服部フェス-2022-

「お前、服部なんやから服部緑地で何かやればええやん!」
そんな友人のジョークから全ては始まった。


一昨年、去年とコロナウイルスの蔓延によって服部フェスは2年連続の中止を余儀なくされた。
私が傷付いているだろうと色んな方から励ましや心配の声を数多く頂いたが、正直ホッとしてる自分もいた。
私は自分で服部フェスを開催すると言っておきながら、実際本当に開催される事がずっと怖かった。


今年は今のところ無事に開催できそうである。
例のごとく毎日胃がキリキリしている。
私はここまで大規模な人やお金が動くイベントを主催した事が無い。
周りを見渡せばある程度の経験やコネクションがあればこの規模のイベントを毎月毎週やっているイベンターは数多くいるだろう。
しかし本当に何もかもが未経験で手作りに近い形でここまでの規模のイベントを作るのは色んな面で想像が付かず不安とプレッシャーに押し潰されそうになる事も少なくは無かった。
もちろん自分だけで動いてる訳では無く私の他に2名制作スタッフが居てくれていて、私は設計図を描いてこだわりを貫きその都度の最終的な決断をするだけである。
私のこだわりが無ければもっとスムーズに進めれる事もあっただろうが2人は世間知らずで非常識な私の意見をしっかり受け止めては時に止めたり一般的な視点から説明したり促したりしながらも、看板としての自分をしっかり立てて毎日サポートしてくれている。


開催まで残り数日。
当然もう逃げる事はできない場所に立っている。
2年連続の中止に伴いチケットの払い戻しによる手数料やその他諸々の経費で負債は溜まりに溜まっている。
そして当然、知名度も無い我々のイベントに返事をくれるアーティストがいる事自体が奇跡に近く、最終アーティストが確定したのは開催1週間前になってしまった。
余裕を持って出演アーティストの日割りやタイムテーブルも発表できず楽しみにしているお客さんや行くべきか迷ってる人たちはスケジュールも立てられず、私自身の力不足でお客さんや関係者の人たちには迷惑をかけてしまっていて心から申し訳なく思う。


それでも蓋を開けてみれば今回の服部フェスはそんな私でも「さすが私のフェスだ!」と胸を張れるぐらいとても素晴らしい出演者たちが揃ったと自負できる。
制作スタッフの2名が繋いでくれた縁もあるが、他にもダメ元でオファーした名高いアーティストの方が「くぴぽだから」「まきちゃんだから」という理由で快諾してくれた人もいた。


恥ずかしい話、目下の心配事はお金だ。
思ったよりお金がかかる。
恐らく結構な確率で赤字だろう。
人生最大規模の責任に私は毎日胃と気がおかしくなっている。
しかしそれでもやり続けるのはそんな事よりこの先に大切なものがあると信じているからだ。


私はくぴぽを結成してからというもの積み重ねては壊れて、積み重ねては壊れてを繰り返しもう今の自分には何も残ってないんじゃないだろうか。そう思っていた。
しかしそんな事は全く無かった。
長年震えながらも踏み締めていたこの場所からは目に映らない無数の芽が生まれていて、祭りの当日そこには多種多様な音楽が鳴り、様々な誇りがぶつかるステージがあり、心から祭りの成功を応援し全力で楽しむ準備をしているお客さんがいる。
私のこの無駄にも思えた長い年月は無駄では無かったようだ。
始まる前から何を言っているんだと思われるかもしれないが、それぐらいこのイベントにこのような出演者の方々が集ったのが未だに信じられないし、ここ数ヶ月の私自身の生きる活力になっていた。
予算の無いこのイベントに本当に最低限のギャラで出演を決めてくれたアーティストも数多くいる。
感謝しか無い。


気の早い話かもしれないが、来年も開催したい。
できるならこれから毎年開催したい。
今はまだ服部緑地野外音楽堂を満席にする事はできないだろう。
しかし自分たちが大きくなって少しずつ埋めていき、いつか満員になるその時までみんなとそのストーリーを共に歩みたい。


私は服部フェスが終わったら新しいバイトを始める事になると思う。
しかし当日得れるものを思えば痛くも痒くも無い。
それぐらいの覚悟を持って祭りに臨む。
今の私にとって楽しい事を作るという事はそういう事だ。
みんなは付いてきてくれるだろうか。


そして当然忘れてならないのは、私はイベントの出演アーティストである。
主催者としての苦悩はもうこの辺で良いだろう。
服部緑地野外音楽堂という大きなステージでくぴぽとしてライブができる。
そこにはリスペクトを送るアーティストたちが集い彩り戦う。
そしてフロアを見渡せばお酒を片手に音楽に酔いしれるお客さんがいる。
きっとステージから見える景色は格別だろう。
ひょっとしたら会場から桜も見えるかもしれない。
天気予報が外れたら雨が降るかもしれない。
予期せぬ地震が起きるかもしれない。
ウイルスが今よりも猛威を振るうかもしれない。
それらに伴い開催日直前や当日に数々の色んなトラブルが起きるかもしれない。


1人でも多くのお客さんが集まったら嬉しいな。


服部真希(くぴぽ)

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