Kという子

Kは私の大事な友人のひとり。Kなんて書くとなんだかカフカの「城」の登場人物みたいだ。本名はY。出会った当時彼女はケチャップをこよなく愛していた。だから「ケチャ子」と呼んでいた。今はもう本名で名前を呼ぶけれど、当時の想い出も大事にしたくてあえて「ケチャ子」のKと呼ぶことにしよう。

彼女との出会いは原宿のカフェ。バイト先だ。わたしは大学生で彼女は美容系の専門学生だった。その個性は田舎者の私には思い浮かばない様なセンスで、彼女が着ると彼女の「もの」となる服装でわたしは大好きだった。とても身体は細くて、繊細で、いわゆる変わった子。

彼女のメイクの香り、服装、絵、偏食、煙草、話し方、シャイな笑顔と、折れそうな、何かに押しつぶされてしまうんじゃないかっていう感情。

そのどれもが大好きだった。

Kはわたしとは趣味や服装も全く違かったのに、仲が良かった。芯は似ているけれど、足りない物を持っていて、違った点を認め楽しみあっていた様に思う。

カフェでコーヒーを飲んでまったりするのがふたりとも大好きで、沢山の話をして、ずっと続けばいいと思っていたけれど、諸行無常というか、ずっと変わらないものなんてない。学生でなくなっったらより生活も変わって、いつか。Kは地元に戻り、私は東京に残った。

沢山いっしょにお酒を飲んだ。温泉も行った。カフェに行った。中目のHUITでね、ラテかワインなんて飲んだりして。フレイムスでも沢山一緒に時間を過ごした。地元に戻る前に、二人で暮らした。

「行ってらっしゃい」「おかえり」「一緒に帰ろう」とか「冷蔵庫に朝ごはんあるよ」ってメモがあって、玄関にはふたり分の靴が乱雑に転がっていた。温かい、温かい、想い出。

出会ってから13年。鬱になって真っ先に彼女に会いに行った。

久し振りにあったKはあのときのくしゃっとした笑顔で迎えてくれた。繊細な部分を抱えたまま大人になったけど、彼女は「生きていた」。彼女の細い身体からは想像できない力で、旦那さまと一緒に地に足をつけて生きていた。(おそらくKはがむしゃらで気付いていないだろうが)

何かを求めるでもなく、一緒にすごしたかった。それだけで少し気持ちが浄化された気がした。

帰りのバスに乗るまえ、ハグをした。泣きそうだったから、きつくきつくハグをして飛び切り笑顔で手を振って「またね」と言った。

「またね」って何回言ったかな。何回言えるかな。私たちのやりとりは手紙。ぐんとたくさん感情が伝わる。変わらない字(笑)。

ちょっと起承転結のない文になってしまったけれど、Kに出会った過去の自分の行動に感謝。そして、弱くてやさしくて強い彼女の割と波瀾万丈な人生に幸せがこれからもずっと笑顔がある事を祈りつつ。

私にはこんな素敵な友人がいる。これからも、ずーっとよろしくね。



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