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大竹しのぶの「ピアフ」と映画「グレイティスト・ショーマン」


今年の大ヒット映画「グレイティスト・ショーマン」
あなたはご覧になっただろうか?



楽しみに観に行ったが、噂や評判に首を傾げた
そんなに良かった???


「La La Land」に続く第二弾!とプロモーションも華々しく
歌やダンスが素晴らしかったし、絵本をめくるような展開だった
全然良くなかったとは思わないが、騒ぐほど良かったか???


たくさんお金をかけたことは、めっちゃ伝わった


華やかだけど、やたらやかましく
大事なテーマはおざなりに、ヒュー・ジャックマンさまのための映画
「レ・ミゼラブル」の方が良かったなー



年末になり、やっぱり「2018年大ヒット映画!」と紹介されるが
わたしの何かがそれに違和感を唱える








いい映画がいっぱいあった2018年だったのに
なぜ「グレイティスト・ショーマン」を引っ張り出したのかと言うと
大竹しのぶさん主演の「ピアフ」を観たから


何度も何度もカーテンコールが起き、スタンディング・オベーション
サブイボものだった(鳥肌が立つ、関西版の言い方)
それは、大竹しのぶさんだから起こったことではなく
「全員野球」と言えばわかるだろうか



舞台の使い方に何度も驚かされた
緞帳の内側に一枚の大きな布が、戦争が終わった時のフランス国旗になったり、ボクサーの彼のシルエットを写すスクリーンになったり
その彼と過ごすシーツになったり



イブ・モンタン役の「帰れソレントへ」の熱唱も素晴らしく
キャスト全員での力強い歌声もこころに残っている



大竹しのぶさん以外の役者さんは
二つ三つと役を持ち、それが全く違う人物として演じ分けられ
同一人物だと知ったのは、帰ってきてアレコレ調べてからだった



一番最後のカーテンコールでピアフが大竹しのぶさんに戻って
いつもの声あの話し方で、今日のこの拍手をスタッフに伝えます、と
舞台に出た役者さんたちと一緒に後ろを向いて、スタッフに拍手を贈った



力のあるスタッフ・役者が一体となったから
予想以上の化学反応が起こり、この舞台が出来上がった
大竹しのぶさんひとりで、それが起きたのではなく
みんなの力なんだ、とあの場にいたすべての人が納得しただろう



確かに、女優「大竹しのぶ」さんはすごかった
若き日のピアフから死の直前まで、年齢によって声や歩き方がちがい
歌のシーンなど、ピアフを実際には見ていないが
「わたし全部で歌う」というあのセリフ通り
貧しい生まれのつらい経験がバックにあるピアフそのものだった



ポスターの「ピアフが大竹しのぶに舞い降りた」は
嘘でも誇張でもなく、まさにピタリと言い当てた感がある






華やかなのは「グレイティスト・ショーマン」だろう
ところが「すべての人の素晴らしさ、可能性」というテーマが
あっという間に何処かへ消え去り
ひたすらヒュー・ジャックマンにすり寄る内容の薄っぺらさ

「グレイティスト・ショーマン」も全員野球になり得る内容だし
どうしてならないのか不思議なくらいだ


https://youtu.be/g91RzJqMNhU


この動画を見て、あの映画だってきっとたくさんの人が関わり
熱い気持ちで試行錯誤を重ねて完成したものだろうに
この動画の情熱が、映画全体にすべてのキャスト・スタッフに共有されていたら、おそらくちがっただろう


ひとりひとりの力量や情熱は素晴らしいものだったことは
メイキングを見たらわかるが
すべてのキャスト・スタッフを活かしきれなかったストーリーの流れや
編集での失敗だろう



調べてみると、脚本に感動したヒュー・ジャックマンが動き
彼が監督を選んだらしい
なるほど・・・
役者が製作に関わったり、監督をしたりと言うのは時々聞くが
これから、ヒュー・ジャックマンが出る作品は気をつけよう(笑)



この映画は観客からは高評価、批評家からは低評価らしいが
わたしのまわりでも「良くなかった」と言う人がチラホラいた
日本でのこれだけの取り上げは、やっぱりスポンサーとかお金がらみ?








今、大ヒット中の映画「ボヘミアンラプソディー」で
空中分解状態だったQueenのメンバーにフレディが謝り
もう一度、一緒にやろうと言うシーンがある


ソロアルバムを作っていたフレディはトップミュージシャンを集めるが
みんな自分のいいなりで意見を言わない
ひとりひとりが特別で、みんながいてこそのバンドなんだと
再び結束を固める


アレ、なのだ
「グレイティスト・ショーマン」に足りなかったものは
冷静に全体を見ることができておらず
ひとりひとりのキャストを映画に反映させられてない





ヒュー・ジャックマンはあの映画のラストシーンで
象に乗って家族との待ち合わせに現れた

大竹しのぶは、ラストに身ひとつで立ち歌った
小柄な彼女が大きく見えた ピアフがそこにいた



演出自体がすべてを物語っている





これでおわかり頂けただろうか


スターがいればいいものになる訳ではないのだ
一番のムードメーカーであるだけに
全体が立たなければ自分も輝かないのだ


大きなちがいは「主役のあり方」なんだろう



最近、映画が変わってきた
美男美女で夢のようなロマンチックなストーリー
かつての王道だったものが影を潜め


時代を反映し
多様性に富み、社会を反映し、生身の人間が描かれるものが
増えてきたように思う


今、多くの人が求めているものって
「グレイティスト・ショーマン」のような主人公の山あり谷あり
過ちを安易に許され、家族の絆が一番よ!みたいな単純な話ではなく


たとえ一部でもリアルな世界を映し生きるひとや命
あなたはどう思いますか?と問いかけるようなもの、ちゃうやろか







孤独に負けそうになりながら歌ってきた
歌が上手いだけじゃない人としての弱さも見せたピアフの生き様
それをスタッフ・キャストが全力で表現した、その熱


久しぶりに舞台を観に行ったが、ナマっていい!




自分がええなぁ、おもしろいなと思うもので人とつながり、楽しく働けたらなぁ。