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【中途人材紹介会社の闇落ち】ミドル層を紹介「しない状況」から「できない状況」へ転落

新年の記事で人材紹介界隈の変化についての予測をお話したのですが、思ったより早く異変が起きています。企業、候補者の双方から苦情に近い愚痴を頂くようになってきたため、改めて整理していきます。

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急ピッチで進む人材紹介会社の二極化

2012年の人材紹介フィーの相場は25%だったのですが、現在では40%の相場に落ち着きつつあります。

年収800万円以上のシニア層の人材をターゲットとするエグゼクティブ向け人材紹介会社や、ヘッドハンターは引き続き紹介先を器用に入れ替えながら活躍しています。後述しますがジュニア層も活発に動いています。現在の人材紹介業界はこの二極化が進んでおり、ミドル層の紹介が不得意になっています。人材紹介フィーを元にミドル層で起きている事象を5つの傾向に分けて整理していきます。

ミドル層であっても高額な人材紹介フィーで決める企業が残っているため、該当しない企業が塩対応される傾向

バブル状態の企業(一部コンサルティングファームと、スタートアップ数社)では、ミドル層であっても50%以上の人材紹介フィーで募集をかけています。40%以上を払うことを意思決定できる企業は少ないことから、ミドル層を扱っている人材紹介会社にとっては多くの企業が非注力企業となります。人材紹介会社にとって売上を踏まえた上での合理性はありますが、候補者のキャリアに寄り添った紹介とは言い難い企業が多々あります。

塩対応に分類された企業の場合、他社で決まりにくい毎年転職している方や、年齢層が高い方の紹介が増えて行きます。

定時年収がパッとしないために候補者が転職を諦める傾向

エンジニアバブルが後退し、強気の給与提示をする企業が減った背景からエンジニアを中心に「転職活動はしてみるものの、現職残留」「半年〜一年程度のスパンで転職活動をし、条件が良いところがあれば意思決定」という方が増加傾向にあります。そのため、企業が採用活動をしてもなかなか入社に至らない状態になっています。

決まりにくいミドル層を一人追うより、ジュニア層を二人決めることに注力する傾向

決まりにくいミドル層ですが、特に人材紹介会社経由の紹介において年収レンジが550-800万円の方が決まりにくい傾向にあります。計算しやすく年収700万円の方が入社するとしましょう。40%の人材紹介フィーでは280万円が売上になります。

他方、40%の人材紹介フィーで年収400-500万円程度のジュニア層を積極採用し、教育を前提に受け入れているSES企業があります。こちらでは年収500万円だと40%の人材紹介フィーで200万円の売り上げになります。この層は初めての転職の方も多いことから意思決定を誘導しやすいとされており、人数を追う採用を継続している企業に誘われることが多いです。

人材紹介の中の人からすると700万円のミドル層(280万円の売上)に対して時間をかけて付き合い、結果現職残留されるよりは500万円のジュニア層(200万円)を2人決めた方が遥かに売り上げやすい構図が出来上がります。そのため、大手人材紹介会社を中心に集客をジュニア層に絞るところも出てきています。

回転数を高めるために決まりやすい企業に誘導する傾向

紹介先としては一般の企業にも紹介されますが、選考ステップの途中で『他社決定による辞退』となりやすいです。企業からすると『何が悪かったのか』と反省会が行われるのですが、多くの場合は特に問題が見つかりません。当て馬だったとしか思えない状況となります。

人材紹介会社は入社数を追うため、選考ステップが多かったり遅かったり、選考ハードルが厳しいと紹介優先度が下がり、選考ハードルの低い大量採用を実施している大手SESなどに誘導されていきます。

回転数を高めるために人材紹介会社の社内体制を増員、研修せずに現場に配置する傾向

ジュニア層の数を捌くために、あるいは求人倍率の高さを捌くために人材紹介の内部人材の増員を行っているところが多々見られます。

増員は結構なのですが、他業種の営業職のように人材紹介の経験が無い人を中途採用しています。ITドメインの知識を持っている人の方が珍しいです。問題は特に教育をせずに現場にアサインしているところが多いため、目に余る対応が見られます。

リファラル以外で決まりにくいミドル層

従来はミドル層、シニア層の採用として期待されていたのがスカウト媒体でした。幾度となくこのnoteでも話題にして来ましたが、多くのスカウト媒体で自動送信されるスカウトが氾濫しており、迷惑メールの様相を呈しています。

スカウトでミドル層の入社が決まっている事例は若干ですが回収はできています。採用コストが潤沢にある自社サービスを中心に下記のような条件で決まっているのですが、どの企業でも再現ができるかというと極めて怪しいですし、お勧めはしていません。

  • 大手に重課金(チケットを無尽蔵に購入)してひたすら送信

  • (名前を明かすと色々問題ありそうなので伏せますが)3媒体が好調〜それなりの間をうろうろしている

  • 長らく不調だったために企業側の解約が進んだことで、皮肉にも企業側がブルーオーシャンになっているという1媒体

    • 健全な意思決定なのかと言われると微妙

  • Linkedin

    • ただしCxOのように役職でスカウトしても問題ない職種と、しっかりとプロフィール記載のある習慣のある海外籍のうち本社近郊在住の人に絞って打つことになる

この辺りのトレンドはクォーター単位で変わって行きます。現状のスキル別の採用経路の状況をまとめると下記のような図になります。ミドル層の中途採用に期待できる経路は リファラルが主であり、それ以外はどの経路も不得手になっているのが2024年2月現在です。

2024年2月現在、各層を採用しやすい経路

易きに流れるとルーチンワークに陥り、戻ってこられない人材紹介担当者

SESやフリーランスエージェント営業で先行して起きている事象として下記のようなものがあります。

  • 決めやすい職種のみを狙う

  • 候補者・企業ともに効率を重視するため傾聴ではなく、キーワードマッチに注力する

  • 候補者一人当たりにかける時間を短縮する

    • 短期での決断を迫る

  • 求人一つ当たりにかける時間も短縮する

    • 短期で内定出しの意思決定を迫る(特に月末)

こうした傾向が人材紹介各社でも起きています。今現在決めやすい注力職種以外に対する専門性を持ち合わせないため、キーワードマッチが行われればマシな状況です。もちろん企業とも多くの候補者とも話が噛み合いません。人材紹介会社の中の人もジュニア層としか話せなくなっていき、ミドル層やシニア層に苦手意識が生まれていきます。

売上を理由に決定のしやすい層を追い続けるのは、目先の利益を追うには合理性があるでしょう。しかし中長期的な事業を踏まえても、人材紹介会社の中の人にとっても良いは言えないと考えています。ミドル層やシニア層といった専門性の高い人材と対等に話すことができる強い人材紹介会社が一社でも増えることを願うばかりです。

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