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制作ディレクターが結婚式の余興をするときに考えていること

最近こんなツイートを目にしまして

副業やりたい!という気持ちは特にないものの、①と②にはすごーーーーく思い当たる節があり、せっかくなのでまとめておこうと思いました。私にとってのそれは、「友人の結婚式の余興」です。

私はこれまで10組ほどの結婚式や二次会で、余興をさせてもらいました。
制作会社で企業のクリエイティブやプロモーションをお手伝いするディレクターをしているため、その知見も活かしつつ毎回けっこうがんばっていて、式場の方から「今までみた余興の中で一番すごい」「クオリティが高すぎる」と言っていただいたことも何度か。

というわけで、めちゃくちゃニッチだろうなと思いつつ、余興初心者だったころの20歳そこそこの私に向けるつもりで、書いてみます。

余興で何をするか?と考える前に

もしあなたが余興を頼まれたなら、以下のことを考えましょう。
①余興の理想の状態を定義する
②資源を洗い出す
③何をするかを決める
必ずしも①〜③の順番に進むわけではありませんが、それぞれをきちんと抑えておくことで、少ない労力で大きなインパクトを生み出せます。

①余興の理想の状態を定義する

余興をやることで、新郎新婦にどんな気持ちになってほしいか?なにを言ってほしいか?を考えます。
新郎新婦はあなたに何かを期待して余興を頼んでいます。

爆笑したい/「私の友達こんなおもしろいんだよ!」と他の招待客に自慢したい/結婚相手のことを自分の友人にもっと知ってほしい/感動して泣きたい/なんでもいいから招待客を楽しませてほしい

などなど。

どんなことを期待しているか、そもそもなぜ結婚式をするのかなど、本人たちにヒアリングしてみるといいと思います。「意外にサプライズ好きだったんだ」など、新たな面を知ったりします。

このときに大切なのが、新郎新婦にどんな気持ちになってほしいかと同時に、会場がどんな空気になってほしいかも定義することです。

会場の空気を定義するために、招待客のことをある程度把握することをおすすめします。
私は過去に、音楽好きな新郎新婦で、招待客もバンドやってたり音楽好きな人が多い式と、理系で院卒の新郎と経理をしている新婦で、それぞれの会社の同期がたくさん来ている式で映画バーレスクをモチーフにしたほぼ同じ余興をしました。

すると前者は大盛り上がり、後者はややスベりするという体験をしました。

大きな原因は「客層の差」だと思っています。
要は、招待客によって、共通言語がまったく違うのです。その表現は、招待客にとって見慣れているものか?新郎や新婦のことをネタにする場合は、「◯◯(新郎or新婦)ってこういうところあるよね」が、招待客に共通して認識されているほど、伝わりやすくなります。

なので、新郎新婦に「どんな人たちが来るのか?」も事前に聞いておくことが超オススメです。

ちなみに、このフェーズは、得意な人が一人で決定するべきだと思います。
コンテンツのゴールイメージを解像度高く持つためには、知識と経験が必要だからです。クリエイティブディレクションと呼ばれる仕事です。あなたが余興を頼まれているのは、新郎or新婦との仲良し度×クリエイティブディレクション得意そう度が招待客の中で一番高いと思われているからです。

クリエイティブディレクションの役割がよーーーく分かる教科書はこちら。

②資源を洗い出す

余興の理想の状態がイメージできたら、次は資源の洗い出しです。余興の期待値が高く、関わる人が多いほど大事になってきます。
・余興に協力してもらえそうな人は?
・各自のスキルは?
・協力してもらえそうな度合いは?
を考えます。

例えば私の友人であれば、
元幼稚園教諭のため紙の工作が得意/作詞ができる/ダンスが得意/ネットでの情報収集が得意/やたらと物持ちが良く謎の洋服や小物をたくさん持っている/家のリビングが広く余興の練習場所に最適/動画制作ソフトが使える
といった感じです。協力してもらえそうな度合いは、友人同士ならなんとなく分かると思いますので省きます。

③何をするかを決める

理想の状態のイメージと資源の整理ができたところで、何をするかを考えましょう。ありがたいことに余興には制約があります。

・何分以内でやるのか?
・会場の中で使えるスペースは?プロジェクタの位置は?
・動画や音楽は流せるのか?
・マイクは何本あるのか?コードレスか?
・登場するとしたら導線は?
・着替える場所はあるか?
・使えそうな予算は?・・・など

それらを確認しつつ、案を考えます。具体的なアイディアは、表現に関するインプット量と、それらを組み合わせる筋力がものを言うところです。

余興はその制約上、動画かその場でのパフォーマンスかその両方かに落ち着きます。そのため手っ取り早く役立つインプットは

・テレビCM
・ミュージシャンのPV
・お笑いのネタ
・先人が残してくれた余興動画

あたりです。

さらに余興には、よくあるパターンがあります。アイディア出しのヒントとしてまとめておきます。

・そのときの流行
例:恋ダンス、バブリーダンス、U・S・Aなど

・アテレコ系
例:アメリカ大統領のスピーチ動画に字幕をつける、映画の映像にアテレコする


・フラッシュモブ系
例:余興自体が突然はじまる、余興の途中で新郎or新婦が乱入する

・リレー系動画
例:恋するフォーチュンクッキーをいろんな人が踊っている動画をつなぐ

・TV番組パロディ系
例:「プロフェッショナル仕事の流儀」風動画、結婚記者会見風動画など

・演劇、ミュージカル、ダンス系
例:吉本新喜劇風、劇団四季風など

・替え歌系
例:西野カナのトリセツなど

▲これ最高じゃないですか・・・?


参考までに、私のこれまでの余興が生まれた流れもまとめておきます。

・新郎or新婦の好きなものは?
→新婦は吉本新喜劇が好き。新婦を主人公にした吉本新喜劇をつくってみんなで演じる。途中から新郎がサプライズで飛び入り参加し、新婦役にプロポーズしてハッピーエンドという流れ。

・新郎or新婦に伝えたいことを一言で言うなら?
→2人の門出をみんなが応援してるよ!ということを伝えたい。応援といえば、サッカーのパブリックビューイング。プロポーズの一部始終を撮影した動画をもとに、パブリックビューイングで友人たちが応援していた、という仕立てのムービーを作成。参考にしたのはこちらのCM。



・新郎新婦に、余興をどんなときに見返してほしいか?
→見返すと初心に返ることができるような、結婚時点の二人のPVのようなものを作りたい。新郎新婦の出会いやデートの場面を音楽に乗せて再現する、ドラマのオープニング風ムービーを作成。


このような感じで考えはじめ、「〜ということは?」「〜と言えば?」「言い換えると?」などと連想しながら考えることが多いです。

アイディアを生み出す筋力については、こちらの本がわかりやすいです。

余興Tips

余興を10回ほどやる中で、反省やこれはやってよかったな、というポイントがいくつかありました。

・誰がやるかが大事
当たり前のことですが、「誰が何をやるか」でウケ具合が変わります。普段からおもしろくて目立つAさんと、おとなしくて真面目なBさんが同じように水着を着るのでは、周囲の驚きが全然違います。招待客がほとんど同じサークルのメンバー、といった場合には特に考慮するとよいポイントです。

・「文脈」と「それが共有されている範囲」を意識
人によって「笑っていいこと」「笑ってはいけないこと」はまちまちです。例えば新郎のハゲいじりを余興に入れたとして、新郎と友人間の「ハゲいじり」文脈を知らない人が「え、これ笑っていいの・・・?」と戸惑うといったことです。特に「女性の体を張った笑い」は、正直招待客の層やノリによってウケが違うと感じます。
「表現方法」「モチーフ」「新郎or新婦の性格や特徴のいじり」などが、招待客のどこまで、どのように認知されているのか?をある程度分かった上でやるほうがウケます。「新郎って、会社では意外にそんなキャラなんだ・・・!」みたいなこと、けっこうあります。

・写真映えするモチーフを入れる
余興の途中に新郎新婦の顔をプリントしたアイドル応援風うちわを客席に配ったり、

ダンスの中に簡単で真似しやすいフリやポーズを入れたりすると

見ている側も参加しやすいため盛り上がります。
そしてそのグッズを持ったりポーズをしたりして後で集合写真を撮ると、「その結婚式らしい」いい感じに映えるものになります。オススメです。

最後に

だいぶえらそうに書いてきましたが、結婚式の余興ってお祝いごとだからすっごく断りにくいし、同じコミュニティの中で一回やったらそれ以降手抜きがバレるし、スベりたくはないしで、個人的には「やりたいこと」化するのがすごく大変でした。

関わってくれるメンバーからカンパや募金を募ったり、なるべく省エネできるように分業したり、いろいろトライしてみたけど、それでもなかなか難しい。

余興というプレゼントを喜んでしたい!と思える友人関係と、なるべく仲の良い友人を巻き込んで、余興をつくる過程自体を思い出づくりにしちゃう、というところまで持っていくことが大事なのかもしれません。

全国の余興たのまれがちな民へのエールになればうれしいです。サービス精神旺盛すぎるみんな、ファイトだよ〜〜〜!!!

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