ……君たちのなかに生まれた私の漫画の物語を……。

pixivFANBOXでは今回の漫画の制作秘話的なことも書いてるので、興味があったら読んでみてください。

ちなみにサムネに使ってる画像は今回の漫画とも今後の商業活動ともとくに関係なくコミティアの原稿です。

以前ジャンプ+で連載していた『スシシスターハンター』という漫画の外伝の下巻が9月のコミティアで出せたらいいな~~と思っているのでよろしくおねがいします。

https://tomoko.booth.pm/

上巻はいま買えます。
では………。

読んだ人は気が向いたら「100円くらいの価値はあったな」「この1000円で昼飯でも食いな」てきにおひねりをくれるとよろこびます