見出し画像

高級化する人材紹介、負のスパイラルのスカウト媒体

「人材紹介からの紹介がない」
「スカウトの返信がない」

募集要項によってはすべての紹介会社やスカウト媒体が芳しくないわけではないものの、こうした相談を多く頂くようになりました。今回は中途採用チャンネルの変化についてお話します。

有料設定していますが、最後まで無料でお読みいただけます。もしよければ投げ銭感覚で応援をお願い致します。


ビジー状態、高級化する人材紹介

人材紹介の状況で言うと、多くの紹介会社が往年のWindowsで言うところのビジー状態です。処理が詰まりすぎて応答できない状態です。人材紹介はかなり属人的なビジネスモデルです。マッチングについても基本的には担当者の脳です。AIを用いているところもありますが、連絡を取る、クロージングするなど人力だったりするので、どうしようもなくいっぱいいっぱいです。

これらは求人倍率の高さや、人材の流動化が背景としてあります。また、企業側から紹介フィーのアップを打診されることも多いとのことですが、基本的に処理が詰まっているのでフィーアップには答えられていないところが多いです。

少人数の人材紹介会社で候補者、求人ともに絞っている企業であればまだ応答しますが、事業の効率の関係から成約単価の高いマネージャー以上、コンサルといった職種が多く、リーダー以下のエンジニアを扱っているケースは少なめです。

負のスパイラルのスカウト媒体

2010年代中盤から登場したスカウト媒体ですが、全く使えないわけではないものの、あまり芳しくはありません。背景としては雑なスカウトと、雑な候補者プロフィールによる負のスパイラルがあります。

スカウト返信率下がる→効率化し、数を打つためためRPAで自動化する→スカウトがあふれる→候補者がメールやメッセージを開かなくなる→スカウト返信率下がる(以下、ループ)

多くのスカウト媒体がスカウト可能送信通数で課金しているため、致し方ない現象でしょう。

ここに来て、候補者の方のプロフィールもスカスカになってきた傾向が感じられます。

  • 職務概要 「略」

  • 経験してきたこと 「React」(以上)

とかもあります。適当な職務経歴書でもある程度はスカウトを受けられるため、このようなことになっているのではないかと推測しています。仕方ないので「入力の途中かも知れませんが」「ご経歴についてもあわせてお聞かせください」などと打ってみることもあるのですが、マッチングもへったくれも無いので実に厳しいものがあります。

企業が取れる次の打ち手

人材紹介もスカウト媒体も中の人にも友人知人含め多数知っているので、あまり悪く言いたくはないのですが、あまりに採用強者しか相手にしていないので厳しさを感じるばかりです。近いうちに某スカウト媒体の値上げも発表されますが、介在価値や提供できるバリューを考えると厳しく、危ういバランスでビジネスをしている印象です。

そうなると採用チャンネルは自ずとその他の選択肢になります。本の内容にプラスする形でお話します。

リファラル

社員が自社を好きでなければなりません。加えて社員の友人・知人の数にも限界があるので枯渇しやすい傾向があります。また、最近頂いたご相談ですが「友人が大企業勤めが多く、来てくれる気がしない」というお話もありました。

しかしうまく採用できている会社さんがあるのは事実です。特にSESなどでは現場先で一緒になる他社のSESを口説くケースが多く、これによって人材紹介やスカウト媒体に頼らず入社数を確保している企業さんの話を複数件聞いています。

また、後述するイベント/コミュニティ、SNSで声掛けをした場合もリファラルとカウントしている企業もあります。これらの可能性も視野に、リファラルに取り組むことが有効です。

副業

私もOffersデジタル人材総研所長として出入りしている領域ですが、スカウト返信率が高いです。転職ほどハードルが高くないことも手伝って30%を越える企業さんもあります。

選考ステップもフリーランスやSESと同程度に短い企業が多いため、気軽さが光ります。

スキルのモダンさと合わせて鑑みると非常に有力な採用チャンネルです。副業を許可しているようなモダンな働き方の企業はモダンなスキルセットである、とも言えます。

現職からすると自社では諸事情により提供できない環境に時折身を置いてもらうことでガス抜きにもなりますし、将来企業が要求するスキルセットを他社で実践を積んでもらえるというメリットもあります。

また、副業からの転職(副業転職)は実際に一緒に働くことで双方のカルチャーマッチ、スキルマッチが図れます。

労働人口も減っていますし、+αで他の環境でも働きたいという人の意志は尊重するべきだとも考えています。

イベント/コミュニティ

コロナ禍以前、以前の職場であるレバレジーズではレバテック事業の一環でヒカラボというイベントを定期開催していました。週に2回という頻度で実施していたのですが、当時の担当者の感覚では「イベント接触から3年後に転職につながるケースがある」という温度感であり、採用チャンネルとは言い難いものでした。

現在でも「イベントをすれば採用できるのでは」「イベントに採用KPIを求めたいのだがどうすればよいか」というご相談を受けるのですが、直接的な繋がりを求めて打算的に開催するのは危ういです。「イベント経由での応募人数をKPIにする」などは特に現実的ではありません。

ただ、下記の3つの観点から状況が違ってきているなという印象もあります。

1点目は人材の流動化が非常に進んでいるため、前述した「3年」が縮まっている可能性が高いというものです。

2点目は特に専門性の高い職種やスキルセットを求める場合(セキュリティ人材やAI人材など)、自社の内容を知ってもらわないと「何をしている企業なのか分からないので選択肢に載せていない」というケースを耳にしています。

3点目は2点目と同じく欲しい人材がどう考えても全体の採用市場にほぼ居ないことが分かりきっている場合、人材紹介やスカウト媒体でプールされた人材に期待するとほぼ見つからないので興味のあるテーマでイベントを開催し、そこで知り合ったほうが効率が良く接触ができるというお話です。

企業としても予算や人員を投下する以上は何かしらの手応えを感じたいというのは理解できるところです。最近では面接時に候補者に対するアンケートを配布し、面接の所感回収と並んで「どこで弊社を知りましたか」という項目を設けることで認知されるチャンネルをモニタリングすることをお勧めしています。

SNS

Twitter転職が2017年頃に流行ったのですが、その時に採用担当の方が採用系勉強会で「これだけ採用して3万数千円しか掛かりませんでした!」とプレゼンされて居られました。内訳は広告かなにかだと思うのですが、人件費はどこへ行ったという疑問もありました。当時らこのように「(人件費以外は)安いTwitter転職」という位置付けが主でした。

その後、未経験が #Twitter転職 を乱用したこともあり「安かろう悪かろう」という認識が広がっていきました。

しかしここに来て採用要件の高度化と、打ち手の枯渇により再度注目されています。スタートアップやベンチャー界隈の役員クラスであっても、空き時間にTwitterDMで声をかけているという方に複数お会いしました。また、イベントの項目でお話した内容と同じく、母数が少ないスキルセットを求める場合も、こうしたSNSでの声かけは有効です。

また、下記のMeetyでお会いしたフリーランスITエンジニアの方、数名はフリーランスエージェントを使っておらず、TwitterDMで案件を継続受注していました。仲介業者が案件の品質担保をしていないことから案件の良し悪しや頓挫などはあるものの、モダンな技術力を普段の投稿やブログでアピールしていれば案件は途切れないとのことです。他にもLinkedInやYOUTRUSTでも声掛けがあるとのことです。

特にTwitterでは企業によっては「Twitterを公序良俗に反しないような使い方をしているアイコンが著作権侵害をしていない社員が居ない」というところから悩むケースもあります。かつての2017年のSNS転職の際は「SNS担当がアカウントを育てるためにしている投稿だが、遊んでいるようにしか見えず、理解しかねる」という声も聞こえていたのですが、認識を改めて投資していくことも視野に入れないと行けないでしょう。

地方でオフラインで口説く

転職潜在層のうち、「転職」の2文字を考えたことも無いような層を直接当たるという動きをされている方に別々の地域で2名ほどお会いしました。

私の故郷である香川県などはまさにそうなのですが、基本的には新卒で就職した企業に終身添い遂げるという考え方が一般的です。例外は看護士、介護士、薬剤師なのですが、それ以外で就職先が潰れたり、辞めざるを得なくなると稼業を継ぐか、役所に再就職(転職とは言われない)するかという選択肢になります。この文化は非常に強固で、複数の人材紹介会社に四国進出を提案したのですが、先の医療部門以外は「四国はちょっと・・・」と言われてきました。

人材紹介事業が成立するほど転職希望者が居ないため、新卒入社した大手SIerの子会社や、孫請けのソフトウェアハウスに人材が低待遇で数百名単位で眠っています。

このあたり、非常に面白いテーマですし、当人たちの待遇改善につながる行為なので私も顔を出している領域です。支店を出してどっぷりアプローチする気概がある企業さんであれば向いている可能性があるのでご相談下さい。もう少し形になればまたご報告します。

縮小する「即効性がある経験者採用チャンネル」

これまでお話してきたように、即効性がある採用チャンネルというのは見なくなってきました。コツコツ認知を拡げ、接触をし、イベント、SNS、リファラルで声掛けをするという地道な策略にシフトしつつあります。

今回は中途にフォーカスを当てましたが、「中途のような動向が進む新卒」というのもあります。人材紹介やスカウト、1on1イベントが軸となるため、数年前の中途のような形で母集団形成ができるため、教える体制がある企業からすると効率が良いと言えるでしょう。

人材紹介、スカウト媒体の皆様へ

個人的に企業さんと人材紹介、スカウト媒体の皆様をお繋ぎすることがあるのですが、企業さんから「その後、あの会社さんから連絡を頂けないのですがどうなんでしょう?」「エージェント向け説明会をしてみたのですが当日連絡なく来られませんでした」と頂くことが散見され、紹介した手前、非常に苦々しく感じています。

現在の日本の開発シーンは、10年前に煮え湯を飲まされたオフショア経験を根拠に渋るという鎖国状態ですが、海外拠点のメンバーとしてのレベルの高さとコミュニケーションコスト、費用感に対する正しい理解ができれば大きく相場は崩れるはずです。危ういバブル状態なので、人材紹介やスカウト媒体の皆様におきましては、もう少しバブル崩壊後に備えて「企業のユーザー体験」について配慮頂ければと思うばかりです。

noteやTwitterには書けないことや個別相談、質問回答などを週一のウェビナーとテキストで展開しています。経験者エンジニア、人材紹介、人事の方などにご参加いただいています。参加者の属性としてはかなり珍しいコミュニティだと思っています。ウェビナーアーカイブの限定公開なども実施しています。

執筆の励みになりますので、記事を気に入って頂けましたらAmazonウィッシュリストをクリックして頂ければ幸いです。


ここから先は

0字

¥ 500

頂いたサポートは執筆・業務を支えるガジェット類に昇華されます!