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緑をまとった二川孝広は

特に変わりなく、チームにとって最適な位置を探してピッチを歩いたり走ったりしていた。暑い時にはよくそうしていたように、ボールが止まるとすぐに水を飲み頭からかぶっていた。

移籍して初のホームゲーム。スタメン。
キックオフ前にチームで円陣を組んだ後、ひとりすたすたとセンターサークルへ向かって歩いていった。チームメイト達はお互い背後でハイタッチをしている。と、誰かの声が届いたのか急いでメンバーの元へ戻る。ぎこちないハイタッチ。全員とはできなかった。

前半早くにドウグラスが負傷退場。背丈のある(たぶんポスト的な役割も期待されているであろう)前線がいなくなったことで、今日のゲームプランは変わったはずだ。前に出ることが増え、打開しようとする動きが増える。
さらにはチャントが意外とださくてどきどきする井上くんも負傷退場。背丈がふたちゃんとよく似ているこの青年のプロフィールは167cmと記載されているので、たぶん163cmだと思う。(ふたちゃんより低いしふたちゃんは公称168cmだがそうではないから)

身長はどうでもいい。
前半のうちに2枚のカードを負傷交代で使ってしまったのだ。つまり90分、しかもこの夏場にしばらくやってないまさかのフルタイム出動が見えてきたのである。
後半が始まった。前からプレスすることはやはり難しく、ただ岡山のパスの精度にも助けられ、時折中盤でボールを奪取。あるいはがんがんに攻めこんでくる岡山をゴール前で何とか食い止め、サイドの前方へパスを出し味方を上がらせる。
何本か決定的なパスは出た。それが相変わらずの優しさをもっていて、あぁこの人はこれができる限りは選手として生きていくんだろうとしみじみした。移籍する時に、U23で一緒にやっていた律くんや平尾くんがあのパスをもう僕らは受けられない的なことを言っていたのを思い出した。
そのパスは今夜もいつもどおりで、ボールを受けた時から出しどころを描いて放たれる。まだ受け手と合わないところが見ている方には歯がゆさしかないのだが、今後この緑のチームの若者たちがあのパスが描くものを感じてくれるようになることはとても楽しみである。それを見に通うのかなわたし味スタに。

と、左サイドでボールを持ち、タイミングを伺い始めたと思いきや弧を描くびゅーてほーなパスを出すふたちゃん。そのパスと同時に立ち上がってしまう。するとどんぴしゃヘディングで井林くんが入れた。だいぶ落ち着いた顔だなーと思っていたが後でMDPを確認したら90年生まれであった。(つまり老けてると思ってしまったごめんやで)

残り5分くらいで交代しフルタイムは逃れたものの、きつかったと思う。そして試合終了後、さっと消えたいだろうに広報ががちがちマンマーク。インタビューとトラメガトークとハイタッチというファン感並みの作業をこなしてホーム初戦は終わった。

得意で好きなことをやり続けてほしい、やりたい気持ちがある限りは。
躍動しかかっている姿をみて心からそう思った。

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