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巡礼6日目〈ロルカ~ビジャマヨール・デ・モンハルディン、18.4km〉

昨夜のビジャマヨール・デ・モンハルディンでは、夫が先に日記を書いているのを待っている間に眠ってしまったので(やっぱりノートは2冊にわけるべきだったかもしれない)、翌日のビアナのアルベルゲでこれを書いている。

ロルカでのお祭り騒ぎは、夫によると午前3時ごろまで続いていたらしい。

朝、荷物を整えて階下に降りて行ったが、宿のスタッフの姿がどこにもない(おそらく二日酔いだろう)。「だからスペイン人は……」なんてぶつぶつと文句を言う夫をなだめながらとりあえず朝食はあきらめ、バカ騒ぎを引きずった若者たちがたむろする道を抜けて出発した。

彼らの、一生この小さな町を出るつもりのないような、どこかあきらめたような眼差しが妙に心に残る。彼らは、体をいじめつくす上にお金にもならない徒歩の旅を続けている私たちをなんてバカなんだと思っているに違いない。

まあ、想像してみると、自分の地元に妙に目をキラキラさせた人たちが次から次にやってきて、旅の素晴らしさを語って、一晩を過ごしてまた足をひきずりながら去っていく……こちらはこの土地で退屈な毎日を生きていかなきゃいけないのに、延々とそんな日々が続いたら、まあ、ちょっとはバカなやつらだと思って、すねた目で彼らのことを見るかもしれない。

夫の体調が引き続き良くなかったので、お昼過ぎには目的の町、ビジャマヨール・デ・モンハルディンへ着き、アルベルゲに腰を落ち着けた。

アルベルゲは2013年にオープンしたばかりとかで、とてもきれいで居心地がよく、ドイツ人らしく清潔にうるさい夫は満足気だ。シャワーと洗濯を済ませると、夫は風邪を癒すために早々に昼寝に入ってしまい、私はすっかり退屈してしまい、iPhoneを眺めたり、2冊だけ持ってきていた本(パウロ・コエーリョの『アルケミスト』と、村上春樹の『遠い太鼓』。どちらも旅の途中に読みたくなるので持ってきた)をぱらぱらとめくったりしていた。

夜7時頃になって夫を起こして、近所に一軒だけ開いていたバルへ夕食をとりに向かう。しかしその食事がひどかった! 冷凍食品を温めるだけなのは仕方ないとしても、ところどころ冷たいパスタ、不味いワイン、なぜか石油みたいな味がする形成肉など、同席していたほかの旅人たちのムードも急降下だ。

イタリア人男性はワインに文句をつけ、ドイツ人のおばさんはもう一度温め直せと皿を突き返す。向こうのほうに座っていたおじいちゃん(国籍不明)は、パスタをひと口食べて、悲しそうにフォークをそっと置いた。

かくいう私もやりきれない気持ちになって、無口な夫に「なにか面白いことを話せ」と八つ当たり。美味しい食事って、精神的にも本当に大事だ。

アルベルゲに戻って、ベッドに横になりながら窓から夕闇がせまる空を眺めていた。空を黒い鳥がついと横切る。同室の旅人たちはもう、シーツにもぐりこんで丸くなっている。「私はなんでこんなところでこんなことをしているんだろう?」とちょっと不思議な気持ちになる。まだ旅に出ている実感がない。

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※夫の手記はハフィントンポストで連載しています。→徒歩の旅に必須の秘密道具とは...?

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