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日本公開映画のうち「全米が泣いている」のは何%なのか? ~映画キャッチコピーの栄枯盛衰調べてみた~

はろー、noteではお久しぶりです! 実に3週間ぶりぐらいかな。「忙しくても、絶対noteは週1で更新するぞー」と決意した次の週から、まったく守れなくなりました。なのでこれからは何の決意もせずに、のびのびと気の向くまま更新しようと思います。


ちなみに(全然本題に関係のない宣伝ですが)Twitterではお伝えしてますが、このnoteがきっかけで、恐れ多くもWEBサイトで記事を書かせてもらったりしておりました。。「えっ人生でこんなことあるんだ⁈」という気持ちでいっぱいです。誠心誠意書いているから、良ければ読んであげてみてください。どちらも(当たり前と言えば当たり前だけど笑)音楽ネタだよ!


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さて、そういう告知宣伝はさみつつ、今回の記事は「映画の調査ネタ」でお届けします。題して


日本公開映画のうち「全米が泣いている」のは何%なのか?


問題ですね。既ににじみ出るどうでもいい感。



しかしですね、こちら最初に結論を出しておくと


全米、ほとんど泣いてない


んですよね。私も調べ始めて早々に「あれ... 全米って意外と泣かないな...?」と思い始め、半分ぐらい調べたところで「いや、もしかして全米ってまったく泣いていないんじゃ...?」と疑うようになり、焦ってググったところ天下のねとらぼ様でこんな記事が出ていました。


http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1709/20/news055.html


そう、全米って思ったよりも泣いてない。誰だよ全米なんてすぐに泣くとか言ったやつ! あいつ全然泣かないじゃん!



まぁ察するに「全米自体はあんまり泣かないけど、大ヒット作のキャッチコピーによく使われていたので、コピーの認知度が異常に高い」ということみたいですが、なんにせよ当初の計画が崩れたので、「全米は泣いた」の趣旨を少し広げて「洋画のキャッチコピー」を題材に調べてみたのがここから先の記事になります。どうぞ大きな方向転換の末の、涙ぐましい努力を読んであげてくださいませ。



1. 映画のキャッチコピーのうち、「海外で人気!」をウリにしているのは何%か?


というわけで、1つ目のテーマは「海外で超人気!」をウリ文句にしてる映画がどれくらいあるかというものです。簡単に言えば「全米NO.1ヒット!」「世界中が大熱狂!」みたいなやつです。


ちなみに、調査対象は 2000 - 2017年、つまり2000年代の17年間におけるそれぞれの年の洋画興行収入ランキングTOP10・全170本が対象です。


なお、映画のキャッチコピーはチラシを参照しています。予告編は補完的に参考にはしたものの、なぜか2008年以前の映画は、公式の予告編があまりネットに上がってなかった...。2009年に映画業界で何があったのかわからないけど、とりあえず大きめのデジタルシフトがあったことだけは伝わってきたよ。というわけで、今回は17年以上前から使われていて、データも多い「チラシ」を使って調べています。

(また、ここで挙げた以外にもテレビでの宣伝ネタ・吹替の俳優さん等の「ウリ」はそれぞれの作品にたくさんあると思いますが、あくまで映画としてメインの「ウリ文句」が一体何かということで、ここでは調査対象外としています)


それでは結果を見てみましょう! 洋画のキャッチコピーのうち「海外で人気!」をうたっていた作品の割合はこんな感じ。




意外と少ない、という感じでしょうか。「全米が泣く」どころか、「全米で人気!」もそこまで多くないコピーらしい。じゃあ何が多いんだよというのは後から出すからちょっと待ってね。



ちなみに「海外で人気!」のコピーを使っていた主な作品としては


ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間(2002):驚異の大ヒット!全米興収ランキング1位!

ナイトミュージアム(2007)全米初登場No.1獲得!! 3週連続1位の大ヒットファンタジー・アドベンチャー!

アバター(2009):タイタニックを抜き、ついに全世界興行収入 歴代1位樹立 

TED(2013):全世界で興行収入No.1!ミラクルヒット


などでした。さすが全米No.1、なんだかそうそうたるラインナップ! 

ちなみに、特にすごいのを挙げるとするなら「アバター」でしょうか。ご存じの方も多いと思いますが、現時点で歴代「世界で最も売れた映画」の堂々1位。ちなみに、歴代2位は同じジェームズ・キャメロン監督による「タイタニック」(1997)で、10年以上誰も破れなかった自身の世界記録を、まさかの自分で破ってしまうというチートレベルの伝説に、全映画ファンがどよめいたよね!笑 ジェームズ・キャメロンかっこよすぎか、前世でどれだけ徳積んだんだよ!!!



2. 洋画でよく使われている「ウリ文句」は何なのか?


では「海外で人気!」が意外と使われていないなら、逆に何が多いんでしょうか? 調査対象は先程と同じで、それぞれの映画のウリ文句をジャンルに分けて出してみたのがこのコーナーです。


なお、「〇〇主演! ××監督最新作!」のような形で複数のコピーが書かれたチラシは、そのまま複数項目で重複カウントしています。ついでに、だいたい1枚のチラシで、大きく目立って打ち出されているコピー(=ウリ文句)は1-4個までという特に役に立たない知識も仕入れました。一般人としては何に使うかわからないけど、何かの時に使ってください。何の時だろ?



そういうわけで結果がこちら!


最も多いのは「シリーズ作品・続編」がウリ文句の作品でした。「あいつらがパワーアップして帰って来る!」「シリーズ最悪のピンチが到来?!」等のコピーが該当します。具体的な作品としては、ミッション・イン・ポッシブル、007、ハリー・ポッター、ナルニア王国、バイオ・ハザード等々です。

数字で見ると、170本のうち、ちょうど50%が「シリーズ作品・続編」がウリの作品になっています。1作品目は「シリーズ作品・続編」をウリ文句にしていないと考えると、毎年日本で売れている洋画の半分以上はシリーズ作品ということになる。そりゃ続編が作られるわけだ... シリーズ物って本当にすごい!!


ちなみに、2番目に多いウリ文句である「キャスト」がウリの具体例を挙げてみるとナイト&デイ(2010)の「トム・クルーズ×キャメロン・ディアス 2代スターの奇跡の競演」などです。

具体的にウリにされているキャストとしては、トム・クルーズ、マット・デイモン、ブラッド・ピット、ミラ・ジョヴォヴィッチあたりが多かった。映画ファン以外にも名の知られる不朽のスターの出演作は「キャスト」が大きくウリにされているようですね。


また、監督・スタッフは「あのティム・バートン最新作」「インデペンデンス・デイのローランド・エメリッヒ監督作品」などなどが多かったです。特にティム・バートン監督は、それ以外のすべてのウリ文句(キャストやアワード受賞など)をはねのけて、だいたいチラシの一番目立つところに大きく「ティム・バートン監督作」と書かれていて、強い監督人気を感じました(※私も好きです)


そして「スタジオ」がウリ文句になっていたのは、言う間でもなく「ディズニー」と、ミニオンズなどで知られるアニメスタジオ「イルミネーション」の2つでした(むしろこの2つの作品以外で、スタジオをウリにしている洋画は1つもなかった)

中でも特に顕著なのがズートピア(2016)で、原作もなく、監督も当時はそこまで知られてないという状況の中、チラシ上ではひたすら「ディズニーの最新作」という、その1点だけをウリに宣伝を突破してました。しかも、予告編でも監督名すらほとんど出さず「ディズニー作品!」だけをアピールしてくる潔さ。それであれだけ人気が出るんだから、本当にすごいよディズニーって...!!


その他、ストーリー・設定を前面にウリにしていた作品は「TIME/タイム」(2012)などが挙げられます。予告編でもひたすら「ストーリー」が推されていたほか、それ以上に「設定がおもしろい」という点もかなりウリにされており、監督・キャストについてはチラシでも本文最後で触れる程度にとどめられています。
また、山岳アクション映画「バーティカル・リミット」(2001)も、ほぼ同じ宣伝方法が取られていて、監督・キャストには触れつつも、予告編でもチラシでも「レスキュー・アクション超大作」ということがまず前面にアピールされていた作品でした。


あと、個人的に意外と少ないなと思ったのが「映像技術・映像美」がウリの作品。もっとあるかなと思ってたけど、監督・キャスト・スタジオに比べるとそこまでヒキが強くない(?)のか、思ったより「映像美がすごい!」がウリの作品はなかったです。

なお、映像技術・映像美がウリの作品の好例としては、人気シリーズの1作品目パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち(2003)が挙がるでしょうか。今でこそ指折りのメガヒット・シリーズですが、1作品目のチラシは見てもらえばわかるの通り、ひたすら「VFXの映像がすごい」と書かれていて、あのジョニー・デップが主演なことさえ、ほとんどアピールされてない... というかなんなら本文中では助演のオーランド・ブルームの方が先に紹介されており、「ジョニデって本当にこの作品でケタ違いに人気出たんだな...!」と実感できるいいチラシだなぁと思いました。


また、音楽・ミュージシャンがウリの作品としては、予想しやすいところでアナと雪の女王(2014)あたりが好例かなと。チラシ上でもけっこうなスペースを割いて音楽について触れられていますが、予告編も音楽を全力で聴かせてくる仕様でした。それから、もっとわかりやすいのがアニメ映画・SING(2017)でしょうか。そもそもストーリーとして音楽が重要なのもありますが、チラシ上でも1ページを丸々使って、全力で音楽について説明している音楽アピール作品です。



3. 洋画でよく使われている「ウリ文句」はどう変わってきたのか?


さて、私はこういう宣伝の話が大好きなので笑、なんだかかなり熱を込めて書いてしまってあれなんですけど、続いては「洋画のウリ文句は、どう変わってきたのか」を見てみよう!


推移を見るには少々母数が足りないため、ざっくりした結果しか出せませんが、一応洋画ランキングTOP10の170本を、年別に見てみるとこういう結果になりました。



2011年あたりから、次第に「シリーズ作品(青)」が多くなってきている他、「キャスト(赤)」がウリ文句の作品がやや減少傾向にあるようです。

それから、「スタジオ(緑)」がウリの作品が増えてきているようですが、これは主にディズニー・ピクサー作品と、イルミネーション作品が絶好調だからと言えそうです。 



なので、それがわかりやすいように、アニメ作品と実写作品の比率のグラフも一応出してみました。そのグラフがこちらです。



「激増」という程ではないんですが、2012年までは1-2作品までしかTOP10入りしなかった海外アニメ作品が、2013年以降は3作品ほどランクインするのがデフォルトになりつつあるようです。

ディズニー作品が安定して売れている、というのもありますが「ミニオンズ」「ペット」など、イルミネーション・スタジオのアニメ作品のランクインが増えてきたことも大きいようで、結果として「スタジオがウリ」の洋画が増加しているようですね。



4. どういう「ウリ文句」の洋画が一番売れるのか?


それでは最後に、生々しいデータを見ておこう! 今まで見てきたウリ文句のジャンル別に、映画の平均興行収入を見てみます笑 


もうこれはサクっと結果を見てみよう! そういうわけで、結果がこちら!



一番強いのは、意外にも「原作」がウリの洋画でした。一応タネ明かしをしておくと、「原作」をウリにしたレジェンド級のシリーズ作品 第1作目 ハリー・ポッターと賢者の石(2002)が恐ろしいぐらい売れたせいで、平均がめちゃくちゃ上がったというやつですね。。 


ちなみに完全に余談ですが、ハリー・ポッターはシリーズの全作品が毎年洋画ランキングTOP3にランクインしているという正真正銘のモンスター・シリーズで、データを見ながらもはや普通に私はちょっとヒきました。まぁシリーズ全作おもしろいもんね...?! また、ハリー・ポッター・シリーズが公開された年に、それをおさえて興行収入を伸ばした洋画は


・パイレーツ・オブ・カリビアン / 生命(いのち)の泉(2011)

・パイレーツ・オブ・カリビアン / ワールド・エンド(2007)

・ラストサムライ(2004)


の3作品のみ。2000年代の日本公開の洋画って、もしかしてハリー・ポッター VS パイレーツ・オブ・カリビアン の一騎打ちだったのか....? (あとたまーにトム・クルーズ)



話がかなり逸れましたが笑、映画のウリ文句ごとの興行収入に話を戻すと、2番目に売れているのは「スタジオ」推しの洋画でした。 超・簡単に言えば天下のディズニー作品たちだ!
そして3番目「興行収入」をウリにしている作品は、主にこの記事の最初で挙げた「全世界で大ヒット!」がウリ文句の作品たち。軽くおさらいしておくと「ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間」「テッド」そして「アバター」等々ですね。「全世界で大ヒット」の作品は宣伝も大がかりにしやすいし、注目も浴びやすいので売れやすいという形でしょうか。


また、個人的に面白いなと思ったのが「キャスト」よりも「監督・スタッフ」がアピールされている作品の方が、平均の興行収入が高いという...!
全体として「キャスト」をウリにしている作品の本数が多いため母数の問題もあるんですが、「監督」と「キャスト」が同じぐらいの知名度ならば「監督」を推した方がいいのかもなと思ったりして、なかなか面白い結果だなーと思いました。


また「ストーリー・設定」と「映像美・映像技術」に続いて「アカデミー賞などの受賞歴」のウリ文句もそこまで興行収入には繋がらないというのも意外でした。確かに最大規模のアカデミー賞すら、映画好きしか丹念にチェックしてない印象だけど...(録音・衣装みたいな賞とか特に) そう思うと、なんだか「賞って一体なんなんだろう?」という哲学的な問いに直面させられるよね。 売れるために賞があるわけではないだろうけど、せっかく評価された作品ならば売れてもいいのにと思ってしまう映画ファンです。。



そういうわけで、だいぶ想定よりも長くなってしまったけれど、映画キャッチコピー分析はここまでです! ちょっと時間(と心の余裕)がなくて無理だったけど、1990年代の作品までさかのぼって調べてみたらもっと面白いだろうと思うので、時間と精神に余裕ができたらやってみます笑 ということで、長文お付き合いいただきありがとうございました。良かったらフォローしてねん!

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