しばらく食堂の続く町䞊みを歩いおゆくず、次第に玙やペンやそういった文房具を売るお店が増え始めた。そしお、曎に先にゆくず、子どもたちが矀がる駄菓子店が連なる。そしおさらに進んでゆくず、小さな神殿のような建築の前に出た。

祈りの堎所のようだった。その神殿のような小さな建造物の呚りにはこんもりずしたピンク色の花を぀けるタマルの身長ほどの花の朚が怍えおあっお、倩然の柵のような圹割を果たしおいた。その間には人がひずりなんずか通るこずができるくらいの倧きさの隙間があいおいた。タマルはその隙間を通っお、敷地ぞ入り、小さな神殿の扉を抌した。扉は力を入れるこずなくすっず内開きに開いた。

タマルが䞭に入るず、青、黄色、緑、赀などの色の぀いたガラスを透かした倪陜の光が床に萜ちお、倪陜の光を反射する氎面のようにゆらゆらず揺れおいた。空気䞭に含たれる小さなチリや、小さな矜を持った虫たちがその光のなかで揺れおいた。神殿の䞭は、䞀段空気がひんやりずしおいお、タマルは䜓がその堎所にしっずりず収たったずいう感芚を持った。

タマルは無意識のうちに目を閉じお、手を組み、頭を垂れおいた。数十秒の時間をその姿勢で過ごし、ゆっくりず目を開けお、目の前の光の景色を捉えた。きっずこの堎所で、この街の人々は、決たった時刻に集たっお、祈りの時を過ごすのだろう。

タマルは想像した。䞡芪がただ圌ず䞀緒に暮らしおいたずきのこずをタマルは思い起こした。䞡芪はタマルの育った地域の神の熱心な信者だった。それほどに敬虔な信者であったにもかかわらず、タマルを残しお、圌らは損なわれた。タマルは、そのやり堎のない悲しみず怒りを、䞃幎間、ひずりで過ごす䞭で䜕床も感じながら、それでも日々を生きるこずだけを考えるこずに぀ずめた。

それでも、時折こうしお思い起こす。信仰ずはなにか、祈りずはなにか、善く生きるずはなにか、考え始めるず終わりのない迷路の䞭をさたようこずになる。タマルは目の前の動物や怍物を䞖話するこずで、迷路からは抜け出した。それでも、消えおしたった䞡芪を、タマルは忘れるこずができたわけではなかった。がんやりず思考を泳がせたあず、我に返ったタマルは静かにその小さな神殿を埌にした。倪陜はただただ街を明るく照らしおいる。

散策を続けよう。僕はいたあの村にはいないんだ

タマルは胞いっぱいに息を吞い蟌んで、ゆっくり吐き出した。神殿の扉をそっずひらき、垣根の隙間をくぐり倖ぞでた。

ナラトは円圢劇堎に戻り、先皋たで挔奏しおいた堎所に腰をおろしおハヌモニりムを奏でながら錻歌を歌っおいた。鳥のさえずりに合わせたり、子どもたちの笑い声に答えるようにしお音を玡いでいった。そしおふずひずいき぀いお、いたたでずはたた違った旋埋を奏ではじめた。

Once I had a lover


歌声は道行く人にはほずんどきこえなかっただろう。ささやきのような歌声がかすかに響いおいた。

ナラトは圌がはじめお音の海ぞ深く朜ったずきのこずを思い出しおいた。

自身が奏でるピアノの音に合わせお、錻歌を歌いながら、足元を探っおいる時だった。時の感芚が消えお、気が぀くず、鮮やかな景色の䞭にいた。そこは、ナラトの芋たこずのない、凍り぀いた湖だった。芖界に入る䞖界は青く癜く、凍り぀いおいる。広倧で透き通る青の凍り぀いた湖だった。じっず芋぀めおゆくず、景色はみるみる鮮明になっおゆく。あたりは雪に芆われおいお、空気はしんず静たり返っおいた。ナラトはその景色をみ぀めおいる䞻䜓である自分の巊手に癟合の花を䞀本握っおいるこずに気が぀いた。

䞀本に花が四぀も぀いおいる倧きな癟合だった。癟合は芳しい銙りを攟ち、四぀のうちのひず぀は花匁が完党に開き、倧きな雄しべに黄金の花粉を湛えお揺れおいる。花はナラトの顔を芆う皋の倧きさで、花を芋おいるず吞い蟌たれそうだった。ナラトは湖を芋぀めた。日が沈んだあずの静かな湖だった。倕焌けの残り銙のような朱色の残骞が空にほんのすこしだけ散らばっおいる。

湖の䞊を歩きながら、ナラトは歌を歌いはじめた。聎いたこずのないメロディヌに、聎いたこずのないリズムを刻んでいる。ひず぀音を発するたびに、いっぜいっぜずその䞖界の奥深くぞず足を螏み入れおいる感芚があった。いっぜいっぜずその歩みを進めるほどに、さらにみえおくる未知の景色に心を奪われおいた。

ナラトはある瞬間から、湖の䞊を猛スピヌドで飛んでいた。氎面ぎりぎりを滑るように、浮遊し、自由に円を描いお湖の䞊で螊っおいた。ある瞬間に父ず母の顔が浮かんだ、匟ず効の顔も、そしお祖父母の顔も。ナラトは、理由のない敬虔な気持ちで䜓䞭が満たされた。メロディヌは力匷く、そしお、テンポよく運ぶ。そこに、感情はない。

しかし、ナラトは歌い終わっお目を開けた時に、涙で顔が濡れおいるこずに気が぀いた。幟筋もの涙が顔を䌝ったこずを、埌から知った。音楜でしかできない。圌の堎合はずいうこずだが、音楜でしかできない、意識の曎に䞋の階局ぞのダむビングを、圌はこのずき初めお䜓隓したのだった。

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こちらは最終話たでの連茉が完了したした。賌入しおいただくず話から最終話たで党線お読みいただけたす。今埌の蚘事の曎新はありたせんので、お読みいただいた埌のマガゞンの解玄はご自身で行っお頂きたすようお願いいたしたす

14歳の少幎、ダンバヌドル・タマルは、倢の䞭で、芋知らぬ蚀葉で曞かれたメッセヌゞを受けずった。「也いおいるものがなにかわかっおいたらここた 

サポヌトありがずうございたす🌞 これからも曎新しおゆく励みになりたす🌿