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【シング・ストリート】本当は行きたいところへどこでも行けるけど、まだ行けない人のことも愛してくれる映画

映画を観ると、人生は選択の連続だということを思い出す。
シング・ストリートは、選択出来る人が選択するまでの葛藤と素晴らしさだけでなく
その選択がなかなか出来ずもがいている人の可能性も、応援して愛してくれる映画だと思う。
そして「自分」というのは、間違いなく人や物事に出逢った影響で出来上がった何かだということを改めて感じる。

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私は長女です。弟がいます。
そして、自他共に認めるブラコンです。まさにブラザーコンプレックス。

弟は勉強は出来ないんですけどスポーツは出来て、人間として優しくて、とにかくみんなから可愛がられる才能がありました。(姉目線)

私は小さい頃お勉強が出来たのですが、可愛がられる才能がないなーと常々思っていました。なので愛されるために、
・笑顔でいたり・面白いことを言ったり・男の子っぽく振舞ったり・怒らないでいたり
そういうことをしないといけないんだと思い込んでいました。
コレについてはまた別で詳しく書きますが!

なので誰よりも弟のことを可愛いと思っている反面、
どうして私は彼のように出来ないんだろう・どうして彼はあんなに自由にすることを許されるんだろう・なんで○○をやりなさい!と言われないんだろう
と、嫉妬もしていました。
異様に可愛いと思っていたおかげで「いや、愛されるのは当然だわ。誰よりも可愛いもの。」という結論にいたり
その嫉妬が表立って彼に向くことはそこまでなかったんですけど。

私、この映画を観ていて最初からお兄ちゃんに対してなぜかすごく切なくなってしまいました。
そして中盤の台詞で、ああ、私この人の気持ちがわかるからだ。と、思いました。

弟を愛している。大切に思っている。可能性を感じている。
けど、どこかで嫉妬している。
お前が今その自由を手に入れているのは、自分という先立ってその道を切り開いた存在がいるからなのに
先陣を切った自分ばかりダメな奴だと烙印を押される。
自分だって必死にやってきたのに。

ああ、わかるなぁ。そんなこと言いたくないのにね。
自分が出来ないことをやっていく弟をみて焦るんだよね。比較する必要はないのに悲しくなるんだよね。
けどお兄ちゃん、それはあなたが選んだんだよ。自分でその道を選んだんだよ。わかるけど、そうなんだよ。
と思って、また切なくなる。

そしてそれは、お母さんにも。
お母さんが玄関のところで行きたい国に想いを馳せて、いつもお酒を飲んでいる。陽が沈むと家に入る。
そこに行ったことはないけど、今までずっとそうして想いを馳せている。
お母さん、行けるんだよきっと。行こうと思えば行けるのに、行かないんだよ自分で。
色々な理由があると思う。子育てだって、旦那のことだって、全部そうだと思う。
けど全部、自分で選択しているんだ。
現にお母さんは行きたい国へは行かないけれど、お父さん以外の人を選んで家を出て行くことを決断出来た。
お母さんが本当に欲しいものはなんだろう。

そしてそんなお母さんの行動を、お兄ちゃんはずっと見てたんですよね。
お兄ちゃんだけは知ってた。

映画は、自分の人生は自分で選ぶことを教えてくれる。

この映画の主人公は学生で、夢中になった彼女から、音楽から、抑圧してくる先生から、全てから日々影響を受ける。
大好きなお兄ちゃんから沢山音楽のことを教えてもらって
これがかっこいい、イケてるんだというものにすぐ感化される。
イイなと思ったMVを観た次の日は、その格好をして学校に行く(笑)
最高だなと思いました。

こういうことを選択出来る主人公がいるから、周りの人が葛藤する。
何かを動かされる。

ラストシーン、弟は小舟でロンドンを目指す。お兄ちゃんはそれを車で送って行く。
荒れている広い海の中を進む弟、弟が海に出たことを喜びながら狭い車の中に入る兄。

兄よ、車だって進めるよ。国を跨げるよ。
どうしようもなくとも愛している家族の元へだって帰れるよ。
海に出なくてもいい。車だっていい。行けるよ。
そう思って泣いてしまった。

そして海で大きな船が出てくる。
その船が作ってくれる海流の後ろについて、小舟が進んで行ける。
ああ、中盤の台詞そのままだ。
お兄ちゃんが切り開いた道を、弟が進んでいく。

弟よ、誰かが作ってくれた海流にじゃんじゃん乗っちゃえ。
それを見つけてそこに素直に乗っかれるあなただから辿り着ける場所がある。
その素直さを教えてくれてありがとう。

そんなことを思っていたら、
「全ての兄弟へ捧ぐ」という言葉が出てくる。

君の夢は、僕の夢になった。
そう日本版のポスターに書かれている。
その言葉の意味が自分の中に落ち着く。

不倫して新たなパートナーと生きることを選択したお母さんは、その人と行きたかった国に行けるといいな。
お兄ちゃんが、自分だって外の世界へ出て行けることに気づいてアクセルを踏むといいな。
なりたいものがあって、けど現実は結構厳しくて、バーガー屋で働くような人生だと恥をかきたくなくて自分で自分を貶めた彼女が、彼とロンドンで幸せになるといいな。彼と進めて良かったな。

私は自分に自信がなくて、決断出来ないことを誰かのせいにしたことがある。
スパッと自分の選択をする人を羨んだことがある。
自分が小さく見えるくらい広い心を持った弟をみて、恥ずかしくてやり場のない気持ちを持ったことがある。

そんな弟が私の弟であることを誇りに思う。
どこかで彼からの影響を積み重ねて、今の私がいる。

この映画に、昔の自分も、今の自分も、応援して愛してもらったような気持ちになる。

(余談)
・エイモンがとても好きです。
・眠っているお母さんに「愛してる」と言った主人公の気持ちについても、モデルになると言っていた彼女についての考えも、また今度書けたら。

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