熊野ミツオ

発達ナイスガイ、自称詩人。

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  • ベスト詩集「知らない国」

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まいたけ絵日記

    • 【エッセイ】無意識との付き合い

       夢を見た。学校で誰も座っていない机。ここは谷川俊太郎の席だ。谷川俊太郎は体調が悪いから休みらしい。ぼくは、谷川俊太郎の机にバナナを置いた。その部分しか覚えていない。  どうってことのない夢だな、とおもう。でも、改めておもいかえすとちょっとおもしろいかもしれない。ぼくにとっては谷川俊太郎というひとが夢にその気配だけでも登場したということがおもしろい。よほど谷川俊太郎が好きなんだという気がする。  好きな人物が夢に出てきた例としては、他にはカネコアヤノが夢に出てきたことがあった

      • 【詩】ぼくの庭

        ぼくの庭には草が生えている 草が生えているだけなんだ 草が生えるための地面はある 石ころもある でもそれだけなんだ なにもない でもそう言いきることができない ぼくの庭は静かな庭だ 一見なにもないように見える 地味な庭だ 小さな庭だ とくに目立つ花が咲くわけではないし 木と呼べるほどのものもない ぼくの庭には 音楽のようなものはないし 交通事故のようなことも当然ない 恋愛もないし 秘密もない ぼくの庭にはタイムカプセルも 動物の死骸も埋まってはいない ぼくの庭にはなにも

        • 【詩】終わらない詩

          このぼくのなかに 自分以外の海がある この寂しいぼくのなかに 自分以外の女がいる このぼくの他に 寂しい自分自身がいるものか ぼくは いつの日か孤独死する その日には ぼくがそれまでに通り抜けてきた すべての季節がそこにいてほしい 振り返るときに ただ遠くに行くほど若くなる ぼくがいつか幼かった日々が 恥ずかしくないように 自分との約束を守れるように ただひとりで横たわり 目を閉じるときに いつか 誰かにやさしく抱きしめてほしかった でもこの世界にはぼくを 抱きしめられ

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        まいたけ絵日記

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        • ベスト詩集「知らない国」
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          【詩】斜めに降る静かな雨の詩

          ぼくにはたしかに 言えないことがあって 言えないことが ぼくからにじみ出ていて それがかなしくて ひとりになると泣いてしまう 涙に覆われた目で 景色を見ると とてもきれいに見える 人生を 傷つかずに生きることなんてできない ぼくたちは孤独だけれど 宇宙とつながっているね あなたがあの日に言った 愛しているという言葉は なんだか御伽噺のような響きがあって 夜中に誰にも見られずに 斜めに降る 静かな雨を ぼくにおもいださせる 降っているのか 降っていないのか 目を凝らしてもわから

          【詩】斜めに降る静かな雨の詩

          【エッセイ】キャラメルポップコーンの早食い

           髭を伸ばしている。それはQBハウスに行って散髪した結果、気に入らない髪型になってしまったからだった。髭でカバーしようという本能だった。もしかするとあまりにも髪の毛を短くされすぎたので、髭を伸ばすことで顔の毛の総量をなんとか一定に保とうという本能なのかもしれない。  いや、そんな理由ではなくて、ただ、春がなんとなく憂うつだからなのかもしれない。最近は元気がない。元気がないと髭まで気持ちが回らない。  この元気のなさはすべて春のせいなのだろうか。  ここ二日、日曜日と月曜日が

          【エッセイ】キャラメルポップコーンの早食い

          【エッセイ】協力して握り寿司をつくる

           きのうはよく覚えていないけれども、深夜の三時くらいまでは起きていた。とくになにかをしていたわけではない。ただ眠気が来なくて、眠ることができなかったのだ。  二時くらいにカップヌードルを食べた。カップヌードルを食べながら、例によってYouTubeで匿名掲示板のまとめ動画を見た。結婚できなかった中年男性たちが愚痴り、お互いを罵り合い、時には慰め合い、孤独死を恐怖する、という内容の動画だった。  その後、布団で輾転反側としながら、その匿名掲示板のまとめ動画のことが頭にこびりついて

          【エッセイ】協力して握り寿司をつくる

          【詩】雨に祈る

          ただふざけているだけだった 人生が ほんとうはとてもかなしいし 虚しい生き方だったとおもう 毎日が 同じことの繰り返しで 誰も愛してくれるひとがいなかった それはぼくが悪いのだろうか でもそれは ぼくがぼくであるという ただそれだけのことだったのに この世界には 愛よりもうつくしいものがあって それは斜めに降る 静かな 雨だったのだけれど 誰も そんなことを 本気にするひとはいなかった ぼくたちの夜は 不思議で 無意味な夢に彩られていた ほんとうのことは誰にも わからな

          【詩】雨に祈る

          【詩】桜

          嘘 それは桜だった 寂しさが 骨の色まで変えてしまった 苦しむ理由がほしい でもぼくは 少しずつ丁寧に死んでいく 汚れた水の末路だった ぼくは自分が 嘘を吐いているのか それさえもわからなくなった 少しだけぼやけて 二重になっていて それを心地いいとおもっていた あなたのために そうおもうことが照れ臭かった 散る やさしい気持ちと 純粋な後悔が 不安に混ざりあう 桜、桜、桜 桜桜桜桜桜 まぶしい風のなかで 踊る

          【詩】野生の詩

          こうやって ぼくが パソコンのキーを叩くと 白い画面の上に文字が並ぶ この一行が 次の一行を生み さらに次の一行を誘い出す 立ち止まって また最初の行から ここまでの文章を読み直してみる そうやって続きを探している そういう風にして すこしずつ 出来ていくような気がしている なにも約束はできない この文章が 最後の行にたどり着くまでに ふわっと浮き上がって ぼんやりとした なんでもないような 一つの 野性的な 詩になることができるのか これを書いている ぼくにはわからない で

          【詩】野生の詩

          【エッセイ】太宰治を読みながら山手線に乗る

           人生から新鮮味のようなものが薄れてきた。それは気のせいだろうか。こういうことを言うとすぐそれはあなたが悪いんですよ、と言うひともいるだろう。茨木のり子だったら言うだろう。自分の感受性くらい、自分で守れ、ばか者よ、と。しかし、ぼくはおもうのだ。そんなにいつまでも飽きずに毎日たのしく生きられるわけではない、と。  ぼくは自分が悪かったからこういう人生を送るようになったのかもしれない。でも、実はぼくは発達障害なので、いろいろなことがうまくいかないという面もある。自分という乗り物が

          【エッセイ】太宰治を読みながら山手線に乗る

          【詩】海老フライ

          子どもの頃 海老フライが好きだった 海老フライより好きな食べ物なんてなかった そのことを話すと 普通だねと友だちが言った 食の好みが普通だということだろう それはその通りで ぼくは普通の子どもだった 誕生日には 海老フライを食べることが なによりのたのしみだった ある日 お母さんが大きくて立派な海老をつかって 海老フライを揚げてくれた でもその日 ぼくは風邪を引いていて 気分が悪くて それを食べることができなかった いまでも そのおいしそうな海老フライをおもいだす 金色のサク

          【詩】海老フライ

          【詩】虫の喜び

          ぼくたちは人間ではなかった ぼくたちは 人間のようにやさしくはない 宇宙と同じように 冷たい ぼくたちは人間ではない うつくしい羽 繊細な触覚 棘だらけの六本の脚を持っている ぼくたちは昆虫だ 昆虫の喜びは いつまでも同じ場所にいること 暖かいこと 昆虫のかなしみは 雨が降ること ぼくたちには愛がない ぼくたちにあるのは 本能だけだ 無言の宇宙に 存在が直接接続されている きょうは雨が降っているから ぼくはかなしい ぼくの羽の表面に 水滴がびっしりとついて 一つひとつ

          【詩】虫の喜び

          【詩】恋をすると

          苦しいときにはすてきな挨拶をしたい 実はあの子のことが好きなんだ 寂しいときには 大きなぬいぐるみを想像して それに抱きついて眠る アイスクリームはつめたいけれど やさしいね 苦しいときは 自分の好き勝手なことを想像する ぼくはきれいな真珠色のピストルを持っている それでみんなのことを 撃ち殺そう みんなの墓では 平和な気持ちになれるアンビエントを流す 愛しあうってどういうことなのか 死んでしまったらわからない ぼくには苦しいときのために とっておいてある 特別チャー

          【詩】恋をすると

          【エッセイ】ぼくのなかの寂しい部分

           カウンセリングで寂しいという悩みについて話した。ぼくは、自分の寂しさをひとにどうにかしてもらいたいとおもうと、それはうまくいかない場合が多くて、関係がこじれる気がした。だから、自分でどうにかするしかない。でも、そのやり方がわからない。そう話したら、そのことは無視されて、寂しさは人間付き合いのなかで解消されるものだというような流れの話になった。やはりそうなのだろうか。寂しいひとはその寂しさを自分でなんとかしようとする場合があるけれど、そんなの無理なのだろうか。  カウンセラー

          【エッセイ】ぼくのなかの寂しい部分

          【詩】ゼリーの春

          ふと振り返ると 忘れてしまった日々が 青い顔をして立っていた 手には透明な 花束が握られていて いまも息をしているようだった ぼくは彼を真珠色のピストルで撃ち殺した 新しい血が流れる それからぼくはどこまでも続く 廊下を走って 逃げることになった 足音が響く その廊下は 小学校の廊下のようだったけれども 中学校の廊下だったのだろうか? ゼリーのようにヒンヤリとしていて 春に 音楽室では子どもたちが合唱している やあ あしたはきっと来るだろう あしたはたぶん 太った猫を抱

          【詩】ゼリーの春