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嘘日記#2「ゴミ出し貴婦人」

生活の中で僕が1番嫌いなのがゴミ出しなんです。朝の寒い中、重たいゴミ袋を持って外に出るのが億劫で嫌いなのです。眠い中、近所の方と「おはようございます」という一言を言うのですら億劫で仕方ないのです。

先日もいつものようにゴミ出しをしていたら、ちょっとした段差につまづいてしまいました。このちょっとした段差に何度かつまずいたことがあるのですが、その度に「お年寄りのためにも早く修繕してほしいな」と思っていたんです。そして、今回はその段差につまずいて、膝を擦りむいてしまいました。寒いし、近所の方も多いし、「恥ずかしいな、膝も痛いな」と思っていたんです。すると、かすかに妖艶な香りがしました。

なんとも言えない大人の女性の香り。家で胡蝶蘭を育てているような高貴な雰囲気のマダムが白金に愛犬を連れて行くときにつける香水。そんな匂いです。
ふと顔を上げてみると、そこにはトルコ風のストールを巻いて佇む貴婦人が立っていました。そして、彼女は僕に「あら、擦りむいてるじゃない」と言い、膝の傷口にキスをしました。
「え?キスした?」と戸惑って何も出来ずにいたのですが、痛みはすぐに消え去りました。

そして、痛みがなくなった傷口を見ると、なんと万国旗が出て来たんです。日本、韓国、アメリカ、中国、もちろんトルコの国旗も。
僕は驚いて動けずにいると、彼女は突然走り出し、それは女性とは思えない速度で、向かいにあるコイントス コイン専門店の西洋風のシックな扉に全速力でぶつかったかと思うと、今度はそのシックな西洋風のドアにゆっくり、それは老夫婦の散歩のようにゆっくり溶けていきました。

「走るとき、早し。溶けるときは遅し。」
今後の教訓にします。

#日記
#お笑い
#ゴミ出し
#コイントス

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