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ヴィム・ヴェンダース監督作品3本・・・わたしが受け取ったのは家族(あるいは家族のような関係)というテーマ

「ベルリン・天使の詩」に強く惹かれたわたしは、その他の監督作品も鑑賞してみた。こういうの、わたしにはよくあるパターン。ところが、数週間かけて鑑賞可能だった作品は3本だけ!まあラッキーかアンラッキーか・・・一つ一つについて感想をまとめる余力がなく、監督について調べるゆとりもないので、とりあえず自分の記録として予告動画等をまとめておくことにする。(・・と書いてから既に数週間。結局、感想も書いてしまったww)

 まず「ベルリン・天使の詩」後最初に見つけたのは「都会のアリス」だ。

 ライターの仕事がうまくいかなくなった冴えない中年男。アクシデントで一人の少女を押し付けられてしまう。どうやら母親に置き去りにされたらしいのだ。少女を母親か祖母に預けるために、遠回りをして旅をする羽目になってしまう男。ロードムービーというジャンル。
 中年男と、家族の愛に縁がない少女。男は少女に振り回されてうんざりしつつも見捨てることができない。少女と共に旅をすることで、彼自身も救われている面もあるのだ。二人のやり取りが微笑ましい。わたしは、この二人が親子だったらいいのにな・・と思ってしまった。いや、親子でなくとも、このようなふれ合いがもてる関係、その瞬間は、生きる希望となり得るのではないだろうか

 これはね、なかなかよかった。監督久々の最新作「誰のせいでもない」
 小説家を生業とする男。彼は芸術家で、そういう意味でエゴイストだ。作品を書くことが全ての中心となるため、家庭をもてず恋人とも破局する。
 ある時、事件が起きる。雪道を運転している時に、飛び出してきたそり遊びの兄弟を轢き、弟の方が死んでしまう。母親の哀しみ(どうやら母子家庭らしい)、まだ幼い兄の苦悩。それぞれが、年月が経過してもずうっと苦しむことになる。(いや・・彼は苦しんでいたとは言えないかも・・。彼の苦悩は常に彼の創造活動にある。)
 カナダのお話だから、日本の感覚とは違うと思う点もある。誰のせいでもないという点。法的にそういう訳にはいかないだろうし、心情的にも難しいかもしれないと思ってしまった。
 ※追記・・原題Everything Will Be Fineだった・・!
 母親と男が互いに慰め合う場面がいくつかあって・・。母親役のシャルロット・ゲンズブール(セルジュ・ゲンズブールの娘)の雰囲気と演技が素敵だったから、こういうことがあってもいいかもしれないなどと思うのだ。
 10年以上経って、突然あの時の少年が彼を訪ねてくる。彼はあの事件に捕らわれたまま心的外傷後ストレス障害?みたいな状態の中で苦しんでいた。ここからが一番感動的。こういう展開は予想していなかったから。胸が熱くなって、じわぁ~と涙が!ネタバレしない方がよいかな(笑)
 男は独身だけれど、そして加害者と被害者という関係ではあるけれど、少年との心のふれ合いは父と息子のようだと思う。血のつながった家族でなくとも、こういう愛で結びついた関係は家族と言ってもよいのではないかと感じた。

 そして三本目が「パリ、テキサス」だ。これもロードムービーかな。ヴィム・ヴェンダース監督のロードムービー三部作と呼ばれるものの一つらしい。わたしは「ベルリン・天使の詩」が圧倒的に好きだが、この「パリ・テキサス」も傑作と評価が高い作品だそうだ。

 この赤いドレスの女性は主人公の妻で、ナスターシャ・キンスキーロマン・ポランスキー監督にはまっていた頃に観た「テス」でヒロインだった。また、主人公トラヴィスを演じているのはハリー・デイーン・スタントンで、デヴィッド・リンチ監督「ローラ・パーマー最後の7日間」に出演。弟役はデイーン・ストックウェルで、同じくデヴィッド・リンチ監督「ブルー・ベルベット」でメイクして口パクやっていた人だった。

 これだけでうれしくなってしまうけれど、それは作品鑑賞後の感想には影響ない(笑)

 この映画のパリは、フランスのパリではなく、アメリカはテキサス州のパリだ。最初のシーンから妙に惹きつけられた。哀愁を帯びたギターの調べ、どこまでも続きそうな砂漠を、よれたスーツを身に纏ったくたびれた男が歩いている。ひたすら歩く。一体何者だろう?
 男の名はトラヴィス。4年間行方知れずで、死んだと思われていた。記憶も失っていた。 

 記憶喪失の兄を引き取り、愛と誠実さを以て世話をする弟。弟夫婦に引き取られて育ったトラヴィスの一人息子。甥を実の息子として愛情深く育てた弟の妻(彼らは実子に恵まれなかった)。それぞれの愛と葛藤が描かれていく。

 次第に明らかになっていくのは、トラヴィスには心から愛した(過去形じゃないけれど)齢若く美しい妻がいて幸せだったのだが、その妻がある時幼い息子も残して失踪したのだった。

 記憶を取り戻し、自分を見つめ直し、妻を探す旅に出るトラヴィス

 なんといっても、家族の心の絆というものが胸を打つ作品だった。弟夫婦が大切に育てた少年に真実を告げるときの気持ち。子どもを失うかもしれない悲しみに耐える妻の演技が胸を打つ。

 心に残るのは、少年に認めてもらうために一生懸命になるトラヴィス。彼をもう一人の父親と次第に認めるようになる少年。この少年がすごく可愛い!いや、ルックスじゃなくて演技。いや、脚本がよいのだろうね。
 愛し過ぎたあまりに妻を追い詰めてしまった自分・・・それに気が付いたトラヴィス。

 最初のシーンで感じたことだが、これらが映像と音楽と絡み合って名作と言われる映画が完成したのだろう。

 これらはヴィム・ヴェンダース監督の作品の中のほんの一部だけれど、たまたま同じようなテーマの作品を鑑賞したのかもしれない。あるいは・・わたしの個人的な見方なのかもしれないが・・・。

 年代順に並べると

都会のアリス・・・・1974年
パリ・テキサス・・・1984年
ベルリン・天使の詩・1987年
誰のせいでもない・・2015年

 今の時代は家族という関係が希薄になっていたり血縁だけでない繋がりをもつ人々がいたりと、多様な価値観が認められるようになっていると思う。そんな時代でも、その形は異なっていても、その基本となる大切な部分は変わらないのではないかと考えさせられた。