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さよならのあとで

星を読む仕事は毎年、9月から年始あたりが繁忙期である。夏が終わって朝晩の風にひんやりとした空気が混ざり始める頃、翌年の占いのお話がぽつぽつと舞い込み始める。どの占いも心をこめて書いているのは間違いないのだけれど、年間占いはやはり気合が入る。年末年始という特別な時期に見るものが、どのようなかたちであっても希望につながるものにしたい。たとえ厳しい時期であっても、なんらかの方針を立てることができれば人は強くなれるからだ。ニーチェの「なぜ生きるのかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」という言葉を私は信じている。

ひとつ、またひとつと星座ごとの運勢を読み解き文字に起こす。ご縁があった人たちの顔が、ともに過ごした時間が脳裏に浮かぶ。それは今、良好な関係を築いている人たちばかりではない。二度と会わないと決めた人、そっと手を離した人の記憶も同様に胸に去来する。記憶がフラッシュバックして、よせばいいのに傷つき直すようなこともある。それでも占いを書くときは、彼らが幸せであるようにと願っている。綺麗事ではなく純粋にそう思えるのだ。あなたはあなたで、よい人生でありますように。たくさんの笑顔が、あなたとともにありますように。

夜更けにPCを閉じてふと、フランクルが『夜と霧』で書いた一節を思い出す。

だれもその人から苦しみを取り除くことはできない。だれもその人の身代りになって苦しみをとことん苦しむことはできない。この運命を引き当てたその人自身がこの苦しみを引きうけることに、ふたつとないなにかをなしとげるたった一度の可能性はあるのだ。
ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』みすず書房

苦しんだ過去も、受け入れてきた自分も、今につながっている。私が私として占いを書くうえで、歯を食いしばってがんばってきた思い出も生きているのだ。そう考えるのはいささか都合が良すぎるような気もするのだけれど、PCをを閉じてただの私に戻ったときに、心の平穏をもたらすのはそうした妄想である。

幸せでいますか、幸せでいてね。あなたのまわりの大切な人も幸せでありますように。ほんとうにそう思う。さよならから、どれほどの時間を経ても。たとえ二度と、会うことはなくても。


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