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ノームとアイスランド

EURO2016でアイスランドがまさかの健闘をみせている。もうすぐフランスとの準々決勝が始まるので、その健闘は今日で終わってしまうのかもしれないが、とにかく準々決勝進出である。つまり決勝トーナメントに出場して、さらにそこで1勝をあげている。(その勝ち星をあげた相手がイングランドだったというのはイングランドのこういう大会での勝負弱さやホジソンの問題などいろんな方向へ話が拡散霧散するので今回はスルー)

EUROをみていて毎回必ず思うのは、やはり大陸なのでこの広大な土地にはさまざまな民族、人種が生きているのだなということ。その思いを自分の目で理解したいと、大学~大学院の6年間で南(スペイン)へまず入り、その後イタリア、フランス、中欧~東欧方面を数回に分けて歩いた。
歩くと、やはり混血を繰り返している土地とそうでもない土地の差が顔に表れるのを何となくキャッチできる。個人的に一番気に入ったのはスロヴァキアである。なんせ美人が多い。マクドナルドの窓際に座って1時間で60人以上の美人を私の目はキャッチした。
あの辺りはベースはスラブ系が多いだろうが、人の顔立ちや髪、瞳の色、肌の色の組み合わせが本当にさまざまで、美人にもエキゾチックというかアイラインをぐるっと囲み目にした系でブルネットの人もいれば、金髪碧眼、抜けるような白肌に紅い髪など、美人のカテゴリが多い。古くはスキタイ人、トラキア人のエリアだったが、そこにケルト人、ゲルマン人が入ってその後は大モラヴィア王国、ハンガリー王国など常に流動的な国家建設がなされているから、人の移動も同様に活発だったのは想像に難くない。
大戦から内戦までさまざまな争いごとに巻き込まれたりその当事者でもあったから、それらの哀しい出来事がなければもしかしたらもっと異なる美人カテゴリも残っただろうにと思うと、人が生きていくことを争いで妨げることはその時代にも後世にも大いなる痛手を残すことになり、やはりよくないのである。

アイスランドに話を戻す。
今回のアイスランド代表は、実に他の国々との差が顕著である。骨格に注目してほしい。もちろんアスリートであるから、他の国の選手も鍛えられた筋肉をまとっており、身体だけを比べた時にそこまで差はないんじゃないか。と思うだろう。
肩を見てほしい。肩の周辺と言った方が適切かもしれない。肩がついているその部分、つき方が違う。例えば完全に腹部を6つに割っている美しい筋肉の持ち主であるクリスチアーノ・ロナウドは、上半身の筋肉にかなりこだわってはいるものの首からなだらかに肩がつながっている。アイスランド人は首と肩がくっついたような、なだらかさではなくその部分にいかつい骨なのか筋肉があるような盛り上がりを持っている。肩自体の横幅があるためそもそも表面積が大きいという予測がつく。つまり薪割りの斧をかつげばそれがぴったり収まるような。
髪とひげはナチュラルな人が多そうで、それは赤みをおびた茶色である。毛質はまっすぐではなく、時折ちぢれている。ひげのボリュームが多いメンバーもいて、それは観客にも一定割合見られる。他のヨーロッパ諸国のように(特にスラブ系を指しているが)きゅっと締まった頭蓋骨というよりは、比較的身体のバランスとして普通のサイズの頭、顔をしている(と日本人である私は感じる)。

彼らを一度にたくさん見たこともあり、この顔立ちはどこかで見たことがあると思った。それがノームである。昔、このノームの図鑑的な絵本(にしてはかなりきのこの種類などを詳しく図解してくれていた覚えがある)を持っていて、こびとと考えればかわいいのだが、絵がやけにリアルなので1人で留守番中には何となく怖くて読まないようにしていた。彼らの顔立ちは、基本的に歳をとったように描かれているので皺が多く、また目もそこまで大きくはない。
髪とつながったひげ。そして意外にごつごつした体つき。小さいのだが、つくりとしてはいかつい。特に肩の部分は、先述したアイスランド人となんだか似ている、気がする。彼らは斧を持ちながら歩くこともあり、そのイメージが勝手にすっとアイスランド人へ吸い込まれていく。

妖精や魔女は、かつてヨーロッパのさまざまな場所で伝説が時に現実へ転化されてきた。恐怖を煽るような時に描かれる彼らの姿は、その地域の周縁(つまり地域をおびやかすもの)や時にはその地域の人種の特徴を如実にあらわしている。こういう絵をみると、人はやはり見たことのない存在をゼロからつくりだすことはなかなか難しく、インプットのあるものから誇張や強調を重ねていくということがよくわかる。見せられた側も、だからこそ恐怖や畏怖の念を感じざるをえない。

ノームは妖精ということになっている。
フランスのスタジアムにたくさん集っているアイスランド人を見るにつけ、私は彼らこそノームを生み出したのではないかと勝手に思いをはせている。それはつまり、彼らに出会った異国人が彼らのことをノームと伝えたかもしれず、彼ら自身が勤労であることの偶像としてノームを生み出したかもしれず(ノームはよく働くと言われている)、また別のできごとがきっかけになっているかもしれないし、まったくそんなことは関係ないかもしれない。
でもあの体つき。あの骨格に何か共通点を見出したくなってしまうのだ。

お、さっそく2失点してるよアイスランド。

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