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四国歩き遍路日記 26日目 40番

3月18日

8時ごろ出る。今日はのんびり行程だ。そしてようやく高知から愛媛に入る。天気も良く、だいぶ春らしい風景になってきた気がする。

県境がある松尾峠に向かって歩いていく。普段は峠道はなるべく回避するが、今日は余裕もあるし、昭和の時代まで多くの人が行きかっていた由緒ある峠とのことなので行ってみることにした。

途中で、37番岩本寺で同宿だったKさんと再会。一緒に峠道を登っていく。何気に遍路同士で連れだって歩くのは初めてだ。この峠もきついと聞いていたが、話しながら登っていたらあっという間に上にきてしまった。

Kさんは登山をやってるそうだが、登山靴で来てしまったことを非常に後悔していた。とにかく舗装路を歩くのが苦痛らしい。なので、舗装路が長く続くところは交通機関を使っていくことにしたそうだ(徳島の靴屋で無責任にごつい登山靴を勧めてきたあの店員に聞かせてやりたい)。また万全の体制を整えて2週目もやってみたいそうで、こうしてお四国病になっていくんじゃないかと言っていた。

県境を越えて、いよいよ愛媛に入る。一応、現ホーム県だ。愛媛側は坂も緩く道が歩きやすかった。その後も、のんびりした田舎道をKさんと歩いていく。

Kさんから聞いた話では、足摺岬の手前で入ってしまった地図に載ってない遍路道は「くじら道」と言われていたらしい。昔はあの高台の集落からくじらの出没を監視して漁に出ていたそうだ。また、Kさんもジョン万次郎が好きなそうで、ジョンマン話で盛り上がる。

途中の休憩所でKさんとは別れた。誰かと行くのも楽しいが、やはり一人で歩くのが性に合っている。

40番観自在寺に着き、納経所の人と話していたら横から「佐野さん?」と声をかけられた。なんと3日目と4日目、焼山寺の前後で同宿だったTさんと再会した。手を取り合ってよろこぶ。
Tさんは一回愛知に帰って、今度は一人で来てるらしい。顔が引きしまったと何度も言われた。ほんの1ヶ月前のことなのにだいぶ懐かしく感じる。思うに、遍路を始めたばかりのころは不安でいっぱいだから、そのころに出会った人には同期的な親近感を抱くように感じる。
俺は門前の宿だったので、Tさんとはそこで別れた。

今日でようやく高知が終わった。もう遍路も半分が過ぎた。最初は満身創痍で本当どうなるかと思ったが、なんとかここまでくることができた。

自分がずっと遍路に対して抱いていた憧れは、だだっ広い海を背景にひたすら歩くイメージだった。実際、太平洋を見ながら歩く道は雄大で寂寞としていて、最後まで飽きることはなかった。特に赤泊の浜の荒涼とした風景は強く印象に残っている。

18時44分 泊:山代屋旅館(素泊4300円)

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