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【小説】3億円の大御所【1000字】

「きみの担当になるあの大御所。。きみはドストライクだ。あの人はきみみたいな感じが好きなんだよ。ところで驚かないでほしいんだが、自宅に行く時は注意したほうがいいよ」

「はい?」

「家のシャッターは閉まってるんだよね。不在なのかな?と思うだろ?
でもインターホンを鳴らすと出てきて、マイク越しに上がれという。」

そして上司は窓の外を眺めていった。

「きみの代わりはいるが毎年3億の利益をもたらす大先生の代わりはいない。わかるよね?」




「玄関を開けて入ると、真ん前が二階へ上がる階段だ。見上げると暗がり、シャッターをしめてあるから家の中は夜中のように真っ暗なんだよ、そして二階からガウンを着た先生が、いいか?驚くなよ? おいで~、おいで~、いらっしゃ~い、いらっしゃ~い、とこんな感じで手招きをしてくる。」

つまり来い来いおいでと二階の暗闇から何度も何度も言うわけか。

「その物まね。細かいところが凄く似てますね。さっきからまるで見てきたように言ってますが」

「ふむ。なんであれ驚いてはいけない」

「驚くなと」

「そう。いきなり驚かせたくないから、こうしてきみを思って事前に話している」

「心配していただきありがとうございます」

「なにせあの人のご機嫌をとりたくて、あの社長ですらふだん見せたことのないお愛想をしている。見たことある?」

「はい」

ふたりは目を合わせようともせず、やや長い沈黙が流れた。

「何がいいたいかわかる?」

「どうぞ」

「きみが大御所を怒らせたらおれは立場上きみを守りにくい」

「つまり3億円の代わりはいない」

「そう。いつも頭いいね。まずは驚かないことだ。とにかく驚くなよ?」

さきほどから引き締まった表情で心配そうに熱く語っているが、そういわれてもやはり驚く。

「ほかにアドバイスはありますか?こうすればいいという」

「上からああしろとかこれはダメとか言わないほうがああいうタイプにはいい」

ああいうタイプに限らずどんなタイプにもそうしろ、と言ってたが?
ともに作るクリエーターだなどと思ってはいけないと、この仕事はお妾さんだ、と。

そういえば私以外の人にこうアドバイスしているのか?
違う気がしてきた。

「わかっていますよ。そんなことはしませんよ 良いですね、おー と褒めまくります。こういいながらいったいどんな役目なのか?と、ともかく、そうではなく、家に来いといわれたら断れ、とか」


視線を外して、何を見ているのか窓に寄り、外を眺め、髪をいじりだした。神経質になったときの、そして本気に考えて進めるときのボスの癖てある。

10秒20秒。。無言が続く。
そして振り向き、あごを触りながら言った。

「それであちらが怒ったり機嫌悪くならなければ。。。いいよ!」


                         満田票



                       

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