二〇一六年九月の短歌
埃舞う小道に落ちた無花果がむんと匂いしトスカーナの夏
さざめきとコルク抜く音響きおり夜に溶けゆく古都ヴェネツィアよ
不機嫌なゴンドラ漕ぎが空仰ぎキャノチェのリボン潮風に舞い
夢だったきれいなジェラートふたすくい小さな私に見せびらかして
きゅうくつなジーンズの裾を折り曲げてティレニアの海泡立てる君
革靴をきゅっと鳴らしてイタリアの粋な男が早足で駆け
炎天下日傘の先に鎌首をもたげる蛇の揺れる舌先
コンビニの肉まん恋し欧州のささやかな秋、冬のはじまり
夏はもう行ってしまった我が街のホップの畑に猫が寝ており
路地裏のギリシャ料理と夜のにおいもうすぐ秋ねと手つなぎなおす
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