おまじない
青いボトルに純粋な湧き水をたっぷり入れて、陽のあたるところへ置いておいたその水を、水晶でできたスプレー容器に入れて、キラキラ虹を作りながら、このあたたかい、寂しい、貯金箱へかけてやる。
それでも足りないから、4つの言葉を言いながら、真っ白な石でできた棚の上に置いてやる。
銀杏の木を探して(あの耶馬渓の大きな大きな)その下に置いてやる。
その木の緑の葉を集めて、埋めてやる。
銀杏だけでは寂しいかと、たくさんの色々な種類の、緑色の葉を集めて、かけてやる。
きれいな木の、茶道具を納めるような木の箱をこしらえて、入れてやる。
どんなにかして、救ってやる。
きざんで、煮込んで、腹のなかに、おさめてやる。
小さく削り、金の指輪に埋め込んで、絹の袋へ入れてやる。
月の夜に持ち出して、草の上に置いてやる。
その隣に座ってやる。
ごめんね貯金箱。許してね貯金箱。愛しているよ貯金箱。ありがとう貯金箱。
できることなら巻き戻して、深い暗いところから、拾い上げたい。私が離した手を、つなぎたい。白い布でくるんで、抱いていたい。ずっと、撫でていたい。大きな音から、永遠に守ってやりたい。
*
小さく焼いて、銀のフレームへ入れて、隣に並べてあげる。
ポケットへ入れて一緒に逃げてあげる。安心して座っていてよ。
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