好きなグループに感じていた価値の話

<前提>
楽曲の肯定派も否定派も、本件以降に応援し続けるファンも降りるファンも、千差万別であると思っています。あくまでこれは私の考え方ということを念頭に置いていただけると幸いです。

はじめに

SOLDIER LOVEを発端とする運営、メンバーの対応で感じていたことについて、気持ちの整理のためにまとめてみる。

本件について、正しいかどうかではなく、何が自分にとって許せなくて、何にがっかりして、自分はどうしてほしかったのかを昨年末からずっと考えていた。運営の対応にがっかりする気持ちがある一方で、メンバー個人の善性への信頼や、好ましく思う気持ちも残っていて、気持ちが揺れていた。

自問自答しながら考える中で、元々自分がランぺに感じていた価値と損なわれてしまった価値に焦点をあてて、思考を整理してみた。

■「アイドルかアーティストか」議論


これは、ランペにかかわらず、LDH全体においてファンの間で(ときにはメンバーにおいても)たびたび議論になるホットワードだ。

だいぶ昔にRHYMESTAR宇多丸さんのラジオで某アイドル好きの方が言っていた「アイドルとは、魅力が実力を凌駕する存在である」という言説が自分にとってはわかりやすく、この話題が持ち上がる度に思い出している。
(当時自分はモノノフだったので実感値も高かった)

メンバーやファンの間でよく言われている「アイドルじゃなくてアーティスト」論だけど、私はアイドルとアーティストの両方を兼ね備えていると常々考えていた。そして、「アーティスト」としての実力と「アイドル」としての魅力が双方高く感じられたのが(自分にとっての)RAMPAGEの「ブランド」だった。

ここで言う「実力」とは、ダンスパフォーマンスのスキルの高さ、自分たちでコレオやトラックを生み出せるクリエイティビティ、ボーカルの歌唱力、メンバーの端正なビジュアル、ライブの構成力、楽曲の良さ、歌詞の良さなどを指す。すなわち「実力」とは、家電で言うなら「機能性」、製品や取引先企業に置き換えるなら「コストが安い」「スペックが高い」といった実益で感じられるメリットとも言える。

では「魅力」とは何か。メンバーがプライベートでも仲がよさそうで見ていて楽しいところ、(MA55VEなど)個々のクリエイティビティを比較的のびのびと表現できる環境、メンバーがみな素直で根がいい子だと思えるところ、前向きに頑張る姿を見てこちらも元気をもらえるところ、自分の感情が動かされる歌のメッセージなど。総じて、メンバーやグループを応援したいと思わせる力「魅力」だと捉えている。家電で言うなら「デザイン性やストーリー」、企業に置き換えるなら「ブランドパーパス」「取引先としての信頼性」とも言えるかもしれない。


■自分にとってランぺのブランド価値とはなにか

話が少し変わるけれど、毎日、イスラエルによる終わりの見えないガザへの侵攻と虐殺に心を痛めている。不勉強でこれまであまり知らなかった「シオニズム」という考え方や、それを支持している企業が身近に多数あることも知った。知らないことがたくさんあり恥ずかしい思いでいっぱいだが、少しずつ勉強していきたいと思う。

先に述べたシオニスト企業として、代表的なものがスターバックスとマクドナルドだ。以前は、多数あるカフェからスタバを選ぶことも多かったし、マックの月見バーガーやグラコロも大好きだった。しかし、今はそれらも食べたいと思えなくなってしまった。味が落ちたのではなく、企業を応援したくないからだ。前述の話と言葉を合わせるなら、自分にとって味や立地の良さという「実力」は変わっていないけれど、ブランドパーパスや信頼性という「魅力」が損なわれてしまった。

ランぺの件もこれと同じで、グループの「実力」は変わっていない(むしろ技術は高くなっているだろう)けれど、「魅力」の部分が自分にとっては格段に目減りしてしまった。

16NRツアーで彼らのパフォーマンスを見たときの興奮と感動、ワクワク感、ランぺのみんなから元気をもらえたことで、ライブというスペシャルな体験を糧に、明日からも自分の日常を頑張ろうと前向きな気持ちになった。

ただ、SOLDIER LOVEの一件を経て、気持ちに揺らぎが生まれてしまった。年末のグループ合同ライブでは、16人ならではの迫力あるダンスパフォーマンスや観客への煽り、好きだった楽曲も、かっこよさは感じながらも、どこか上の空で眺めていた。彼らのパフォーマンスのクオリティは下がっていないのに、受け取れる幸せの量が格段に減っていることを、彼らが一番得意とするライブの場で実感してしまった。

12/18にSOLDIER LOVEの先行配信がされた際、ファンの中でも「この歌詞は受け入れられない」「誤解を生みかねない」という意見が多数上がった。

私も歌詞を読んで、その言葉選びから帝国主義の肯定戦争賛美と取られる危惧を感じ、FCの問い合わせフォームより意見を送った。誹謗中傷に近い強い言葉で非難している人もゼロではなかったと思うが、この時点で自分の目に入る範囲では、批判しているファンもつとめて冷静に問題点を指摘しているように見えた。

当然、歌詞に問題がないと肯定するファンも多くいた。しかし、どちらにせよファンの間でも意見が分かれ分断が生まれてしまった。ただ、肯定派も否定派も、ピリピリしてはいたものの一部を除いて冷静に自論を述べているファンが多かったように思う。

12/22には年末の大型音楽番組で同曲が披露される予定があった。そのため、批判しているファンの多くは「せめて該当の歌詞だけでも差し替えられないか」「字幕をオフにするだけでも対応できないか」と気を揉んでいたように思う。しかし、グループの公式サイト・SNSやメンバーから本件に対してのレスポンスはなく、番組の数時間前に 「SOLDIER LOVE」に込めた想いに関しまして というステートメントだけが、avexの公式サイトにてひっそりと公開された。

番組で予定通り披露されたパフォーマンスをもとに、(事前にファンが危惧していた)歌詞のみならず、ファシズムの肯定や白人至上主義団体を想起させるコレオや衣装がファン以外の目に留まり、SNSであっという間に拡散され炎上した(ちなみにあれがナチ式敬礼にあたるかどうかについては自分は懐疑的な立場だ)。世間への広がりを受けてか、結果的に当該曲の歌詞とコレオを変更し、収録アルバムの発売を延期することが決まった。

その後、次第にファンの間でも人種や国籍、属性に対してSNSで誹謗中傷する発言が増えたように感じられた。メンバーを擁護したい気持ちから、批判していたファンを責める意見も多数見られた。愉快犯の可能性もあるが「特定の国籍のファンを会場で見かけたら加害してやる」といった発言も目にした。分断によって傷つくファンも多かったが、箝口令が敷かれているかのように、公式SNSやメンバーのブログなどで本件に関する言及が無かったのを不気味に感じた。

ブランドの話に戻るが、ブランドとは人やモノ、企業に対する未来への期待値、この人なら期待をかけても裏切られないという信頼感だと思っている。同じスペックの製品を「価格が高くてもあなたから買いたい」と思わせることがブランド力だと思う。

私にとってランぺは、見ていて楽しい気持ちになれる、元気がもらえる、この人たちの夢を応援したくなる、そんなブランドだった。

グッズやCD、ライブそのものから得られる実体だけではなく、体験を通じて夢を見させてくれることに価値を感じ、その期待に対しても対価を払っていたことを実感した。しかし、残念ながら今のランぺからはその価値を感じることができなくなってしまった。

イベントや特典のために本来は1枚で足りるCDを複数枚買うこと、相場より高いコラボグッズを購入すること、自分の年代や趣味に合わないファッション誌を数ぺージのインタビュー記事目当てに読むこと、SNSやブログの更新をこまめにチェックすること、これらは自分の中で彼らに感じていたアイドルとしての魅力を付加したブランド価値があってこそだと自覚した。今後こういった機会はおそらく少なくなるだろうと思っている。

メンバー個人を好ましいと思う気持ちは残っているし、ファン以外に広まって炎上した際、心無い誹謗中傷を目にしてとても傷ついた。また、よく分かっていない外野からパフォーマンスのクオリティを馬鹿にされて憤慨する気持ちも残っている。アンチになりたいわけでもない。

ブランド価値が目減りしたといってもゼロになったわけではないので、あくまで自分が楽しいと思えるかどうかを第一に考えて、今後は彼ら自身ではなく、彼らの「コンテンツ」に向き合おうと今のところは思っている。
(ちなみにFCは12月末で退会した)


■以下、自問自答したことの走り書き


<自分にとって引っかかった部分>

・歌詞やコレオのどこが問題だったかを言及せずに、アルバム発売延期のお詫びのみを発表したこと。また、アルバム発売延期の発表を公式SNSで一切行わなかったこと。にもかかわらず、変更された発売日のお知らせはSNSで発表され、意図的な施策であると感じられたこと。

・問題が指摘されていた歌詞は外部の作詞家が書いたものなのに、12/22に公開されたステートメントが「THE RAMPAGE TEAM 一同」とメンバーを矢面に立たせた文面だったこと。また、こちらの声明がなぜかLDHの公式サイトではなくavexのサイトのみで公開され、SNSでの発信もなかったこと。

・実際にFCにまで加入しているファンの意見は耳に入っていないような態度だったのに、ファン以外からの批判の声が上がるやいなや、即座に対応を決めたこと。

・批判の声が上がっていることを知っていると思われるメンバー数人から、ライブMCやブログ、SNSなどで「批判しているのはファンじゃなくアンチ」と捉えていそうな発言があったこと。(真意はわからないので個人の所感です)

・戦争や帝国主義を賛美する意図がないと明言しなかったこと。

・普段のライブでは、積極的にマナーに関する注意喚起や「周りのファンのことも大切に」というメッセージを発信するメンバーからも、ファンの間で分断が生まれていることについて何も発信がなかったこと。

<信頼回復のチャンスはあったのか>

12/18~12/22の時点では、否定派のファンも運営に真摯な対応を求める声が多かった。その後の対応次第では、信頼回復のチャンスはあったと考える。

<メンバーに非はないのではないか>

ランぺは他のグループと比べてもメンバー自身がコレオを行うケースがほとんどである中で、外部コレオのパフォーマンスをきっかけにファン以外からも非難されている状況を心苦しく思う。歌詞についても同様に、ランぺ名義の曲はメンバーの意志が反映されにくい状況であることは、今までのインタビューなどでも推測できるため、メンバー自身が主体性を持ってあの歌詞に何かしらの思いを込めていたとは考えにくい。

しかし、炎上後の個々のふるまいから「見たいものだけを見たい」「すべてを受け入れてくれる人だけがファン」という印象を持ってしまったのも事実としてある。本件については頑なに触れないようにする一方で、被災地へのお見舞いはすぐに表明するという反応の差にも少しがっかりした。(お見舞いの気持ち自体は素晴らしいことだと思うので、それを否定する意図ではないです)

箝口令が敷かれていたと考える場合、アーティストとして仕事を行う上での環境の悪さを感じたのも嫌だった。もしかしたら、歌詞やコレオを問題視していたメンバーもいたのかもしれない。それでも言い出せない、言っても取り合ってもらえない環境だったら……と考えると暗い気持ちになる。しかし、一消費者の立場として環境改善ができるわけでも、メンバーを救えるわけでもないので、自分が楽しめるかどうか、「チーム一同」を応援したいかどうかを基準に考えたいと思った。(しかも、これも憶測だ)

<運営への不信感があるならランぺ以外のグループもダメなのでは?>

上記のような風通しの悪さはもしかしたら他のグループでもあるかもしれないし、何が燃えたか企業が理解していないのであれば、同じようにまたクリエイティブで炎上する可能性もあると思っている。ただ、年末のEXPOでは少なくとも他グループのパフォーマンスを見て、これまで通りもしくはそれ以上の楽しさや幸せを感じられたので、今はその気持ちを優先したい。

さいごに

私はほぼ降りる形になったけど、本件でモヤを抱えつつ応援していくと決めたファンの方の気持ちが少しでも早く晴れることを願っています。修正内容が真摯なものでありますように。


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