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企画仕事の引継書 vol.5

友人から「初心者にもわかるように“企画の作り方と、チーム内での合意形成の重要性”を説明してほしい!」と依頼されたので、過去のnoteからピックアップしつつ纏めてみます。

これまでnoteで「企画仕事の引継書」と題して4本ほど纏めていましたが、改めて読み直してみると、“弊社の社内向き”のニュアンスで書いていて、初心者向けじゃないなと反省した次第です。

なので一部、「企画仕事の引継書 vol.2」などで書いた内容の繰り返しになりますが、なるべく簡潔に書いてみます。


余談ですが、こういう「企画の作り方」や「企画書がなぜ必要なのか」という基本的なことって、意外にネット上で探しにくいものだな…と、今回はじめて実感しました。ちゃんと勉強しようと思うと、専門の本を何冊か読め!ということですね。

友人からのリクエストの納期がわずか2日だったので本を読み返す時間もなく笑、我流ではありますが、基本的なこと(だと私が感じていること)を、なるべく端的に書いてみました。

誰かのお役に立てたら嬉しいです。


1.企画立案のプロセス

「企画を作る」というプロセスは、実際は本当に地味だし過酷なもので、でも、とても重要なものです。

戸建ての家を作ることに似ているかもしれません。
どんなにモダンでカッコいい家も、土台や骨組みがしっかりしていないと、台風や湿気で簡単にボロボロになってしまいますよね。
土台や骨組みがしっかりしているからカッコいい。これが理想形かなと思います。

CMや、本の装丁にしても同じで、どんなにカッコいいデザインも、目を引くキャッチコピーも、「誰に対して、何を伝えたくて、結果どのような効果を得たいのか?」という作戦がないと、誰の心にも届きませんし、商品を手に取ってもらえません。
届かないということは、作っても意味がないということです。

すべては“作戦”ありきです。作戦なしにヒットしたら、それはただのラッキー、まぐれでしかなく、再現性はありません。そして“2度目、3度目のまぐれ”はなかなか巡ってきません。
何度もヒットを飛ばしたいなら、作戦を立てるプロになることです。
その作戦=企画の作り方について、解説します。



1.まずは「解決したい課題」を整理します。
例えば、売上目標達成に向けて突き進むにあたって、どうしても努力や行動だけでは突破できない壁があって困っている…など。そうした壁=課題を解決する為に考えるのが「企画」です。
そして、その企画が実現した時に得たい効果(成果)を、具体的に考えます。

2.「理想(目標達成=ゴール)と現実(課題を有している現状)のギャップ」を整理します。
ゴール達成に必要となる“解決しないといけない課題”を整理します。

3.解決すべき課題を決め、企画立案に着手します。
「これを解決すれば、ゴール達成できる!」と確信が持てる課題(=issue)が見つかったら、その課題を解決する為の企画を立てます。
予算や時間といったリソースが潤沢なら、すべての課題を解決できるかもしれませんが、大体の場合は「割くことができる人(=時間)、物、金」に制限があります。
そのリソースの天井を突破しない程度の範囲で、一番“解決しがいのある課題”を決めます。

4.仮説を立てます。
情報を集め、整理し、「この方法なら、解決できるのでは?」という案(仮説)を書き出します。
複数の案を出すことができれば「成功の可能性が高いけどコストがかかるA案」や「成果はA案よりやや劣るけど、費用対効果が良さそうなB案」など、さまざまな視点で検討できます。

5.企画案について、何度も考えます。
「本当に、この方法で解決できるだろうか?」
「もっと他に、良い案はないだろうか?」
と何度も自問自答を繰り返すことで、「これしかない!」という解決策に辿り着きます。

プロモーション系の企画であれば、基本は「誰(ターゲット)に対して、何(情報)を、どのように伝えるのか?その結果、どのような成果を得たいのか?」というものです。その成果が、1の「解決したい課題」とリンクしていなければいけません。

お勧めの方法は、「企画の目的・目標・戦略」をノートに書いて、整理することです。実際に字で書いてみると、企画の矛盾や、自分自身の思い込みに気づくことができます。

また、企画を、チームメンバーや、有識者に案を聞いてもらい、アドバイスをもらうことも有効です。「自分ひとりの視点」ではなく、別の角度・視点から企画を考えることで、より抜け・漏れの少ない、完成された企画に近づけることができます。

6.「戦略を実行するための具体策」を考えます。
この段階で、やっと「YouTubeで発信する」や「WEBサイトで情報を伝える」などのツール施策の登場です。
5で考えた「目的・目標・戦略」が、ツールの「中身(コンテンツ)」のベースになります。
伝えたい情報を、どのように見せるか。どんな媒体(ツール)で発信すれば、ターゲットに届くのか?を考え、最適な方法をセレクトします。

企画は課題ありき


2.「施策ありきの企画」のままではダメな理由


“やることが決まっちゃってる”施策は世の中に溢れていると思いますが、「決まってるからとりあえず実行するか」は悪手です。
結論はシンプルで、「やる意味が無いから」です。

企画を立てること、コンテンツ制作に慣れていない段階だと、どうしても「企画のプロセス」を飛ばして“ツール・施策”から考え始める人が多いのですが、企画の最重要プロセスである「目的・目標・戦略とゴール(成果)」が整理された上で考えた企画でないと、だいたい失敗します。

理由は以下の3点です。
* ターゲットに刺さらないので、効果が出ない
* 企画の良し悪しを評価できない
(もし企画が無い“閃き”だけでターゲットにウケたら、それはただの“まぐれ”です)
* PDCAサイクルが回せない

施策やツールが先に決まってしまっているプロジェクトも、もちろんたくさんあります。
「企業はWEBサイトを持っていて当然」とか、「飲食店ならInstagramでの発信をして当たり前」など。

ただ、先に施策が決まっていたとしても、企画のプロセスを丁寧になぞっていくことが必要です。
そのプロセスを経ないと、ターゲットに反応してもらえるコンテンツなど、作れるはずがありません。


“施策ありき”でプロジェクトが動いていく“よくある事例”を紹介します。



1.上司から「同業他社が作っているようなWEBサイトや動画が欲しい」とか「SNSを活用しよう」みたいな“指令”が降ります。

2.アイデア/リクエストを受け止めた担当者が、「わかりました!WEBサイト/動画/SNSですね!」と請け負ってきます。

3.担当者が部下に「WEBサイト/動画/SNSを企画して」と丸投げします。

4.部下は
「何の為に、どんなものを作ればいいのか」わかりません。
「本当にそのWEBサイト/SNSが最適解なのか?」わかりません。
「作ったとして、本当に効果が出るのか?」わかりません。

5.部下は「わからないけど、とりあえず進めなきゃ」と、他部門や制作会社に相談します。

6.相談された人は、「どんな問題を解決したくて、何の為にそれを作るのか?」がわからないので、的確な企画を作成することができません。

7.プロジェクトが進まない or 適当に作られたコンテンツは効果が出なくて当然です。

みんな仕事時間を使って取り組んだのに、「金・時間の無駄」となります。仕事へのモチベーションも下がるでしょうし、良いことはありません。こういうパターンが積み重なると、組織へのエンゲージも低下してしまいかねません。


とは言え、施策やツール、キャッチコピーやキャラクターを「企画よりも先に」閃いてしまうこともあるでしょう。
そんな時こそ、「遡って」企画を考えることが大切です。
「閃いたこのアイデアは、本当に、この課題を解決する手段になるだろうか?」と、企画プロセスの初めに立ち返るのです。

せっかく思いついたアイデアを没にしてしまう可能性もあります。けれど恐れずに、イチから考えましょう。
もし企画を考え直した結果、アイデアが没になるのなら、それは残念ながら、筋の良くなかった案なのです。

個人的に、コンサルタントやソリューション営業で経験を積んだ人は企画職に向いていると思っています。

というのも、日々の業務=顧客への提案を通して、この「企画立案と提案のプロセス」を何度も何度も繰り返し経験しているからです。
担当したお客様の数だけ、課題設定から解決策の提示まで、いろんなバリエーションや数をこなしているので、その経験から得た知見は、企画を立てるプロセスにおいて重要だなと思います。

野球で例えるならば、毎日の素振り練習を欠かさず、打席に立ったら三振を恐れずとにかく振ってみる!を繰り返すことが、確実な力と、豊かな経験に繋がる。どんな球にも対応できる打者になれる。ということかなと思います。

3.プレゼンと企画書の重要性

また、企画や施策・ツールのアイデアを進めるためには、必ず「一緒に仕事をするメンバー」や「決裁者(お金を出す人…上司など)」との合意形成が必要になります。
この合意形成のために、企画のプロセスをきちんとなぞり、かつ、メンバーや上司に対してプレゼンする必要があります。

ここで必要なのが企画書(提案書)です。

企画書は、あなたが考え抜いた企画や施策を、メンバーに正しく伝える為の、大切なツールです。

企業に限らず、たとえば学園祭でのクラスの出し物を決める時も同様です。
また、町内会で開催するイベントの内容を決める時も同じです。
誰かが発案したアイデアや企画書を、検討メンバーが皆で確認し、討議し、採用するか否かを“皆で”決めます。それが組織運営のルールです。
組織に所属している以上、1人で進める仕事はありません。

もし、合意を取らなくて良いケースがあるならば、以下のような場合に限ります。

  • 1人で活動している場合(フリーランスや同人サークル等)

  • 自分が決裁者(費用を捻出する立場)である場合

  • 決裁者やメンバーから「1人で決めて良い」と権限移譲されている場合

上記のケースに当てはまらない場合は、必ず、以下のステップで進めましょう。

  • まず「企画を立案し、提案して良いか?」を確認する

  • 企画書をもとにプレゼンし、企画への「理解と納得」をしてもらい、「その企画で進めて良い」との合意を得る

  • 企画について、誰が、どんな役割で進めるか?どんなスケジュールで進行するか?を決める

  • 実行に移す

4.企画書の作成

また、企画書の作成も重要なポイントです。

以下は、私が企画書を作成する際の主な構成です。
「閃き」や「アイデア」を、決裁者やメンバーに伝え、企画の良さを理解・納得してもらうための重要なツールです。
企画書は、数をたくさん書いて、プレゼン機会を積み重ね、成功や失敗の体験を積めば積むほど、「早く、筋の良い企画」を立てることができるようになります。
企画も「トレーニングあるのみ」です。


<構成>

  1. 表紙

  2. 背景。今回の企画を作成した背景(理由)を纏める。決裁者やメンバーと共通認識を持つためのページ

  3. 理想(リクエスト)と現実のギャップ=課題を明確に表現する

  4. 理想(ゴール)に到達する為に解決するべきissue(問題点)は何か?を整理して示す。ここで合意形成をしなければいけないので、1番大切なパート。必要であればエビデンス(根拠)を示す

  5. 解決策を明示する。目的・目標・戦略を整理して示す。4→5が飛躍していると納得してもらえないので、2番目に大切なパート

  6. 具体策の全体像

  7. 具体策を実行する為の施策やツールの説明

私の主な企画書の構成


5.さいごに

ひとまず、企画立案のプロセスと、プレゼン&企画書の基本だけを纏めてみました。
ここまで書いてみて感じたのは、実は施策やツールを考えるよりと「課題抽出〜仮説立て」のプロセスが一番難しくて、初心者には迷路にハマってしまいがちな壁なんだろうな…ということです。

自分がコンサルタント1,2年目の若手社員だった時も、よく「お客様が話してくれた悩み=解決すべき課題」だと捉え違いをして、到底issue(解決すべき課題)ではないテーマを企画の根本に設定していました。
自分としては「なんとなくターゲットにウケそうなコピーやデザイン」に落とし込めているので、これで解決できる!と信じてプレゼンするのですが、スタート地点を間違えているので、決裁者からすると違和感しかなく、失注&没ばかりでした。

この課題抽出〜仮説立ては、数をこなしてベテランになると、自分1人の頭の中だけでサクサクできるようになるのでしょう。
けれど企画ビギナーの段階は、“解決すべき課題”が見つかるまで、何度も書いてみて、人に聞いてもらってアドバイスをもらって、整理し直して…という手順を何度も繰り返して、「脳に汗をかく」ことが必要だと思います。

練習は自分を裏切らないです。
積み重ねが、未来の自分の実力をつくってくれます。
ビギナーでも、数を重ねれば、いつかベテランになれます。
企画ビギナーの皆さん、がんばりましょう。応援しています。

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