見出し画像

短編小説の書き方【独特】


【短編小説】まだ守れるものがある

どうやってこれを書いたか?


ステップ・使ったツール・下書きを公開して、説明してみようと思います!


良かったら

小説執筆の参考にしてね~!!(*^▽^*)/


簡単! 地獄の6ステップだよ(*^▽^*)/☆



①設定を集める


今回は、今書いている長編小説『イニ・ミニマニ・モージン』シリーズから設定を集めたよ!

 *キャラクター(ジンタ・ソロイ・アッシュ)

 *冒頭の「カトゥの手紙」全文

word文書に貼り付けして、準備!!


この時に、

 *1.000字以内で書く

 *仮の題名(ジンタ1.000文字。本当に仮)

も決定!



②【本編の下書き】を書く


「カトゥの手紙」全文が貼り付けてあるword文書に

手紙を読んだジンタ(今回の主人公)の

思い・言葉・その後の行動を、思いつくまま書いて、行動と行動を繋げて行く。

と、いくつかのシーンとしてまとまるので

その中から厳選したシーンを残す!


【こんなシーンを残したよ!】

 *初見の方にも「ジンタらしさ」が伝わる

 *私が小説を通して伝えたい事が入っている

 *少ない字数で情景を目に浮かべられる


つまり

沢山書いて、沢山消して、消さないで残したシーンに元々あったキャラクターらしさ、私の伝えたいメッセージを煮詰めて煮詰めて煮詰めて!!!

【本編の下書き】まとまった!!(*^▽^*)/ ヒュ~~☆

カトゥの手紙も全文だと長いので、途中かなり消したよ~~

も~~(*゚∀゚*)/

カトゥの書く手紙はいつも長いんだから~~(笑)つい色々書いちゃうのがカトゥらしいから、いいんだけどね。好き!!



③ソロイ・アッシュ目線で同じ話を書く


~新しい地獄にようこそ!~


【本編の下書き】が書けたら

Wordで、文書のコピーを登場人物分(今回はジンタ・ソロイ・アッシュが登場するので、コピーは2つ)作って……

コピー1=ソロイの一人称に書き直す

コピー2=アッシュの一人称に書き直す


【書き直し方】

 *セリフは残す

 *【本編の下書き】に書いてある、ジンタの見ている情景・ジンタの心情を参考にしながら、地の文章を全てソロイ・アッシュの一人称に書き直す

 *ソロイ・アッシュの行動や心情の確認の為に必要なシーンがあると気づいたら、追加で書く


言うは易し行うは難しとは、まさにこの事やで!!!!!( ・∇・)/

 *どういう作業なのか?

 *何故この作業が必要なのか?

良かったら、ソロイ版・アッシュ版を読んでご確認を!

読めば「なるほど、こういう事か。確かにコイツは地獄の作業だが、必要やで!!!」と分かって頂けるはず!!


※この記事の1番下にソロイ版・アッシュ版を乗せるので、本編と読み比べてみてね※



④ソロイ・アッシュ目線の話を【本編の下書き】に集約する


~ここからが本当の地獄だ! 真の苦しみはここにある!!!~


【本編の下書き】と、主人公以外の登場キャラクター全員分の一人称の下書き(今回はソロイ・アッシュの2人分)

計3つを、大体書き終わったら……

ソロイ版・アッシュ版を読み比べ、両方を書き直して整合性をつけて……

ソロイ版と【本編の下書き】、アッシュ版と【本編の下書き】の整合性を順番につけて……

【本編の下書き】全体の体裁を整える!!!!!


言うは易し行うは難しとは、まさにこの事なんだって本当に!!!!!(・∀・)/

整合性をつける(何度も何度も読んで、辻褄が合うように整える)のは

何も考えずに書いている時みたいに楽しくない上、「本当にこんな話で大丈夫か?」「大丈夫だ、問題ない」と無駄に葛藤してしまうとても辛い作業なんだよ!!

しかも、時間がすっごく掛かる!!

100回近く読んで直すし、1行直すのに15分掛かる事もあるから、とんでもない時間が過ぎて行ってしまうんだ!

この辛い作業を乗り越えた先に、分かりやすくて面白い話があると信じなければ到底やり遂げる事は出来ない…………信じろ、探せ!!

この世の全てをそこに置いて来た!!!!! @ゴール・D・ロジャー


※ちなみに、ソロイ版・アッシュ版は「下書き」なので、全体の体裁を整えたり、本編の続きを書いて整合性をつける事はしなかったよ。今回はこの記事に載せるために軽く整えたけどね……軽くね……軽くだからね!? セリフとかちょっと古いバージョンだったりするけど、そこは大目に見て欲しいんだよね、だってこれは下書きなんだよ……ね? 本編じゃないんだから……ね?※



⑤音読して録音し、聞きながら推敲する


~これまでの地獄なんて地獄じゃないさ。さらなる新しい本当の地獄を味わうと良い!! それは……肉体労働だ!!!~


時は来た……(・ω・)/ 大体書けた!!

次は心を込めて朗読、録音、推敲する作業に入る!!!  恐れるな、フォローミー!!!


【朗読&録音のやり方】

 *スタエフの「収録」を使って録音。下書きに保存する

(音質がとてもいい、撮り直しが簡単、BGMがつけられる、なんならそのままUPできる)

 *ドリンク必須!!

(声は絶対に枯れちゃうよ。うふふ☆)

スタエフの下書きに保存した音声を聞きながら、【本文の下書き】を読んで推敲する

 *読んだら舌がもつれた、文法をミスってる、表現が簡略化出来る等は修正

 *キャラクターらしさの修正

 例)

 「ジンタは口下手だから、セリフは極力短く」 

 「ソロイならここでかっ飛ばしてゴチャゴチャ言う」

 「アッシュは怒ってないから、!は不要」

推敲・録音・推敲・録音を繰り返す

「これ以上、この作品に手を入れるのは私の保身でしかない」

そう思った瞬間に一応、書き上がり!

声が枯れたよ~~腹筋が痛いよ~~(;・∀・)/ ←朗読のしすぎ


ちなみにこの段階で、やっと題名が決定!!!

【題名】

 ジンタ1.000文字→まだ守れるものある


※毎度毎度、なかなか題名が決まらなくて大変……今回も「まだ守れるものある」と、どっちがいい?っていう、すごい微妙な違いを考えさせられた……。結局、カトゥが「まだ守りたいものがある。まだ守れるものがある。それが救いなのだ」とジンタに話して励ましてくれた思い出を、ジンタが大切にしている事に敬意を払って、本文中でジンタが考えていた「まだ守れるものある」ではなく、カトゥのセリフそのままの「まだ守れるものがある」に。あと「守れるもの」より「守れるものが」の方が力強くてジンタらしい、私らしい気もした。

「は」と「が」のどっちがいい?で、3日以上悩む人って、私の他にも何百人か日本列島にいるのかなあ?



⑥一晩寝かせたあの美味さを出して、完成!!


本文も題名も出来た!!

そこから一晩置き、グッスリ寝た後に最終チェックへと推して参る!!!


【最終チェック項目】

 *誤字・脱字

 *改行・スペース・句読点・三点リーダーの正しさとキャラクターらしさ

 *表記揺らぎ(検索キーで修正)

 *最終朗読、録音、聞きながら推敲

 *録音を聞きながら目をつぶり、

「この話は面白いか? 分かりやすいか? メッセージ性が私らしいか? 全キャラクターに血が通っているか? 文章のどこを切っても私の血が流れ出すか?」

考える。

「違う」と思ったら、構成を1からやり直すか、お蔵入り…………


以上を確認して、今の私の力では及ばない部分もあるな~~とたそがれつつ

思い切ってUP!!


1.000文字の短編小説を書くのに、2週間掛かっちゃった!! \(*^▽^*)/ 長~~~~~~い、よ☆



はーーーーい!!

ここまで読んで頂き、ありがとうございます(*^▽^*)/


みなさんの小説執筆のご参考になったかな!?

え、ならない? なんで? なるでしょ……少しぐらい、なるでしょ!!!



いや、ならなくても、読んでくれてありがとう!!!


じゃあ、まったね〜〜!!!\(//∇//)\


麻衣より、愛をこめて!





↓↓ソロイ版・アッシュ版の下書き↓↓

 

 *本編と読み比べて、創作の地獄を感じてみてね!

 *ソロイとアッシュはそんな事を考えていたのか!!

 *ソロイ版はBLだけど、実際はBLと言うより「ソロイラブ」という独自ジャンルなんじゃないかなあ?


【下書きが読みやすくなるように、設定の説明】

 *ジンタ=ジンさん=団長(あだ名)

 *ソロイ=ロイ

 *ソロイはハムスター獣人、ジンタは虎獣人、アッシュはハイブリットで複数の獣人の特徴を持つ(狐の耳、鶴の赤いアイライン、白いウズラの羽根、鹿のシッポ……可愛いな!!!)

 *3人とも消防士で、今年はたまたま同じ署に配属された

 *ソロイは新米消防士。アッシュとは所属する隊が違うが、よく指導されている

 *思い出の帽子箱=カトゥの手紙が入っている箱

 *エッジ=アッシュの「父ちゃん」、ジンタの初恋の人


↓ソロイ(19歳の黒いゴールデンハムスター獣人。最強ハムスターで最弱消防士)

画像2

↓ジンタ(団長。40歳のアムール虎獣人。キッパリとゲイ)

画像3


↓アッシュ(25歳。都市型災害への事前準備を強化する為、消防法研究で修士号を取ってから消防士になった。育ててくれた親父は消防署長、産みの父ちゃんは都市型災害で殉職した消防士。私が作者でなければ主役を張りそうなキャラクター)

画像4


↓カトゥ(左)とエッジ(右)の幽霊。ニコイチ

画像3


↓読み比べ用に、本編を貼っておくね!



ソロイ版(下書き)

 僕は久しぶりにアッシュさんとショッピングモールに来て、すっごく楽しくて、すっごくはしゃいでいただけなのに、アッシュさんはフードコートで食事しながら急に先輩風を吹かせて「職場でつい出るから、日頃から俺に口答えはするなよな」と忠告して来ました。
 そんな事は、いざ僕が職場で間違いを犯してから言えば良い事じゃないです!?
 僕はまだ何も失敗していなくて、ただ大好きなアッシュさんと楽しい休日を過ごしていただけなのに!!
 無意味に叱られ、激しく傷つけられた!!
「分かってるし!」
 何だよ!
 普段まで、僕と仲良くしたくないのかよ!アッシュさんはもう僕が可愛くないのか!?消防士になるまでは、あんなに僕を弟分だ身内だと呼んで可愛がってくれていたのに……。
 フードコートでいじけて、ソーダ水にストローでブクブク空気を入れている僕の肩を、アッシュさんが向かいの席からバシッと叩きました。
「いたっ!」
「なあ? 菓子とか買って、いきなりジンさん家に行ってビックリさせようぜ!」
「アポなし凸? まあ、別に嫌いじゃないですけど……」
「ジンさんの好きな菓子って何だっけ?」
 アッシュさんはニヤっと笑って、クイっと顎を上げました。「好きなだけ、しゃべれよな」のジェスチャーです!アッシュさんが僕の団長トークにつき合ってくれる!?いじけた気持ちが爆散して、推しを語りたいラブで胸が一杯になりました。
「僕の団長の好物は、フルーツサンドとアンコとイナリ寿司です! あと、ピンク色で可愛い絵のついた飴も好きです! ピンクのチョコレートが乗ったビスケットも好きです! あとサクラ餅とか、サクラなんとかが好きです!」
「だよな? 買って行こうぜ」
「まあ団長は手土産なんて持って行かなくても、僕の顔が見れるだけで大喜びですけどね!」
「そーだそーだ、行くか」
 アッシュさんは笑顔で、僕が一番肯定して欲しい話に頷いてくれました!僕は毅然とフードコードの安っぽい椅子から立ち上がって、一気にソーダ水を飲み干し、腕を振り上げます。
「行きましょう!!」
 アッシュさんが笑いながら飲み物を持って、立ち上がってくれます。
 そして僕の腕を叩いて、顎でクイっとお菓子売り場の方を指して、歩き出しました。
 そうやって僕の兄貴分らしく優しく格好良くしてくれていれば、僕はアッシュさんが大好きです!!嬉しくなって、小走りでアッシュさんの後を追いかけました。


 この僕が玄関の鍵を開けたのに、団長はいつもの様に万障繰り合わせて「ソロイー♡」と走って来ませんでした。けども、お宅の中にいるのは気配で分かります。多分、寝室かな?もしかしたら、シーツを敷いている時にいたずら心が沸いてベッドに寝そべったきり、うたたねしているのかも知れません。団長はベッドで僕似のハムスターのぬいぐるみ「ソロイ君」をだっこしてシッポも巻き付けて、うたたねするのが大好きだから。全く、僕本人が来たと言うのに僕似のぬいぐるみと夢の世界でじゃれっこしているとしたら、団長の可愛さには困ったものです。ありがとう!!!
 買ったものを持って台所へ入って行ったアッシュさんに続いて、僕もダイニングへインしました。
 団長はまだ出て来ません。いくらなんでも、遅すぎない?
 もしかして具合が悪いのかな?
 心配になって、上を向いて鼻をヒクヒクさせたけども、病気の匂いはしません。僕らハムスターはとても鼻が効いて、風邪みたいなよくある病気の匂いぐらいならすぐに分かります。病気じゃないなら、やっぱり爆睡しているだけかな?
 なら、団長が寝ているすきに、張り切ってダイニングテーブルにスナック菓子の袋を積み上げよう。無事にお菓子タワーが完成したら団長を起こして、「スゲー」「頑張ったな、ソロイ♡」と褒めて貰おう!僕が褒めてよとお願いしたら、何でも褒めてくれる団長が大好きです!
「全部積み上げたら、団長を探しに行きます!」
 台所で、買って来た食材を冷蔵庫に入れているアッシュさんへ宣言しましたが、お菓子の数が多すぎて最後の1個を乗せるとタワーが崩れます。何度もやっているうちにイライラして来て、今すぐ団長の寝室に飛び込み「ソロイ♡ どうした?」「一緒に寝るか?」と優しく言って貰いたくなってしまいました。
「あ~もう! 探しに行きたいのに、最後の1個がなかなか載らないよ!」
 もう1回だけ頑張って無理だったら、諦めて団長を探しに行こう。
 こんなに長く団長が来てくれないのは、やっぱり変だし……。
 もう1回。
 もう1回だけだ!
 あと1回だけトライしようと、お菓子の山の頂きに手を伸ばしたら、後ろからひょいっと袋を奪われました!焦って振り向いたら、アッシュさんがもうスナック菓子を開封して、自分の口の中にざーーっと流し込んでいました!!
 僕の一番大好きなチーズスナックが!!!
「酷いよーーーー!!!!!」
 一瞬で空になったスナック袋を持って、アッシュさんはニヤニヤ、ぼりぼりしています。
 なんとか復讐を!と思ったら、ガチャ、と寝室のドアが開く音がしました。
 寝室からゆっくりと出て来た団長は、いつも通りキチンとした白いシャツを着て、黒いズボンを履いています。少し腫れぼったい顔をしていますが、シャツに一切シワが入っていないところを見ると、ぬいぐるみを抱きしめて爆睡していた訳ではなさそうです。
 何より団長から、少し涙の匂いがします。
 僕が来たのに遅いと思っていたら、寝室で泣いていた!?なんで!?思い出の帽子箱を開けて中を見ていたか、悲しい本でも読んでいたのかな!?
 いや、どっちでもいい!
 今すぐに慰めて、笑わせなくちゃ!!団長を泣かせたままにするのは、僕の人生において最もあってはならない事の1つです!
 急いでスナック菓子の山をえり好みして、アッシュさんの大好きなコンソメスナックをひっつかみました。
 あの団長が、僕を見た瞬間にニコニコ駆け寄って来ない以上、ちょっとやそっとの慰めは無効だと僕はこれまでの経験から重々理解しています。かくなる上はアッシュさんの大好物を活用し、団長の大好きな「ソロイとアッシュの可愛いバトル」を展開して、笑いを取ります!そうです。笑いは団長を救います!
「これ僕の!!」
 僕がコンソメスナックを見せつけると、アッシュさんはニヤリとして、クイッと顎を上げました。僕が団長の笑いを取ろうとしているのを分かってくれて、もっとしゃべっていいとジェスチャーしてくれているのかな!?
「俺のだ。俺の全身はコンソメで出来てるからな!」
 やっぱりだ!アッシュさんは、僕との掛け合いに乗っかって来てくれました。
 行ける!このままアッシュさんと全力でお菓子を引っ張り合って、団長の笑いを取ります!団長の笑顔は僕最大の宝物なんだ。絶対に守らないと!!
「僕の全身はチーズで出来てるのに、真っ先にチーズを蹂躙した鬼が!! 悪鬼退散!!」
 僕がチーズと言うだけで「チーズが好きだな♡」と笑い、鬼と言うだけで「鬼なんて、見た事あるのか?」と笑う団長が、全然笑ってくれません!何度顔を見ても、僕たちを通り越してどこか遠くを見ていて、淋しそうにしています。完全に帽子箱の中を見ただろ、これ。
 もう1人で帽子箱を開けるのは止めましょうねと、あんなに何度も言ったのに!!
「職場の先輩に何だよ。日頃から口答えはするなって、さっきも言ったよな?」
 ここでリアル世界の情報を、アッシュさんがブチ込んでくれました!
 この言葉で団長が現実に帰って来るかな?と見ていましたが、相変わらず団長は淋しそうで、黙って寝室のドアの前に立ったままです。
 オーケー、分かりました。
 僕が思ったより、今回の団長の闇は深いんですね?面白コントを見て笑う気分ではないんですね?
 ……ならば、作戦変更!
 瞬発力で笑いを取るのではなく、ハートウォーミングなほのぼのトークで微笑みを取ります。
 そうです。一番大切なのは、僕の大好きな団長の可愛い笑顔と優しい心を守る事です。笑いはそのための手段の1つにすぎません。ミスにはこだわりません。目標に向かってまっしぐらハムスター、それが僕、ソロイです!!
「断る!! 僕は身内だ!!」
 僕は、団長がよく嬉しそうに「身内」と僕らを呼ぶのを、引用しました。
 ここから話をハートウォーミング方面に広げようと思います。先は全く見えていませんが、話せばそれらしく話せるものです。見切りスタートでもいい、とにかく初めてしまえば何らかのゴールには着く。そうです。それが人生です。
「おい、俺らの真似して身内とか言ってるけど、意味分かってるか?」
 アッシュさん、ナイスアシスト!
 アッシュさんが「身内」の使い方について尋ねてくれたので、一気にこの方向で話を進めやすくなりました。やはり僕の兄貴分は頼りになります!
「身内は最強の味方を表す、大変尊い言葉です!」
 僕は自信満々で、ハートウォーミングのあまり団長がニッコリしそうなワードを炸裂させました。
 このワードでやっと団長が反応して、寝室のドアの前から僕らの方へと歩み寄って来ました。団長は僕らの間に立ったのに、僕やアッシュさんの頭を撫でないし、「急に来たな」とも言わないし、何より近くで見るとやっぱり瞼が腫れぼったいです。涙の匂いもハッキリします。
 けども、もう大丈夫ですよ!
 泣いている団長の元に、僕と言う名のハムスター界隈最強の男が駆けつけて来たんですから!団長は安心して幸せになるだけでいいんです!
「ソロイ。身内が、最強の味方か?」
「ちょっと~。僕を身内と呼んで、常に最強の味方でいてくれるのは誰ですっけ?」
 露骨なローテンションで話しかけて来た団長に、僕はいたずらっぽい言い方で返して、優しく微笑みました。
 団長は少し頬を赤くして、俯き加減でこっそりニッコリしました。可愛い!!!じゃなかった、元気が出て来たみたいです!良かった!!
 ほっとしたら、アッシュさんがズバっと僕からコンソメスナックを奪い去って行きました。なるほど?ハートウォーミングから改めて団長の笑いを取って、僕らの完全勝利を確定する流れですか?やりますね、アッシュさん。勿論、僕は乗っかりますよ。
 思いっきり息を吸い込んで、思いっきりお腹から声を出す準備完了!
「返せよ!! チーズだけでなくコンソメまでも蹂躙する血も涙もない鬼には今から裏山に行ってセミを採集し1匹ずつ丁寧に豪速球で投げつける所存だ、僕は本気だ!!」
「一緒に食べるか?」
「うん!」
 アッシュさんにからかわれてカリカリしていたのに、ちょっと優しくされるとすぐに手のひらを返してしまう僕、という流れが団長は大好きです。しかも2人仲良く交互に同じ袋から食べたので、団長はお腹を抱えて
「グハハハ!!」
 と爆笑しました。笑い過ぎて、涙目になっています。そういう涙なら、僕らも安心です。僕とアッシュさんはスナック菓子を食べながら、こっそり目を合わせてニッコリ笑いました。
 僕たちは、知っていますから。
 団長が高校生だった時に、婚約者のカトゥさんを交通事故で亡くしてしまった事を。
 僕はいつでもなんとか団長を励まそうとして来たけども、団長は何度でも遠くを見て悲しそうにします。それを見ていた僕の方が勝手に泣いてしまって、団長に心配を掛けてしまう事件も何度か起こってしまいました。
 ある時、もう「僕なんかじゃ団長は励ませないのかもな」と弱音を吐いてしまった僕に、アッシュさんは「大丈夫だって! 生きてる俺らで頑張ろうぜ!」と笑顔で言ってくれました。アッシュさんは本当に僕が困った時には、必ず一緒に頑張ってくれる。日頃は意地悪ですが、いざとなればとても頼りになる兄貴分です。
 だから団長だけじゃなく、アッシュさんも、僕が命を懸けて守りたい身内です。
 僕は身内が全員大好きです!
 なんて考えてニコニコした僕を、団長もニコニコ見て
「ソロイ。菓子だらけになってる」
 そう嬉しそうに言って、両手で僕を抱き上げました。僕を抱きすくめた上にシッポでも拘束し、お口周りのスナックのカスをパクパクとってくれました。
 消防士の試験に受かった立派な僕をチビネズミ扱いするのは究極NGですが、やっと団長が笑ってくれたので我慢して、されるがままになってあげました。
「……なあ、ジンさん。俺さ、食材買って来て、冷蔵庫に入れといたからさ。それも綺麗に」
「おー。アッシュ、ありがとな」
 アッシュさんがちょっと不満そうに言ったせいで、僕は床に降ろされてしまいました。団長はアッシュさんの頭を撫でて、しげしげ顔を見て
「アッシュまで、菓子だらけだ」
 と面白そうに言ってから、アッシュさんの顔もチュッチュッしました。アッシュさんの耳が、嫌そうに後ろへ傾きます。もうこんな事をされる年じゃないけど、断るのはかわいそうだからな。というアッシュさんの心の声が、今にも聞こえて来そうです。「ジンさんは2人目の母さんで、父さんじゃないから断りづらい」と前にアッシュさんが言っていたのを思い出しました。
 仕方ないな。今度は僕が、アッシュさんを助けてあげようかな!
「僕は署でシャワーを浴びたけども、アッシュさんはしばらくお風呂に入ってないです」
「あ。そうだった。ジンさん、シャワー貸してよ」
「たまには湯舟に浸かれよ、アッシュ」
「家に戻ったら入るよ。とりま、シャワー貸して」
「うん。バスタオルはいつものところにある。歯ブラシは新しいのに替えたから、間違えるなよ。赤と黄色だ。分かるか?」
「分かるよ。エッジカラーじゃん!」
 アッシュさんは助けてあげた僕にお礼も言わず、サッサとお風呂場の方へ逃げて行きました。全く、自分から構って貰いに行きながら、ちょっと構われすぎるとすぐ嫌になって離脱するんだから。
 居間に残された団長は、また淋しそうになりました。
「……確かに、エッジの髪の色だ。エッジの服はいつもピンクだったけど、一度だけ白いスーツを着たのがスゲー似合ってたな。ずっと白が良かった」
「僕で良ければ、白いスーツでお迎えに来ましょうか?」
「ソロイは、赤だろ」
「赤いスーツ? キザの極致すぎない?」
「似合う」
 団長は本気でそう思っているらしい目で、僕を見下ろしました。
「ソロイは、ヒーローハムスターレッドだからな」
 また団長が、僕のチビ時代の黒歴史を持ち出して来たよ!本当に団長は思い出話が大好きなんだから。嬉しそうに目を細くしちゃってさ。すごく嫌だけども、愛があるから付き合ってあげますか。
「ソロイはな。僕はヒーローハムスターレッドだよ、未来からやって来た僕と戦ってるんだよって言ってな。俺は虎スーパーカーになって、ソロイの相棒になったんだ。また肩車して、走るか?」
「今の立派に育った僕を肩車するなんて、強めの鍛錬だよ!」
「違う。鍛錬じゃない。ソロイは可愛いんだ。ずっとずっと、ソロイと俺は相棒だ 」
 そう言う団長は、笑顔なのに、とても胸が痛そうに見えました。
 どうして……
 まるで何かを諦める様に、ものすごく悲しそうに笑う意味が分かりません。カトゥさん関連じゃなくて僕の思い出を話しているだけでもこうなるんだから、全く困ったものですよ。どうしたら嬉しそうに笑ってくれるのかな?安心してくれるのかな?
 そうだ!僕がプロポーズしたら、絶対幸せになってくれるよな!団長は僕が大好きだから、プロポーズは全てを打ち崩す福音、全てをひっくり返すワイルドカードのはずだもんな!!
 本当は就職して少し落ち着いてからしようと思っていたけども、よく考えたらサッサとするに越した事ないよね!
 決めた!!
「団長!」
「うん」
「今度の僕の誕生日、2人でお祝いしてくれます?」
「2人? 毎年派手にやりたがるのに、なんで?」
「僕はもう大人です! 大好きな団長と2人で、しっとりとした誕生日を過ごしたいナインティーンです」
「分かった。ソロイの大好きな唐揚げするか」
「わーーい!!! 団長の唐揚げだーー!!!」
「グハハハ!」
 つい大好物の唐揚げにはしゃぎ過ぎた僕を見て、団長がものすごく嬉しそうに豪快に笑いました。僕がほんのちょっとミスするとすぐ爆笑するのはどうかと思うけども、ずっとションボリしているよりは全然いいです。僕は団長を愛しているから、理不尽な笑顔でも笑顔は笑顔として喜ぼう。うん、僕ってエライな。
 よーし、待ってろよ団長!僕の誕生日に逆サプライズでプロポーズして度肝を抜いて、一生幸せにしてやるからな!!
 覚悟しておけや!!!



アッシュ版(下書き)

 職場でつい出るから、日頃から俺に口答えはするなよなってロイに釘を指したら、ガチでヘコんで、見ていられないくらいいじけた。
 休日ではしゃいでるロイに、寝耳に水でキツく言いすぎたかな?
 俺だってロイと仲良くやりたいんだ。ただ職場では、今の感じで先輩の俺に口答えはするなよなって、先に言っておいただけだ。それをロイは「分かってるし!」と言って、ガチで拗ねてる。本当に弟って、バカでしょうがないよな。まあそこが可愛いから、今回は俺から機嫌を取ってやろう。
 フードコートでいじけて、ソーダ水にストローでブクブク空気を入れているロイの肩を、バシッと叩いた。
「いたっ!」
「なあ? 菓子とか買って、いきなりジンさん家に行ってビックリさせようぜ!」
「アポなし凸? まあ、別に嫌いじゃないですけど……」
「ジンさんの好きな菓子って何だっけ?」
 それはフルーツサンドとアンコだ。分かってる。
 けど、あえてロイに聞いてやった。
「僕の団長の好物は、フルーツサンドとアンコとイナリ寿司です! あと、ピンク色で可愛い絵のついた飴も好きです! チョコレートの乗ったビスケットも好きです! あとサクラ餅とか、サクラなんとかが好きです!」
「だよな? 買って行こうぜ」
「まあ団長は手土産なんて持って行かなくても、僕の顔が見れるだけで大喜びですけどね!」
「そーだそーだ、行くか」
 適当に相槌を打ったら、ロイは満面の笑みでフードコードの安っぽい椅子から立ち上がって、一気にソーダ水を飲み干した。
「行きましょう!!」
 いきなり元気になって腕を振り上げたロイに笑いながら、俺も立ち上がった。
 ロイは、ジンさんの話を振ればすぐ元気になるから、簡単で可愛いよな。


 俺らはどっちもジンさんのマンションの合いカギを持っているが、はりきって玄関を開けたのは勿論ロイだ。玄関に入ったら、ジンさんのスリッパがなかった。つまり、ジンさんはスリッパを履いて、この家のどこかにいるな。迎えに出て来ないから、トイレかもな。
 今日は家で料理の作り置きをする、とジンさんは言っていた。だから、ついでに俺らの好物の材料とかも適当に買って来たんだ。玄関ですぐ褒めて貰えると思ってたけど、まあ後でもいいか。
 俺は台所に入って、冷蔵庫に食材を詰め込んだ。一応ジンさんの秩序を守って、大体いつもここにあるよなって場所に野菜や果物を入れたつもりだ。ロイは張り切ってダイニングテーブルにスナック菓子の袋を積み上げ始めた。
「全部積み上げたら、団長を探しに行きます!」
 謎に袋菓子を山積みしながら、ロイが騒ぐ。探すも何も、トイレとかの用事が済めば勝手に来てくれるだろ。ここ、ジンさんの家だぞ。
「あ~もう! 探しに行きたいのに、最後の1個がなかなか載らないよ~!」
 意味不明な葛藤をするロイを、ちょっとからかってやりたくなった。
 冷蔵庫のドアを閉めて、台所から出た。テーブルに積み上がったスナック菓子の山へ最後の一袋を乗せようとしているロイに、後ろからこっそり近づく。どうせそうだろうと思っていた通り、ロイが持っている袋はロイの大好物のチーズスナックだ。それを後ろからひょいっと奪って、さっと開けてさっと口の中へ流し込んだ。
「酷いよーーーー!!!!!」
 絶叫するロイを見ながらニヤニヤ笑って、ぼりぼりスナックを食べた。悔しがるロイを見ながら食べるチーズスナックは美味い!
 ロイが大声を張り上げている最中、寝室からジンさんが出て来た。トイレかと思ってたけど、意外と寝室にいたらしい。なんだか元気がなくて、ボーっと立ってる。俺らを見たのにニコニコして駆け寄って来ないし、変だよな。まだ夕方なのにガチ寝していて、寝ぼけてるのか?
 そんなジンさんをジロジロ見ていたロイが、急にスナック菓子の山をえり好みして、コンソメスナックをひっつかんだ。俺の大好物!丁度いい。これをめぐって軽くじゃれっこして、ロイと仲直りついでにジンさんも元気づけてやろう。ロイと俺の絡みを見るのがジンさんは大好きだからな。
「これ僕の!!」
 ロイがいい感じで俺に戦いを挑んで来た。コンソメスナックをしつこく見せて来るから、グッと袋の端を掴んだ。
「俺のだ。俺の全身はコンソメで出来てるからな!」
「僕の全身はチーズで出来てるのに、真っ先にチーズを蹂躙した鬼が!! 悪鬼退散!!」
 ロイが俺と菓子を引っ張り合いながら、何度もジンさんを見てる。ウケてるか気にしてるよな。
 ジンさんはまだボーっとした顔で、寝室のドアの前に立っている。ロイと俺が絡んでるのに、近くにも来ないなんて、いよいよ変だよな?
「職場の先輩に何だよ。日頃から口答えはするなって、さっきも言ったよな?」
 ジンさんはボーっとしてるけど、一応見てくれてはいるから、あえてロイを注意して火に油を注いでみた。
 やれ、ロイ!ロイの爆発力でジンさんを元気付けろよな!あと、目上の相手でも対等に張り合おうとするのは、ロイの悪い癖だからな。そこは何度でも注意しておきたいんだよな。
「断る!! 僕は身内だ!!」
 あ。ロイの雰囲気が、笑いを取るじゃなくて感動を取るに変わった。
 そっちに行くのか?なんでか分からないけど、ジンさんの事になるとロイは異常に察しが良くなって頭の回転もガチで早くなるから、乗っかっておこう。ジンさんの事はロイに任すのが最適解だ。
「おい、俺らの真似して身内とか言ってるけど、意味分かってるか?」
 感動を取りたいなら、とりあえず身内の深掘りでいいかな。そう思って、適当に身内の意味をロイに振ってみた。ロイはニヤニヤして、得意満面で
「身内は最強の味方を表す、大変尊い言葉です!」
 と叫んだ。
 これでやっとジンさんが反応して、寝室のドアの前から俺らの方へやって来た。俺らの間に立ったけど、妙に静かだ。多分これ、寝てただけじゃないよな?泣いてた?
 もしかして、寝たのにカトゥが夢に出て来なくて泣いてたのか?それなら、まだ夕方だからだ。カトゥは、父ちゃんと一緒に図書館で勉強するって言って、出かけて行ったからな。「今日はやる」って2人とも真面目に言ってたし、幽霊なのを利用して夜中まで図書館の自動書庫でねばるつもりなんだろう。
 ここは生きてる者同士、俺とロイでジンさんを励まさないとな!
「ソロイ。なんで、身内が最強の味方なんだ?」
「ちょっと~。僕を身内と呼んで、常に最強の味方でいてくれるのは誰でしたっけ?」
 ロイはまるでジンさんの事なら全部分かっているみたいに、ちょっとおどけた感じで返事をして、ジンさんの顔を覗き込んだ。ジンさんがどんな表情をしたのかは、ロイの後ろ頭が邪魔で見えない。けど、しましまのシッポがいい感じで揺れたから、ジンさんが気を取り直して来たのは分かった。
 ロイ、やるな。上手いじゃん。
 ここでちょっと面白い事をしたら、ジンさん笑うかもな?
 そう思って、ロイと引っ張り合っていた菓子袋を、バッと奪い取った。
 途端にロイが俺を睨んで来たが、目の奥が全然怒ってない。俺の作戦に乗っかって来るつもりみたいだ。
「返せよ!! チーズだけでなくコンソメまでも略奪する血も涙もない鬼には今から裏山に行ってセミを採集し1匹ずつ丁寧に豪速球で投げつける所存だ、僕は本気だ!!」
 口では威勢のいい事を言っているが、手が全然スナック菓子を取り返しに来ない。やっぱり、面白い事をしてジンさんを笑わせる作戦に入ったみたいだな。
「一緒に食べるか?」
「うん!」
 無駄に大声でもめて、いきなり仲直りして、無表情で一緒に何かをする。ここまで全部で俺とソロイの芸だ。
 見事にこの芸でジンさんは爆笑して、楽しそうに涙を拭った。

 そうだ。
 これでいいんだ。
 父ちゃんとカトゥの幽霊はいるけど、いるって言ったって幽霊だからな。
 生きてる俺らは、俺らで頑張ろうぜ、ジンさん。

 ジンさんには、俺ら身内がついてるんだからな。

サポートして貰えたら 【ニコとミスミの1分アニメ作り】 【クリエイターさんの応援活動】 に使わせて頂きます♫ サポートだけじゃなくて コメント・メッセージ・作品等での励ましも大歓迎\(//∇//)/ 私にはみんなの応援が必要!! 絶対に!!! ヨロシャーース(*゚∀゚*)/