見出し画像

【デッド・オワ・ライブ】(プロローグ)

(漫画原作案である「デッド・オワ・ライブ」という物語のシナリオ(プロローグ)を ざっくり作りましたので、随時アップしていきます

もし お時間ございましたら、少しだけでも読んで頂けると嬉しいです…!

※これは小説ではなく「シナリオ」です)

ーーーーーーーーーーーーーー

【プロローグ】



「ある人間が間違った事を口にした。

それは常識的に考えれば
誰もが すぐに“間違いである”と
気付くことが出来るような内容だった。

すると すかさず
すぐ隣にいた
もう1人の人間が大きな声で こう叫んだ。

「なんでやねん。」

1人が間違い
もう1人が その間違いを正していく。
そんな機械的で単純な一連のやり取り。

人はそれを“漫才”と呼び
その漫才を生業とする人間達の事を
人は“芸人”と呼んだ。

そんな漫才の魅力に取り憑かれ、親からの猛烈な反対を押し切りながら
高卒で芸人の道へと進んだ

若く才能に満ち溢れる
ある1人の青年がいた…」



『はい ど〜も〜
みっちーず です〜
よろしくお願いします〜』



“みっちーず”

結成2年目、東京出身の人気お笑いコンビ。


若手のホープとして あらゆるメディアから注目され、今まさに 乗りに乗り出している2人組である。

結成わずか1年で
若手お笑い芸人の登竜門と言われる「お笑いXYZグランプリ」を優勝。

その後も数々の賞レースで名を揚げ
今まさに お笑い芸人“日本一”を決める大会

“N−1グランプリ”の3回戦ステージの舞台上で

相方のボケ(間違い)をツッコミ(正し)続ける彼こそが…

「いや、そんなわけねぇだろ!
もういいわ!!
どうも、ありがとうございました〜」

(SE:観客の笑い声)

“津古 道雄”(つこ みちお)

この物語の主人公であり
お笑いコンビ『みっちーず』のツッコミ担当である。

神は彼に“お笑いの才能”を授けた。
頭の回転の速さに秀逸なワードセンス、またキレのある喋り口調に滑舌の良さなど…

彼には芸人として売れる為の素質が数多く備わっており、このままいけばN-1でも結果を残し
さらなる飛躍が期待されていた…

…しかし、皮肉な事に
そんな“お笑い”との出会いが
まだ若すぎる彼の命を奪う大事件へと発展してしまうことになろうとは

この時はまだ
誰一人として予想だにしていなかったのだった…

ーーーーーーーーーーーーーーー

「それではN-1グランプリ3回戦
合格者を発表します…」

静寂と緊張が入り交じる
張り詰めた空気の中

その場にいる芸人達 全員の
“ゴクリ”という唾を飲む音が
カタカナの文字として目視できそうなほど鮮明に聞こえてくる気がした。

「エントリーNo.58 スナイパーズ
エントリーNo.103 漆黒な四国
エントリーNo.197 ネコドライバー
エントリーNo.257 弱肉教職員
エントリーNo.304 王様のブランク
エントリーNo.312…」

次々と3回戦の合格者達が発表されていく中
涙を流しながら喜び合うコンビから
絵に描いたように膝から崩れ落ちる者など、様々な感情が入り乱れる
まさに天国と地獄の狭間のような空間で

道雄は自分達のコンビ名が呼ばれるのを今か今かと待っていた。

…まぁ、別に不安なんてものは1ミリ…
いや、0.01ミリも無かったけれど。


「…エントリーNo.3120 みっちーず
エントリーNo.3187 ラジオカンパニー

…以上 50組が準決勝へ進出となります。おめでとうございます。

なお、準決勝のスケジュール等につきましては…」


N-1グランプリ3回戦…
シビアで残酷な狭き門である。

本大会は毎年
総エントリー数が3千…いや4千を超えるが

3回戦の時点で なんと通過者は
その内の50組にまで絞られる。

更に そこから準決勝を経て
勝ち上がった わずか8組の選ばれし
お笑いコンビが
地上波でも放送が確約されている決勝の舞台で熱い戦いを繰り広げるのだ。

みっちーず は無事

準決勝へとコマを進めたわけだが…


まぁ、正直 予想通りの結果である。


ネタ中の客席からの笑い声、審査員達の表情からもそうだが


何より道雄は

「“この俺”が一切妥協を許さず、何日も何日も練りに練って完成させた完璧な この漫才がウケないはずが無い」

という圧倒的な自信があった。


道雄は特に喜びの感情を表出させること無く、その場でただ

ラーメン屋の頑固オヤジ店主かのごとく余裕な表情で意味ありげに ゆっくりと うなづきながら深く腕を組んで立っていた。


そんな冷静に勝利を噛み締めている道雄の横で


膝から崩れ落ちながらアホみたいに汚い顔をして

涙、鼻水、ヨダレと、顔から出せる液という液を垂れ流しながら喜びの感情を表出させまくっている男がいる。


彼の名前は猿山 暁道(さるやま あきみち)


“猿山”という名字にも関わらず犬系男子のベビーフェイスな僕の相方で

みっちーず のボケ担当である。


猿山と道雄は実家が近く、幼稚園の頃からの幼馴染みで


高校時代は同じ“お笑いサークル”で活動していた

いわゆる腐れ縁というやつだ。


道雄「おいおい、何そこまで喜んでんだよ…まだ3回戦だぞ?

そんなドブみたいな顔して…」


猿山「だ、だ、だっでぇ〜!

嬉じい゛もんはじがだないだろお゛ぉぉ〜!う゛う゛ぅ…」


道雄「あと、嬉しくて“涙”と“鼻水”までは分かるんだけど

“ヨダレ”出すのは やめてもらっていい?

喜んでんのか腹減ってんのか

よく分かんねぇから…」


猿山「う゛う゛ぅ…

で、でも…本当に良かった…


去年は到達出来なかった

初めての準決勝の舞台…


この勢いで決勝進出も夢じゃないかも…!?」


そう、道雄達は高卒の芸歴2年目コンビで

実は1年目にも

この大会に挑戦していた。


まぁ、とある事情で

去年は3回戦で姿を消すことになってしまったのだが…


道雄「バカ、決勝進出なんて通過点にすぎない。俺らが目指すは ただ1つ…


N-1グランプリ優勝だろ…?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして月日は流れ

道雄達は準決勝 前夜を迎えた。


昔から馴染みのある公園で

いつものように動物達の遊具に向けた

猿山とのネタ合わせを済ませ

牡蠣などのナマモノが好物な彼に
“変なモノは絶対に喰わないように”
と何度も忠告した後、明日の集合場所と時間をしつこいほどに何度も確認しあい、それぞれの帰路に就く。

やるだけの事は やったつもりだ。

それに今回のネタは

3回戦のネタよりも出来が良い自信がある…


あとは去年のように

何か変なアクシデントでもない限り

俺達の決勝進出は決定的と言っていいだろう。


みっちーず は最強のコンビ


俺達は いつか必ず

日本を代表するような芸人になるのだから…!


道雄の自信は決して揺らがなかった。


家具も少なく殺風景で鍵もかけられていない無防備な1Kの自宅に戻り


靴を脱ぎ捨て 風呂も入らず

そのまま敷きっぱなしの布団へと飛び込むと

意外にも眠気は すぐにやって来た。


道雄は横になりながら、なぜか自分が

いつも以上にネタ合わせの疲れが溜まっている事に気づく。


もしかすると、“初の準決勝の舞台”

ということもあり 無意識のうちに

感じていないつもりだったプレッシャーのようなものを

少しばかりは 感じてしまっていたのかもしれない。


道雄はアラームを設定したり、電車の時間を調べたりと

朦朧とする意識の中、仰向けでスマホをイジりながら大きなアクビをかましていた。


その後の事は正直あまり覚えていない。きっと蓄積していた疲れによっていつの間にか気絶する様に眠りの世界へと誘われてしまったのであろう。


道雄は深い深い眠りについた。


、、、、、


…そして、その後

道雄が目を覚ますことは

二度と無かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

(第一章へ つづく…)