いつか忘れてしまうのが悲しいな。

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「わたしってくぴぽに必要ですか?」
彼女は事あるごとに何回も私に聞いてきた。
私は彼女がこのグループに必要な理由を1つずつ丁寧に説明する。
彼女は「ふーん。」と言いながら嬉しそうな顔をする時もあれば、さも私が上手く言いくるめたかのように納得いかない顔をする時もあった。

「私って○○ちゃんみたいな個性も無いし、チェキだって少ないし、大阪来たら交通費も宿泊代もかかって赤字じゃないですか?普通にくぴぽに貢献できてなくないですか?」
「その○○ちゃんも君が居なかったら輝く事ができないし、グループってそうやってみんなで足りないものを補い合ってやっと1人前の集合体になっていくんだよ。」
「ふーん、よくわかんない。」

まるで幼稚園児が見えるもの聞こえるもの触れるもの全てを親に「あれなに?なんで?どうして?」と聞くように、彼女はくぴぽに入ってから色んな事を私に聞いてきた。

「まきちゃんはあの時こう言ってたのにどうしてこれはこうなるんですか?おかしくないですか?」
「だからそれはそういう状況だったからそういう判断をしたんであって、今はこういう状況なんだからこうしないとダメでしょ?」
「うーん。。。」

納得いかない事があると頭の中がぐちゃぐちゃになる彼女の頭をいちいち整理してあげなきゃいけない作業は正直結構めんどくさかった。
でも私にとって実はそんなに嫌な作業では無かった。
お風呂上がりにドライヤーをかけながら娘の髪の毛を櫛で優しく解くような心地良さも少しあったのかもしれない。(もちろん娘も居なけりゃ、人にそんな事をした経験は無い。)

仕事をしながらアイドル活動をしてた彼女は一見しっかりしてるように見えるが、自分の事に関しては全然しっかりしていなかった。
ハッキリ言っちゃうと、本当にダメな人だった。

仕事をしていなかったらこんな事にはならなかったんだろうかと思う事もあったが、仕事をしてなかったらもっとダメになってたと思うし、仕事をしてるからアイドル活動を何とかここまで続けられたんだろうなと個人的には思う。

グループから誰か抜けると残った誰かの人格が良くも悪くも少しずつ変化していく。
環境が人を変えるというのはその通りだなと思う。
例に漏れず元々その節はあったが彼女は加入した頃に比べて少しずつ様子が変わっていった。
辞める理由は色々あるけどグループ内の個人個人の関係性が変わっていったのも一因であったように思う。
オーディションを受けた時とは少しずつ変わっていくくぴぽにずっと戸惑っていたのかもしれない。
それでも私は彼女に「必要だからくぴぽに居てほしい。」と伝え続けた。



彼女は短気でワガママだったけど優しかった。
彼女は可愛げが無かったけど可愛かった。
彼女は変なこだわりが強かったけどちゃんと謝れる子だった。
彼女はめんどくさくてダメな子で振り回されては何度怒ったか分からないけど私は彼女が好きだった。(あと声がめちゃくちゃかわいい。)

私は心が弱い子でもアイドル活動を続けられないかと何年もずっと試行錯誤をしていた。
心が繊細でもどんな平凡そうに見える子でも必ず個性や好きなものや憧れてるものがあるはずでそれがその子自身のオリジナルな個性に繋がるはずだと信じて向き合い続けた。
それでもやはりアイドル活動は集団行動であり私も含めてグループ全員の心が強い訳では無く、少しずつバランスが歪になってきているのを応急処置をしてはまた綻びが大きくなって応急処置をしての繰り返しにここ数ヶ月はなっていた。

結局わたしはまた誰も守る事ができなかった。



私はあと1人でも誰かが抜けたらくぴぽを解散すると決めていた。
誰かが辞める度に「また辞めたのか」「入れ替わりが激しい」と揶揄される事にもう自分が耐えられそうにも無かったし、残ってくれる子たちにそんなイメージが付いているグループに居させるのはとても心が痛むからだ。
辞めた子たちは(長いか短いかどう思うのかは人それぞれだが)決して短くない時間みんな約2,3年もの間全てを投げ打ってアイドルとして頑張ってくれて辞めていった。
それを「またやめたのか」「入れ替わりが激しい」と言われる事はその子たちの気持ちをも馬鹿にされてるようでとても悲しい。
きっと普通はそこで解散を選ぶのだろう。
リセットして無かったかのようにイメージを変えて活動するのがビジネス的にも精神的にも正解だったのかもしれない。
しかしその度に解散を選ばずに続ける事を選択しながらこのグループは約8年もの月日が経ってしまった。
「自分だけ抜けるのがベストでは。」
「グループ名を変えよう。」
現実的にそんな事も考えていた。
それでもこの5人のメンバーで解散を選びたくなかったから必死でグループのバランスが崩れないように保とうと自分なりに頑張っていたが今思えばずっと空回りしていたように思う。

2022年4月3日、服部フェスのステージでその場の流れを無視して私は「また来年この5人で立ちたいね?」とメンバーに問いかけた。
私なりにみんなの前で約束させる事で少しでも解散を免れるのでは無いだろうかと浅はかな事を考えて口から出てしまった。

彼女が辞めたいと仄めかす度に私は解散した後の自分を想像した。
どう考えても自分がその辺で野垂れ死ぬイメージしか湧かなかった。
私はメンバーが居るからこのステージに立たせてもらえてるのだ。



そしてそんな私にこの数ヶ月、心境の変化が起きた。
それは「まきちゃん推し」が少し増えた事にある。
これまで体験した事の無い多くの愛を受け取った私はアイドルとしての自己肯定感が芽生え、今まで支えてくれていた人への愛にも素直に受け取れるようになっていった。(遅くてすみません。)
解散して私が居なくなったらこの人たちはどうなるのだろうと思った。
普通に考えたら「私が居なくなる事で深く傷付き、しばらく経って他の推しを見つける」が自然なのかもしれないが、どうしても私にはこの人たちがそんな風になるようには思えなかった。(おめでたい性格なのかもしれません。)正確にはたぶんそう思いたくなかったのかも。
誰かが欠けた状態でこのまま活動を続ける事は苦しい。
でもこの人たちを傷付けるのはもっと苦しい。
だって私まだこの人たちに貰った愛を全然返せてない。
ひょっとして私はこの人たちの為にグループがどんな風になろうともアイドル活動を続けなきゃいけないんじゃないだろうか。と迷うようになってしまった。



そしてつい先週の事。
楽屋でうの・ちあき・しゅりが何気無い会話をしていた。

「おばあちゃんになってもアイドル続けるっしょ?」
「当たり前じゃん!」
「いぇーい!赤犬みたいになろうや!」

分かってる。
どうせそんな事言って1年経ったら2年経ったら3年経ったら言った事も全部忘れて「もう辞めたい」って言うのは分かってる。
結局みんなそうだったじゃないか。
今まで所属してたほぼ全員が「私はくぴぽを絶対に辞めない」って言ってたじゃないか。
それでも。
何でそんなキラキラした顔でそんな非現実的な事を言えるんだよ。
何でさも当たり前の将来みたいに純粋な目をしてそんな事言うんだよ。

まきちゃんも同じだよ。
まきちゃんもジジイなのかババアなのかよく分からないけど続けたいよ。
いつまで経ってもバカな事やって歌いたい歌を歌って叫びたい時に叫んで踊れないダンスを踊ってステージに立ちたいよ。
何もせずに野垂れ死にたくないよ。
まだ夢があるし自分の作った音楽が好きだから。
付いてきてくれるメンバーが好きだし、こんなグループでも応援してくれるお客さんが好きだから。
やっとできた自分の居場所を失いたくないよ。



私はまことが辞める事を受け入れる事にした。
しかし1つだけワガママを言った。
7月で辞めるのを9月まで待ってほしいと。
脱退ではなく卒業にさせてほしいと。

私は立場上、公式アカウントで卒業のアナウンスをしなければならない。
この「ツイートする」ボタンを押す作業がこの世界に入って1番嫌な仕事だ。
毎度の事ながら卒業するメンバーを応援してくれるお客さんの気持ちを考えるだけで、ひとりひとり顔を思い浮かべるだけで、胸が張り裂けそうになり地面に脳味噌が飛び散るほど土下座をして顔面から出せる汁は全部出して誠意を示してしまいたいほど申し訳ない気持ちでいっぱいになるのだ。
私が悪い訳では無いのは分かっている。
しかし私が1%でも悪くない事は無いからだ。
1%どころか守り切る事ができなかった事にとても責任を感じているからだ。
本当に悲しい思いをさせてごめんなさいと。
それぐらいお客さんは時間を問わず場所を問わず彼女を熱心に推してくれていたからどんな顔をして次の現場で居たら良いのか、本当に合わせる顔が無い。
しかもつい最近彼女を推していたファンの人に相談されて「これからもしっかり応援するよ!」という有り難い言葉を貰ったばかりだったからだ。
そんな人たちに少しでも心の整理を付ける時間を作ってほしかった。
突然居なくなるなんて事じゃなく2ヶ月が短いか長いか分からないし全てのライブに出れる訳じゃないけどちゃんと時間をかけて卒業の日を迎えてほしかった。



共演者にメンバーの好きなアイドルが決まるたびにメンバー喜んでくれるかなぁ。なんて思う事がよくある。
まことはどちらかと言うと「ふーん。」と返す事が多い。
「あれ?好きって言ってなかったかなぁ」と心の中で不安になる事が多かったが、実は嬉しかったらしい。
本当に可愛げの無いやつだと思う。

「そうやってしゅりちゃんに当たり前のようにお世話してもらってばっかりだといつか将来まきちゃん1人で何にもできなくなっちゃうよ!」と怒られた事があるが、その言葉をそっくりそのまま君に返したい。

君はくぴぽを辞めて本当にちゃんと生きていけるの?
君こそ野垂れ死ぬんじゃないかとまきちゃんは心配だよ。
平気なふりしてるけど、悲しいんでしょ。
つらいんでしょ。
寂しいんでしょ。
悔しいんでしょ。
悲しいんでしょ。
お客さんにもメンバーにも罪悪感でいっぱいなんでしょ。
まきちゃんは君をしあわせにしたかったよ。
生意気な君がケラケラ素直に笑ってる時が1番愛しくて大好きだったから。

とりあえず9/18まで休みながらだけどゆっくりアイドルやろうよ。
君をしあわせにして卒業してもらうから。

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