巡礼10日目〈アソフラ~ビジャマヨール・デル・リオ、33.4km〉

風邪も治りきっていないのに、33.4kmの行軍。くたびれてくたびれてボロ雑巾みたいだ。

でも今日の巡礼路では、素晴らしい景色に出会った。まっすぐに伸びる道、青々と育った麦畑、そして雪のような綿を降らせるポプラの木々! 陽光のなか静かに雪が舞っているようで、白昼夢とはこのことかと思う。

道中、スペインらしい広大な田園地帯(私には素晴らしい風景に見える)に、「なんて人工的な景色なんだ」「虫がぜんぜんいないじゃないか」なんてブツブツ文句を言っていた夫も言葉を失っていて、自然に手をつなぎ合って、ああ、ここに来てよかったと心から思う。

当初の目的の町、ビロリア・デ・リオハ(Viloria de Rioja)に着き、さっそくアルベルゲにチェックインしようとすると、なんとclosedの札が! ガイドブックには、この町に1軒きりの宿だとある。

夫はあきらめモードで「もういっちょ歩くしかないね」という顔をしていたが、私はしつこくドアをノックしてみたり、電話をかけてみたり……。しまいには宿の前に座り込んでしまったけれど、致し方なし。半泣きで重たいお尻を上げ、約4km先にある次の町へ向かって歩き出した。

到着したビジャマヨール・デル・リオ(Villamayor del Rio)で、少し本道からそれたアルベルゲにチェックインすると、家庭的ないい雰囲気。気持ちのよい庭に、同室の感じのいいアメリカ人カップル、美味しい手作りの夕食。報われた気分になる。

それにもうひとつ、いいことがあった。なくしたと思っていたお気に入りの手ぬぐいがポンチョのポケットのなかから出てきたのだ。そうそう、そうだった、柄は歌舞伎の隈取だった。こんなささいなことが、とてもうれしい。

清潔なシーツがうれしい。手作りのスープがうれしい。夫と手をつなげることがうれしい。この旅に出て、「幸せを感じるボーダーライン」がぐっと下がってきているみたいだ。

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※夫の手記はハフィントンポストで連載しています。→"人工的な自然"とゴーストタウン


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サンティアゴ巡礼記

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