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藤田氏「拝啓、ZOZO前澤友作様」を読む

1月9日、藤田孝典氏(@fujitatakanori)が「拝啓、ZOZO前澤友作様『1億円バラマキ、本当に下品です』」(以下、『拝啓』と略称)というタイトルの文章を公開した。この方、『ブランド人になれ』でお馴染み田端信太郎氏(@tabbata)やZOZO代表・前澤友作氏(@yousuck2020)とのTwitter上での論戦(?)でご存知の方も多いでしょう。

当初のやり取りは「コミュニケーションのすれ違いだろう」くらいに見ていたやり取りが最近は藤田氏が攻撃すること自体を目的としているように感じ非常に違和感を感じていた。そこでこの文章である。今回は『拝啓』を解剖してみたい。

『拝啓』の論旨

・ZOZOは社員が働きやすい企業、従業員が楽しく働ける企業であるという「ウソ」を喧伝している。同社の利益は、大量の派遣労働者や非正規雇用を抱え、彼らの犠牲を強いながら生み出されたものである。

・末端の労働者を重視しない企業であれば、株価にも影響するだろう。実際にZOZOの株価はピーク時の5,000円と比較して、直近では2,000円程度まで下げている。

・まともな改善要求を受け入れるのか、それとも批判とともに沈みゆく企業として汚名を残すのか。今年同社はその真価が問われる。

ZOZOの利益は大量の派遣労働者や非正規社員雇用の犠牲の上に成り立っている?

東証上場企業、急成長する企業は派遣労働者、非正規雇用を大量に利用して利益をあげてきた。彼らの富の源泉は、低賃金労働者への労働力搾取に起因している。


確かに、派遣労働者・非正規雇用者数を縦軸に企業規模を横軸に取って各企業をプロットして回帰分析をしたとすれば右上がりの線が引けるだろう。ただし、それは企業に体力が無ければ多くの労働者を抱えることが出来ないからである。

また、グラフの右にいけばいくほどプロットされた点は上下に散らばっていくだろう。あくまで「大企業であればあるほど、多くの派遣・非正規雇用を抱えている可能性が高い」という議論である。

ここの話から直接、藤田氏の主張をサポートすることはできない。

派遣や非正規は好きでやっているのではないか、という意見もあるが、厚生労働省の調査によれば、正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者の割合は、非正規雇用労働者全体の14・3%と多い。

当人たちは問題視していないのではないかという考えに対しての議論。マクロデータを引っ張り出して、個別のケースについて検討する場合に仮定の数字として当てはめることはよくある。しかし、仮定の数字を根拠に批判しようというならば話は変わってくる。

さらに、どれくらいを「多い」と感じるかは人それぞれではあるが、全体の14%は果たして「多い」のかという疑問が残る。やもすれば印象操作と取られても致し方ない。

上記の議論は主張のサポート材料としては役に立たない。そこで現場に足を運んで生の声を聞いた話でサポートを図りたい。

私たちは昨年12月31日に労働組合のメンバーとZOZO新習志野の倉庫付近で派遣労働者に対し、街宣活動を行った。そこでは、大量の派遣労働者が「ZOZOBASE」と書かれたバスでピストン輸送されて、工場の配送作業を支えていた。

年末年始にかけては配送作業のピークである。大量の労働力が必要になることは必然である。

この街宣活動に至った理由は、私の元に派遣労働者から匿名で相談が寄せられたからでもある。相談は業務内容に比例して賃金があまりにも安いというものだ。正社員の賃金や待遇は一定程度担保されているが、派遣労働や非正規の現場は凄惨(せいさん)だというのである。

(ようやくサポートできそうな定性的なデータが出てきそうだ。)

彼女の訴えによれば、時給は3年間働いても1000円のままであり、責任をもって顧客の配送先である住所や名前など個人情報を扱うにしては低すぎるというものだ。

一見「なるほど」と思ったものの、よく考えてみると「?」が浮かぶ。企業の論理としては「派遣労働者に個人情報を取り扱わせることは危険ではないか?」となるだろう。ただ、派遣労働者側の論理として「個人情報を管理するならば賃金を上げるべき」と言えるのだろうか?

また、ZOZOは送料無料を止めて久しい。(前澤さん炎上したなぁ…。)これは推論ではあるものの、送料無料の他のEC事業者よりは還元されているのではないかと考える。

新習志野で多くの派遣労働者と話をすることができた。前澤社長や田端氏は現場の倉庫には足を運んで派遣労働者の声を聞いていないことも理解できたし、匿名の彼女の訴えは真実だとも理解できた。

確かに社長が自ら倉庫に足を運ぶということはあっても良いかも知れない。個人的にんもあって良いと思う。ただし、足を運ばなければ行けないとまでは断定できない。

・実際に新習志野で話した20歳代前半男性の派遣労働者は「僕の時給は1000円です。個人情報を大量に管理していますし、この賃金では安いと思います。社長が1000億円もかけて月に行くというなら僕らの賃金を上げてもらいたいというのが正直なところです」と語った。

一見「なるほど」と思ったものの(以下略)

まとめ

なんとなく『拝啓』を読み進めると「ZOZOけしからん!」という「印象」を持つ。ただし、論旨を整理して見ると直接主張をサポートしているのはインタビュー内容のみである。ただし、回答内容は主張を強力にサポートできるものではない。(可能であれば実施方法など開示して欲しいところ。)

問題なのはインタビューをなんとか推論や仮定で補強している主張で行う口撃が度が過ぎることである。それこそ「品性」を問われることではないか。

私も相対的貧困の問題を深刻に受け止める人間の一人だからこそ強く思う。このような主張の仕方を続けていると貧困問題について主張する人が一括りに「この人たちとは議論が出来ない」とラベリングされてしまいかねない。ロジカルに、品位のある言葉で議論したい。

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