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新宿中央公園•シュクノバのデザインを勝手に読み解いてみる

新宿西口の、都庁の近く、新宿中央公園。ここに、芝生広場と一体となった複合施設、SHUKNOVE(シュクノバ)が2020年7月にオープンしました。
平日にも関わらず、複合施設に入るスタバはほぼ満員、芝生広場にも多くの利用者で、たいへん賑わっているようです。

さて、前回の北谷公園と同様にそのデザイン面について、経緯を読み解いてみたいと思います。
なお、「勝手に」読み解いているだけですので、実際の設計思想とは異なること、ご承知おきください。

シュクノバ含む新宿中央公園の改修に関するポイントは以下の3点です。
■ポイント1:道路の風景を尊重した建築配置
■ポイント2:芝生広場と一体となった1階のあり方
■ポイント3:1人になれるパッチワーク状の空間改修

■ポイント1:道路の風景を尊重した建築配置

現地でシュクノバを見た第一印象は、「建築はそこに置いたのか…」と意外な気持ちでした。
決して非難しているわけでは無く、よくよく考えると合理的なのですが、僕の中では敷地北側、下図の位置に建築はあるものだと、実際に現地に行くまで思い込んでいました。

なぜそう思い込んでいたのか…たぶん、下記の理由からでしょうか。
•元々敷地北側にはトイレがあり、建築があるイメージがあった
•南北に長い公園敷地であり、芝生広場も南北に長いため、北側に建築がある方が空間が締まる気がした
•南池袋公園のように、建築が南面している方が素直な気がした

さて、上図の「新宿中央公園魅力推進プラン」では、敷地北側も黄色の丸で候補地として挙げられていますが、なぜ現在の位置になったのでしょう?
設計思想が書かれている文献が見当たらないので推察ですが、列挙してみます。

●動線•エントランス
まず、新宿中央公園の境界は周辺道路と高低差があり、出入口は限られています。
その中でおそらく最も人の出入が多いのは北東部、また交通量が多いのは北側道路だと推察します。
そのような環境下で北側に建築を置くと、公園との一体感は高いですが、建築北側がバックヤード等で暗くなり、北側道路が「裏側」の印象となることを危惧したのでは無いでしょうか。

一方、公園敷地東側の道路は、大江戸線の出入口は面しているものの、歩行者の交通量はかなり少なく、「裏側」の雰囲気が元々あります。
そのためシュクノバの建築も裏を東側に向けることで、言い方は悪いですが東側は割り切って、北側道路の雰囲気の保全を優先したように思います。

●既存樹木
新宿中央公園は豊かな緑がありますから、既存樹木の伐採には気を使ったのではと思いましたが、整備前の写真を見ると、北側•東側共に植栽のあり方に差は無いように見えます。
景観重要樹木にも指定されていないようので、計画前に植栽調査等を行なって、影響が少ない方を選択•判断したのではないかと思います。
もしくは、動線のところで前述したことと同様に、北側道路の樹木は保全し雰囲気を残したかったのかもしれません。北側道路のケヤキと坂、擁壁からなる風景は気持ち良いですからね。

■ポイント2:芝生広場と一体となった1階のあり方

2つ目のポイントは前面の芝生広場との関係性でしょうか。
なお公開されている資料を見ると、複合施設は民間事業者、芝生広場や園路は新宿区が出資しているようです。

複合施設の1階はガラス張りかつテラス席が設けられた開放的な設えとなっており、一体性を確保しようとした意図が感じられ、効果的だと思いました。特にスタバが入る建築南側はフラットに広場と接続できており、海外のような雰囲気が醸し出されています。

一方で、建築北側のレストランはテラス席はあるものの、広場側との高低差を擁壁で処理しているところがややもったいなく感じました。高低差を階段状等で処理できていれば、一体性を確保しながらより効果的に高低差を処理できていたのではないかと思います。
ただこのあたり、テナント側からの要望などもありそうですから、一概に何が正解とも言えないかもしれません。関係者へ設計意図を聞いてみたいところです。

■ポイント3:1人になれるパッチワーク状の空間改修

3つ目はシュクノバの範囲外のポイントになります。
そもそも新宿中央公園は1969年に供用開始してから、何度かの改修を経ているようですが、シュクノバがある北側エリアは中央の芝生広場を中心として、周辺にいくつかの拠点がある、という空間構成は変わっていないようです。

今後の改修計画は「新宿中央公園魅力推進プラン」にまとめられており、現在の空間構成は大きく変えず、各拠点をパッチワーク的に改修していくようです。
このパッチワーク感のデザイン的な是非はあると思います。昨今の公園はどちらかと言うと、見通しよく•シンプルな空間構成でまとめる風潮があるような気がするため…

この是非は将来改修が完了した際に改めて行うとして、現時点で北側エリアで改修完了したであろう場所のディテールを見てみます。
特に気になったのは、噴水部の階段広場でした。6月の暑い日で木陰がないにも関わらず、座っている人は非常に多く、居心地良さそうでした。

実際に座ってみると、暑いは暑いのですが、木のベンチと低木植栽、それから視線の先にある噴水が涼やかな感じで、思ったよりも気持ち良い空間になっています。
園路の通行量も多いので、飽きずに1人でボーッと座ってしまいました。

まとめ

余談ですが、最後のポイントで書いたように、新宿中央公園は1人でいられる場所が意外とあるので、結構好きな公園です。前述したパッチワーク状の空間構成も、1人でいられることに関係しているかもしれません。
最近の公園はカフェ+芝生でオシャレ寄りに振っているように見えるので、1人でいられるような見る•見られるの関係を将来も残してほしいなとは思います。

一方で、1人でいられる空間は、犯罪が起きやすかったり、管理しにくかったりするんでしょうね。デザインと管理の関係も、考えてみたいテーマです。

さて、最後は脱線してしまいましたが、シュクノバだけでなく新宿中央公園は見どころいっぱいのナイスな公園だ!と再認識しました。スマートシティの取り組みもエリア全体で進んでいるようですし、今後継続して進む公園の改修も引き続きチェックしたいと思います。

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