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【デッド•オワ•ライブ】(第四章) 『走馬灯』

漫画原作案である「デッド・オワ・ライブ」という物語のシナリオ(第四章)を ざっくり作りましたので、随時アップしていきます

もし お時間ございましたら、少しだけでも読んで頂けると嬉しいです…!

※これは小説ではなく「シナリオ」です)

※第一章以降は どんな内容のストーリーなのかだけ分かるような、さらに噛み砕いたシナリオになっております。

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【第四章】「走馬灯」

『※ただし蘇生が可能なのは
コンビのうち“一名“のみとする。』


という致命的な注意書きを見逃していた二人は
思わず顔を見合わせる。


道雄「な、なんで1人だけなんだよ…!
どっちも生き返らせてくれよ…!

神様か何か知らんけど頼む…!
この通り…!」


どこの宗派かも分からない神に対し
とりあえず 二礼二拍手一礼してみる道雄。



主催者(神)「(ワシ、神社じゃないんだけど…)

すまん、それは できない…」

道雄「なんでだよ…! 1人も2人も
そんな変わんねぇだろ!?」

主催者(神)「いや、その人数1人分の差が大きいんじゃ…実はな…」


主催者(神)は恐ろしく深刻な表情で間を開ける。

その言葉の続きをゴクリと唾を飲み待ち構える道雄。


主催者(神)「すごく疲れるんじゃ。」

道雄「…え?」

主催者(神)「だから、すごく疲れるのよ。
人間生き返らせるの。

カロリーの消費がすごいの。

水泳にすると約30分
ウォーキングにすると約1時間くらいの運動量なの

だから、あんまり やりたくないの。
10年に1度、1人くらいのペースが丁度いいの、分かる?」


道雄「大した運動量じゃねぇじゃん…
そんくらい頑張れるだろ!」

主催者(神)「うるさい!ご年配の体力なめんな!」



どうやら道雄が何と言おうがルールはルール。
”蘇生は一人”という優勝特典は変えられそうになかった。



道雄の心の声(なんてこった…!
どうする…? 彼女に権利を譲るべきか…?

でも、せっかく手に入れたこのチャンス
簡単に逃すわけには…)



頭を悩ます道雄を急かす主催者(神)は
何かヨガのポーズの様な独特な動きをしながら
言葉を続ける。



主催者(神)「早く決めてくれんか、こっちも時間が無いんじゃ。もう蘇生の準備に取り掛かるから
30秒以内に決めるんじゃぞ。」


すると主催者(神)は独特なポーズのまま
奇声を発し、スタンドマイクがあった位置に
輝く光の柱を召喚した。


主催者(神)「はぁ…はぁ…マジ疲れた…
この光の柱みたいなやつ作んのが本当に疲れるのよ…

…というわけで、この光を全身に浴びた者が

死んだ場面から生き返り、人生をやり直す事が出来る訳だが

どちらにするか決めたか?」



すると女性が おもむろに口を開く。


女性「あ、あの…

道雄さん、これはアナタが生き返るべきです。

だって、この優勝は100%…いや、200% 道雄さんのおかげなんですよ?

私の事は気にせず、また人間界で夢を叶えてください…!」


道雄「で、でも…」



ニッコリと笑顔で道雄の手を引き
光へと近づく彼女。

しかし、光の目の前まで辿り着いた その瞬間
道雄は驚きの行動に出る。



道雄「ごめん、キミの気持ちは凄く嬉しいよ…


でも…!!」



そう言って道雄は繋いでいた手を強く引っ張り
彼女を光の柱へと ぶん投げる様に手を放す。



女性「み、道雄さん…!?

ちょ、ちょっと!!

何してるんですか…!?」


道雄「…キミ、もう一度 会いたい人がいるんだろ?

彼氏さんも きっとキミに
会いたくて仕方がないはずさ…」


女性「そ、そんな…!でも…!!」


道雄「最後くらい、可愛い女の子の前で
カッコつけさせてよ… な?

…せっかくだから俺は
しばらく天国での生活でも満喫して

10年後、また この大会で優勝すりゃいいだけよ。

そんで生き返ったら、またキミとも
もう一度どこかで会えたら嬉しいな…!

…なんてね笑」



女性は必死に光から抜け出そうとするも

“その柱に入り
一度 蘇生の儀式が始まってしまうと
もう柱から出る事は出来ない“

と主催者(神)から告げられる。



女性は 段々と強まってくる光の中で
膝から崩れ落ち、涙を流し始める。



女性「絶対だよ…

絶対に10年後、また優勝して

生きて戻ってくるんだよ…!(涙)


私、道雄くんの事、ずっと待ってるから…!

絶対に、絶対だからね…!(涙)」




光の柱の輝きが
より一層 強まり

彼女の姿は段々と見えなくなってくる。


そんな彼女に道雄は最後に問いかける。


道雄「そうだ、キミの名前
まだ聞いてなかったね。

せっかくだし最後に、教えてくれないか?」


女性「私の…名前は…」



光の柱は もう直視できない程、閃光のような輝きを放ちながらバチバチと大きな音を立て出す。


女性「蒼空…


私の名前は…

柊 蒼空(ひいらぎ そら)…!」



今にも爆発しそうなその柱の中から
かろうじて彼女の最後の言葉…

そして彼女の名前が聞こえた瞬間

ついに光は大きな爆発音を立て
女性と共に 跡形も無く消えてしまった…


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10年に1度の蘇生をかけた大会
デッド•オワ•ライブも終了し

道雄は会場から離れた場所で体育座りをしながら
うつむいて小さくなっていた。


道雄「これで、よかったんだよな…うん。

それにしても柊さん、可愛かったなぁ…

彼女には幸せになって欲しいな…」


すると、若干あきれた表情で
腕を組みながら近寄ってくる女神。


女神「あ〜あぁ〜自分、どんだけ お人好しやねん…

ほんまビックリしたわぁ…

ほぼアンタのおかげで優勝したようなモンやのに

出会ったばかりの よく知らん女に生き返る権利 譲ってしまうなんて…

本当バカな男やなぁ…」


道雄「いいんだ、俺

あの子の生前の話を聞いたり、笑顔を見てたら

”この子には生きて欲しい“って

何か心の底で無意識に思っちゃったんだよね。


それに、大会は また10年後に開催されんだろ?

そんなら のんびり
新しく相方でも探して
また優勝すりゃいいだけの話…」

女神「あ…そのこと なんやけど…」


そう言って女神は再び、脇の下に挟んでいた大会のチラシを取り出し(相変わらず脇汗で濡れてる)
道雄に差し出す。

そして女神が指差した先に
これまた小さく書かれていた衝撃の注意書きに

道雄は絶望を知ることとなる…



道雄「しゅ…“出場者数 過多を避ける為

大会へのエントリーは

一度の死亡につき1人1回までとする ”…!?


それって、つまり…」


女神「そう…残念やけど、今回一度
大会にエントリーしてしまったアンタにはもう

“デッド•オワ•ライブに出場する権利は無い”んや

アンタは この先

もう一生、天国から抜け出す事は出来ひん。」


道雄「そ、そんな…!」



絶望を通り越し、真っ白に燃え尽きてしまう道雄。

ダムが決壊してしまったかのごとく
涙腺の蛇口が全開になり、溢れ出す涙が止まらない。



女神「まぁ、さすがに こればっかりはルールやからなぁ…ドンマイとしか言いようがない。

もう諦めて、天国での生活を楽しむ方向にシフトせんと、アンタもメンタル持たんで。」


道雄の心の声(はぁ…何やってんだろ俺…(涙)

人生で やり残した事を
生き返って やり遂げるんじゃ無かったのか…?

せっかく優勝して手に入れた蘇生のチャンスを

カッコつけて女の子に譲ったりなんかしちゃって
自己満足して英雄気取り?

俺はバカなのか…?(涙))



あまりにも大きな絶望からか
自分が正しいと思い行った善行に対しても
負の感情を抱き、自己嫌悪に陥る道雄。

すると女神は
そんな道雄に優しく寄り添い
黄色い しわくちゃのハンカチを差し出して

耳元で小さく囁く。


女神「しゃーないなぁ… ホンマにもう、アンタは…


んじゃ、ほんなら…ここからは

あんま周りに聞かれたら マズい話をさせてもらう。


ここは人も そこそこ おるから

ちょっと場所変えよか。」


そう言って女神は 指パッチンの動作で

すかしっぺの様な音を出し(鳴らせないんかい)

ボロボロの道雄を別の場所へと瞬間的に転送した。

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気がつくと、道雄は天国の片隅に位置する
ホワイトボードと机と椅子だけが置かれた
予備校の自習室のような一室にいた。



女神「はーい、着席〜
ほんなら授業始めんで〜」

道雄「え…!? いきなり何!?
何が始まんの…!?」

女神「ええから はよ座れ
今から お前に ちょっとした

”死後の世界の裏話“をしたるわ。」



そう言って女神はホワイトボードに
何か大きく文字を書き始める。



女神「今日の授業のテーマはズバリこれ…!

”走馬灯”についてや!」


道雄「そ、走馬灯…?」


女神「突然やけど、みんなにとって“走馬灯”って
どんなイメージや?

それじゃあ…道雄くん!答えてみ?」


道雄「みんなって、俺しかいねぇけど…

う〜ん、そうだなぁ…

死ぬ時、天国へ行く前に
過去の自分の人生の記憶が
目に見える様に脳内で一気に蘇る…

って感じ?」


女神「まぁ体感は そんな感じやろうな。

でもな、そのイメージは いくつか間違っとる。



まず一つ目。

厳密に言うと、人間が走馬灯を見ているのは
“天国へ行く前”ではなく”天国に来た後“

天国に来て最初に目が覚める前
つまり まだ おねむの状態の間に

ウチら女神の”特殊な力”によって
見させられている物なんや。

まぁ、一種のサービスみたいなもんやな。



そんで 二つ目。

実は走馬灯ってのは
”脳内に蘇る記憶“などではない。

…一種の”タイムトラベル”なんや。」


道雄「タイムトラベル…?」

女神「そう、簡単に説明すると

まず人間は死んだ後、天国に眠った状態で送られてくる。

その眠った状態から目が覚める前に
ウチら女神は さっき言うた“特殊な力“によって

その人間を“過去へと転送”しとるんや。

そうして その人間が
もう一度“同じ過去”を経験している時に
実際に目で見て感じている物たちが
”走馬灯“ってことになるんや。」



道雄「ちょっと待て、どうして
”同じ過去”と言い切れるんだ?

走馬灯の最中、つまり
過去に戻っている間に
”自分が死ぬ未来“を変える事が出来るんじゃ?」



女神「えぇ所に気づいたな。

しかし、これが上手いこと できとって

過去へ転送される際、人間は

“天国より前に起きた出来事の記憶は
全て消えてしまう“んや

つまり、過去に戻った所で
”自分が死ぬ という未来を知らない“人間に
未来を変える事は不可能。

同じ過去を繰り返し、同じ場面で死んでいく。

そんで、実質 2回目の死を経験した後…
つまり走馬灯を見終えた後

人間は再び天国へと送られてきて、目が覚めたら
ウチら女神と ご対面…って流れや」


道雄「な、なるほど…

じゃあ実は人間は
“同じ人生を二度 生きてる“って事なのか…」


説明の為の文字でビッシリになった
ホワイトボードを背中に
女神は話を続ける。


女神「ほんで、女神達の間の規則で
走馬灯を見させるのは原則

“天国に来て死者が最初に目が覚める前“
かつ
“1人につき1回まで”

という事になっとる。

同じ過去を繰り返すとはいえ
同じ人間をむやみやたらに
何度も何度も過去へ転送するのは
さすがにリスキーやからな。」


道雄「そうなのか…

…てか、あれ?

そういえば俺、死んだ後

まだ走馬灯 見てないような気がするんだけど
気のせい?」


女神「そう…アンタの担当女神であるワイは

あえて走馬灯を見せないまま
アンタが目覚めるのを待った…

つまり、ワイには まだ1回 ”お前を過去に転送する権利”が残っとるっちゅうわけや…!」


道雄「な、なに…!?

あ、でも、結局 過去に転送されても
記憶が消えちゃうんじゃ

さっきも言ってた通り
同じ過去を繰り返すだけ なんじゃ…?」

女神「アンタ、さっきワイが言うた事
もう忘れたんか?」


道雄「…え?」


女神「過去へ転送される際、人間は

“天国より前に起きた出来事の記憶“は
全て消えてしまう…

その逆を言えば “天国で目覚めた後の記憶“は
保持したままなんや」


道雄「…!」


女神「つまりアンタは

ウチが走馬灯を見せるタイミングを天国で目を覚ました後、つまり 後ろに少しズラしてやったおかげで

”天国での記憶を保持したまま”
過去をやり直す事が出来るんや…!」


道雄「な、なるほど…!

つまり俺は
自分が死ぬタイミングと原因を知った状態で
過去に戻れる…!

過去を変える事が出来るかもしれないって事か…!」


女神「そういうことや!

でも、走馬灯は実際 ただのサービスの一環であって
過去を変える為の物ではない。

あまり過去を変えすぎてしまうと
それが天界にバレてしまい
過去への転送は強制終了してしまう。

その時は本物のゲームオーバーやから要注意や。

…まぁ、そこらへんの細かい話は
アンタを過去へ転送した後に話たる…!」


そう言って女神は 
手のひらから神々しい光を放ち
道雄の身体全体を包み込む。


女神「チャンスは1回きりや…
絶対に しくじるんやないで…!

アンタの唯一の武器は
ここ、天国での記憶や…!


上手に使って 己の過去を変えろ…!」



そうして道雄は走馬灯を見に…
いや、過去を変えるために…


眩い光を放ちながら
跡形もなく 過去へと転送されていったのであった。

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(第四章へ つづく…)