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Acerのモニター命名規則についての報告、あるいは備忘録

はじめに

XB323QKNVbmiiphuzx
EB321HQUDbmidphx
XV282KKVbmiipruzx
XV320QULVbmiiphx
XB253QGXbmiiprzx
XZ342CUPbmiiphx
XV431CPwmiiphx
EB490QKbmiiipfx
XV241YXbmiiprx
……

まず、上記の文字列を見てどう思うだろうか?
何らかの規則性は読み取れるものの、何も知らなければでたらめに文字を羅列しているだけだと感じるかもしれない。

これらはすべて、台湾のパソコンメーカー・Acerのディスプレイモニターの型番である。

筆者の環境

ちなみに筆者自身もAcerのモニターを3枚使用しており、それなりの”Acerマニア”といってもよい。閑話休題。

命名規則は当然あるらしく、以下のツイートを参照していただきたい。(ここにあるPredatorというアカウントはAcerのゲーミングモニターのブランド名である)


我々ツイッター有志数名はこれの規則について解き明かそうとした。
その結果、命名の法則、アルファベットの意味がそれぞれ明らかになった。以下、それぞれの項目について説明していきたい。


命名の法則

まずそれぞれの型番を読み取っていくうちに、命名の法則について見出すことができた。一部の型番を例に挙げて説明していく。

XB323QKNVbmiiphuzx

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これはPredator製品の一つである、XB3シリーズの一例である。おそらくこれがAcer製品の中でも一番長い型番であろう。前述の公式のツイートに沿って考えると、
①モデル名:XB323QKNV XBシリーズ。数字は2つ目まではモニターのサイズ(インチ)、3つ目はシリーズの中での序列である(これはPredator XB3、XB1シリーズはここの数字が1になる)。
後ろのアルファベットは他の製品を見る限り規則性や共通点を見出すことはできなかったので、これはそのシリーズの中でそれぞれの製品を区別をするために副次的につけられたものであろう。

以下、アルファベットが羅列されているがこの順番は基本的にすべての製品で一緒だと考えてよい。

②本体カラー:b(黒)

③スピーカー:m(あり)

④映像端子:ii(HDMI×2)、p(DP×1)

⑤機能:このモデルには搭載されていない

⑥端子:u(USB-C)、x(イヤホンジャック)

という形になる。この6つの要素があるモニターを例に挙げると、下のB227Qbmiprzxという製品があげられる。

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上記に当てはめると、
①B227Q(モデル)
②b(黒)
③m(スピーカーあり)
④ip(HDMI,DP)
⑤r(ピポット機能)
⑥zx(USBハブ,イヤホンジャック)

ここで初出のrとzがあるが、以下にそれぞれのアルファベットの意味について推測も含めて記載していきたい。

アルファベットの意味

アルファベットにはそれぞれ、特定の意味が割り当てられている。
ある程度英語の頭文字からつけられているものの、i(HDMI)はよくわからないし正直言うとAcer語といってもいいくらい自由な割り振りがされている。
a~zまで使われているが、うち、e・g・k・l(L)・n・tは存在が確認できなかった。逆に言うとそれ以外は確認することができた。
以下実例も含めて列挙していきたい。

a~n

a 詳細不明(アスペクト比固定機能?)

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一番最初で申し訳ないが、これは製品に使われているものの、1機種のみ(P243WAida)である。2008年の製品であり公式サイトにも商品ページがない。カラーの情報等もないので別の命名規則かもしれない。

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上記の通りP243WAidaとP223WBbidの違いとしてアスペクト比固定機能が存在しているためこれがaなのかもしれない。これ以降はこの機能が標準としてモニターに搭載されているため記載されなくなった可能性が高い。
参考:https://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0421/acer.htm


b ブラック ②本体カラー

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これはほぼすべての商品に当てはまる。blackのb。命名規則②の本体カラーに分類される。


c webカメラ ⑤機能

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正確に言えばWindows Hello対応webカメラである。Cameraのcからと推測される。命名規則で言えば⑤機能に分類される。AlphaLineのB7シリーズのみに搭載されている。
参考:https://acerjapan.com/monitor/alphaLine/b7/


d DVI端子(D-sub端子?) ④映像端子

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ひと昔前の機種や廉価モデルによく搭載されている映像端子。ゲーミング系のものにはそもそも搭載されていないことが多い。D-Sub端子は一部該当しないものもあるため除外される可能性がある。

e 該当なし

追記判明:e イーサネット

これは国際Acer学会からの報告で判明したものです。上記の通り、CB273U BEMIPRUZXにはEという新たな区分が登場しているのがわかります。仕様を見てみるとほかのディスプレイにはないEthernetが接続できることが記載されています。ちなみに日本では販売していません。(日本のページがあるもののスペック表がなかったため確認ができていなかった)

https://www.acer.com/ac/en/US/content/professional-model/UM.HB3AA.002

f 詳細不明

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不明なアルファベット1。
該当製品はいくつか存在しているものの、共通点を見出せず。
z(USB端子)とx(イヤホン端子)の間にある製品がいくつかあるので何らかの端子である可能性が高いが特定には至らなかった。

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参考
https://acerjapan.com/monitor/business/v6/V246HLbmdf
https://acerjapan.com/monitor/nitro/xv0/XV240YPbmiiprfx
https://acerjapan.com/monitor/omegaline/b7/B277Ubmiipprzfx

g 該当なし

追記:判明しました(後述)

h 詳細不明

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UWモニターに多い

不明なアルファベット2。これも該当商品は複数あるが特定には至らなかった。命名規則においては④映像端子と⑤機能の間に置かれているのでいずれかに所属している可能性が高い、あるいはまた別の分類という可能性もある。実は先の例に挙げたXB323QKNVbmiiphuzxの中にも含まれるが、説明できなったのであえて説明していなかったりする。
ウルトラワイドモニター等、横長のモニターに多く採用されているので、それに関連するものかもしれない。

参考
https://acerjapan.com/monitor/predator/predatorx34/X34Sbmiiiphzx
https://acerjapan.com/monitor/predator/predatorxb3/XB323QKNVbmiiphuzx
https://acerjapan.com/monitor/conceptd/conceptd-cp7/CP7271KPbmiphzx

追記に調査結果を記載しています。


i HDMI
 ④映像端子

現在の映像出力で主流の端子。おそらくHDMIのiから?由来がよくわからない。

j HDMI(MHL) ④映像端子

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MHLは、“Mobile High-Definition Link”の略称であり、スマートフォンからMicroUSB端子を通して、HDMI接続で単独出力できる規格である。現在はMicroUSB端子はUSB-Cにとってかわられているので、これもひと昔の製品が多い。ほとんどの製品が販売を終了している。jを当てはめたのはおそらくiの次だからだろう。
参考
https://acerjapan.com/discontinued-monitor/omegaline/rt0/RT280Kbmjdpx
https://acerjapan.com/discontinued-monitor/business/cb1/CB281HKbmjdprx
https://acerjapan.com/discontinued-monitor/sigmaLine/xf0/XF240Hbmjdpr

k 該当なし

追記:判明しました(後述)

l(L) 該当なし

m スピーカー ③スピーカーあり/なし

スピーカーが搭載されているモニターにはmのアルファベットがふられている。mなのはおそらくモニタースピーカーから?

n 該当なし

o~z

o オレンジ ②本体カラー

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2008年発売のG24oidにしか割り振られていない、1機種しか存在していないレアな型番である。なんでわざわざ割り振ったんだろうとは思う。これも古いので公式には乗っていない。
参考:https://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1003/acer.htm

追記:XG270HUomidpxというモニターも存在しているらしい。Acer内部にオレンジ好きがいるかもしれない。
https://kakaku.com/item/K0000799667/



p ディスプレイポート・ミニディスプレイポート ④映像端子

現在のパソコンの主流映像端子である。おそらくDPのpからであろう。dではないのは単純にDVIのほうが先にあったから?

q HDR対応 ④映像端子

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これも特殊事例の一つである。上記でわかるようにET430KwmiiqppxとET430Kwmiippxの差別化のためだけに採用された疑惑がある。ちなみに上記それぞれの違いはHDRに対応しているかしていないかのみ。これもなんでわざわざ割り振ったんだろうとは思う。

参考
https://acerjapan.com/discontinued-monitor/omegaline/et0/ET430Kwmiiqppx
https://acerjapan.com/discontinued-monitor/omegaline/et0/ET430Kwmiippx

追記:米国専用の製品でもう一つ、XR382CQKbmij(q)phuzxという商品があり、これも差異はHDRの有無であった。

r ピボット機能 ⑤機能

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分類上は⑤の順番にあたる。ピボット機能が r なのはRotation、Rotate(回転する)からか?

s シルバー ②本体カラー

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Silverからs、単純である。

t 該当なし

追加判明:チタン ②本体カラー

AL2423Wtdh
S276HLtmjj

こちらはAL2423Wtdh(2007年)とS276HLtmjj(2014年)。チタン色の物は最近は出ていません。

u USB-C端子? ⑥端子

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USBのなかでも割と新しい規格。モニターについてる場合、結構お高めの機種にしかついていない気がする。AcerだとXB323QKNVbmiiphuzxのみ。
https://acerjapan.com/monitor/predator/predatorxb3/XB323QKNVbmiiphuzx

追記:おそらくUSB端子を使った映像入力だと思われます。


v 端子規格(おそらくRS232端子)
 ⑥端子

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DV433bmiidvにのみ割り振られている。命名規則的に何らかの端子ではあるがデジタルサイネージであるため他の商品にはない端子を複数備えている。どの端子がvなのか、あるいはサイネージという分類自体がvなのかは不明瞭である。おそらくRS232端子。
参考:https://acerjapan.com/monitor/signage/dv3/DV433bmiidv

w ホワイト ②本体カラー

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whiteからw。安直である。

x イヤホンジャック ⑥端子

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公式のツイートからxはイヤホンジャックであると明言されているものの、なぜxなのかは不明。

y ダークグレイ ②本体カラー

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該当1機種のみである

Acer語。命名規則的に本体色なのだがダークグレイがなぜかyに割り振られている謎。ちなみにこのアルファベットがつけられているのもこの製品のみである。
https://acerjapan.com/monitor/business/b6/B246WLymdprx

z USBハブ ⑥端子

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zであるがUSBハブである。uもsもbも使っているためだろうが、関連性が全く見えない。ゲーミングブランドであるPredatorとビジネスモデルに多く採用されている。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回Acerのモニターの命名規則については大まかには把握できたものの、”f”と”h”についてはいくら調べても共通点がわからず、謎は深まるばかり。

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あとは、公式からの答え合わせを待つのみである。

興味が出た人は”f”と”h”についてわかれば教えてほしいです。お願いします。

謝辞

上記解明にあたり、エチプラ氏@Planet_of_H 、NP-2氏@krts_np 、
危機的利き手氏@_at_hash_per_ には感謝の意を送りたいと思います。ありがとうございました。

追記(2月12日)

国際Acer学会、およびAcer考古学学会の研究から、f・hの仮説が立ったので報告します。

仮説:f 微妙な差異を表現する場合に使われる(free?)


fについては上記のキャプションのように同発で発売された商品でスペックはほぼ同一であるものの、サイズ差や色、応答速度・輝度の違いがある場合に採用されているという事実から、おそらく同一モデル内のマイナーチェンジ製品を指しているのでは、と仮説が立ちました。おそらくそうなのだろうと思います。しかし、断定するにはいささか証拠にも乏しいため、仮説に留めておくことにしました。

仮説:h 高さ調節機能

AL1721h
AL1721

これはAcer考古学学会からの報告になります。
hに関しては共通点が見い出すことができずに、手詰まりの状態でしたが、"h"に関する起源を調査することで、ある仮説を立てることができました。
Acer内における、hの初出は上記のAL1721hという製品になります。
これは型番から見て、AL1721に”h”の機能を追加したものであると推測できます。
この2つの違いを分析することで、”h”の持つ意味が仮説立てることができました。
これらからhは高さ調節・スイベル機能について意味していることが判明しました。また調査を進めるうちに、”h”と"r"は同じ型番の文字列には登場しないことがわかりました。

r(ピボット機能)を持つ製品の中に”h”の製品は存在しない

以上の調査、推測から”h”はピボット機能を持たない、高さ調節機能を持つ製品に対してつけられるものと考えました。

ちなみに命名の規則は、上記のBM320bmidpphzxは両方の性質を併せ持っていますが、”r”が存在していません。よって"h"は”r”よりも優先されることがわかります。(ちなみにBM320bmidpphzxはなぜか公式サイトがヒットしません)

仮説:gとk 以前のモデル名として消費されてしまった可能性


https://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1116/acer.htm
https://kakaku.com/newproduct/2005/20051028.html

こちらもAcer考古学学会からの報告になります。上記のAL1715gとAL1715kについては、2004~2005年ごろの製品になります。小文字ではありますが、AL1715g(k)までがモデル名であり、ここで使用しているため、今まで登場していないのかもしれません。ちなみにそれぞれなぜ、g・kを使用しているかは不明です。

Acer考古学の観点から、命名規則の歴史


それぞれの起源について判明したので、そこからの仮説を以下に記します。

①初期の展開は1つの機種につき1つのモデルのみでディスプレイに音声出力もなかった=いろいろな説明・条件書きが不要だった

初期のラインナップ


②カラーリングモデルを増やしたためカラーリング分けをした(b,wなど)

③DVIが主流になってきたのでd(DVI)を追加

④高さ調節ができるモデルを出したのでh(height)を追加

⑤音声出力ができるようになったのでm(スピーカー)を追加

その後は、新しいのを取り入れるごとにi(HDMI)やx(イヤホンジャック)を追加していった結果、現在のキメラ型番になっていたものと考えます。

追記まとめ

以上、国際Acer学会、Acer考古学学会の協力もあり、現在使用されているアルファベットについては推測・確定づけることができました。

また今回noteを公開したおかげで、公式様にも拾っていただき、実際の答えについて今後、掲載の可能性が浮上しました。

我々Acer学会は情報公開について首を長くして待っております。よろしくお願いします。
以上、Acer学会の報告、および備忘録でした。
読んでいただきありがとうございました。


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