2021年6月のジューンブライドにくぴぽは3rd ALBUM「絶対結婚しような!!!!」をリリースした。
そしてそのアルバムツアーが2021年8月1日に終わった。
予定していた日程で開催できず延期を余儀なくされた公演もあり、メンバーの脱退や新メンバーの加入も目まぐるしく、かなり大変な数か月だった。

自分としては辞めたいと言うメンバーと共にライブをする事にどうしてもモチベーションを見い出せず、各々がそんな気持ちで良いライブができる訳無いし、そんなものにお金や時間を費やしてもらうなんて応援してくれてるお客さんに失礼だから自分がくぴぽから抜けるか解散をしようと12月頃から何度もメンバーに伝えていた。
3人で続けることを了承したメンバーもいたが最終的にメンバー全員が「4人でライブをしたい、解散は嫌だ。」と言った。
実際にメンバー2名から辞めたいと伝えられるまでの間、明らかにモチベーションが以前より落ちていたのも見て取れたし精神的にも体力的にも疲弊していて言う事を聞いてくれない(理解してくれない)事も増えたし、それが自分も含めた残りのメンバーにも確実に伝染していた。
辞めると決まってからは最後に向けて憑き物が落ちたかのように見えた時もあったが、やはり長い期間こびり付いたものは変わらないし、こんな状態でライブをする意味があるのかと毎日自問自答していた。
6月の大阪ワンマンが無くなり、7月の大阪は4人でしようとなった時も「やっぱり3人でやってくれないか」とひめちゃんに伝えたが「4人でライブできないなら大阪のライブは無しでいいです。4人じゃないと意味無いので。」と言われて、嬉しいはずなのに私は「なぜ?」とずっと混乱していた。

私はひめちゃんに。
私はなだれに。
私はあむちゃんに。
ずっと恋をしていた。

みんなそれぞれアイドルとして色んなものと戦い生きていたのだろう。
しかし、3人が集まった時の生ぬるい空気感や抗うことのできない惰性と妥協の入り混じった(ように見える)グルーヴみたいなものが、どうしても数多くの仲間が生命力を削って産み出してくれた作品や環境やそれらに伴う熱い欠片を受け取っていた自分としては許せない事や受け付ける事ができない事が数多くあった。

私はずっと孤独だった。
孤独になっていったとも言えるし、自ら孤独を選んだとも言える。
いつの間にか私の存在は3人の中でメンバーでは無くなっていた。
大人げないと言われたらそれまでだが、私は運営では無く、彼女たちに仲間だと思ってほしかった。
しかし、私は彼女たちを傷付けた。
音楽を守る為に。くぴぽを守る為に。彼女たちを守る為に。自分を守る為に。
その代償として当たり前ではあったかもしれないしそういう立場なのだと自分に何度も言い聞かせたが、やはり寂しかった。
生きる意味が分からなくなるほどに。

この時期、私にとって大きかったのは「まこと」「しゅり」「うの」の存在だった。
くぴぽを終わらせる事を踏みとどまらせたのは3人のお陰と言っても過言では無い。
彼女たちが私を、くぴぽを、このアルバムの曲たちを、1つずつ丁寧に無邪気に肯定し続けてくれて、その純粋無垢な気持ちに触れ、少しずつ頭や心から何かが溶けていくのを感じていた。
正直に言うと私はとにかく早く「まき」「あむ」「まこと」「しゅり」「うの」の5人でライブをしたいとずっと思っていた。
「まき」「ひめ」「なだれ」「あむ」の4人体制と「まき」「なだれ」「あむ」「まこと」「しゅり」の5人体制と「まき」「あむ」「まこと」「しゅり」「うの」の5人体制、この3つの体制を同時進行でレッスン・ライブをするのは無謀なのは分かっていたが、あらゆる周りの人の事を考えてこれが最善だという判断をした。
しかし、1つトラブルが起きると全ての計画が崩れ、アルバム曲の振り入れの進行や全ての体制での準備が遅れる。それでもその状態でライブをこなす事を余儀なくされ、自分もアルバムにまつわる諸々や卒業にまつわる諸々や通常の運営業務で時間を忙殺され、メンバーとしてやらなきゃいけない事が全くできなくなっていた。

しかしツアーが始まり蓋を開けてみると、ライブに気持ちが入らないはずの私は結局(たぶん)いつも通りのライブをしていた(と思う)。
スタッフのちあきに聞いたら「4人ともみんなプロだからそんな風には見えないですよ」と言われた。

距離的にもきっとそんなに多くのお客さんは来れないだろうと思っていたが最後ぐらい地元でという小さな夢を叶えさせてあげたいと思っていた「ひめちゃん」がこんなにも多くの人に愛されてる事を目の当たりにし、その温かさに不覚にも目元がゆるんだ岡山(ライブ中、私は死ぬまでにこんな景色を見れるだろうかと思っていた)。

新しいメンバー「まこと」「しゅり」の新鮮さへの興奮と卒業メンバーの残り少ないライブと決してお世辞にも多いとは言えないお客さんにメンバーもお客さんも情緒がどうかしていてそれ故に過去最大級に異様で異常なグルーブを生み出していた名古屋。

この日を迎えるに当たって日常の全てをギリギリ(アウト)にして挑んでいた「なだれ」に対して、負けじと尋常じゃないほどの熱量と愛情と狂気をもって挑んでいたお客さんのその余りの滑稽なカッコ良さについ笑みが溢れてしまった高知。
ツアーは自分の想像に反して、予想以上に良いツアーになっていた。

お客さんから「いつ居なくなってもおかしくないアイドルをちゃんと卒業まで共にする時間と卒業公演を準備してくれて本当にありがとう」と言われた。
そうだった。
私は自分が作り上げたものを応援してくれているお客さんの為。
そして色んな方が心血注いで完成させたこの音楽を守る為。
そして今まで自分が作ったくぴぽというものに色んなものを犠牲にして私を信じて注いでくれたメンバーへの感謝とけじめ。
これから共に生きていく4人へと繋ぐ為にライブをする事を決意した事を思い出した。

あんなに目標にしていた新宿LOFTのワンマンは思ったほど感慨は無かった。
メンバー全員、ダンスは今まで当たり前にできていたフォーメーションすら忘れ、歌割りも何回も間違えて、昼公演の影響で声も嗄(か)れている。
アルバムで披露していない曲は残り2曲あったが「紫陽花と短冊」を無理矢理セットリストに入れるのがやっとで「天国」を覚える為の時間も精神力も4人には無かった。
当然ワンマン恒例のコントなんてできる状態では無いし、個人的に「ひめちゃん」「なだれ」が主役の公演では無く「まきちゃん」「あむ」を含めた4人でのアルバムを真ん中に置く公演にしたかったので、手紙を入れるかも前日まで悩んでいた。
半分本気半分ネタでよくメンバーに「ライブ中に泣くな。」と言っている。
それはくぴぽのライブは笑顔でやり通したいという思いもあるが、自分がライブ中に泣いてるアイドルを見ると身内ノリを感じて冷めてしまうというのもある。
でも、本当の事を言うと実は別に全然泣いてもいい。
ただそれをアイドルの涙として表現してほしい。
だから明日の「アイドルとして最後のライブ」をアイドルらしく終えてほしい。
ワンマン前夜にメンバーへそう伝えた。
結果的に大団円のイベントになり、お客さんひとりひとりのくぴぽへの愛情をひとつずつ受け取れた公演になったと思う。

そしてツアーファイナルの大阪。
前日にコロナの影響によって会場が使えなくなる事が発覚する。
「なんかくぴぽらしくていいじゃん。最悪どこかの河原でやってもいいなぁ。」と思ったものの束の間、数時間で阿倍野ROCKTOWNの空きが見つかってしまい、少しだけ拍子抜けする。
ライブが始まるといつもとは違う経験した事の無い異様な空気を感じた。
新メンバー「うの」が入った体制への良い意味での戸惑いと期待と驚きがフロアを包んでいてお客さんたちが私たちをどう咀嚼すればいいのか分からないように見えた。
新宿LOFTからのこの公演という事もあり正直ライブが全然盛り上がってないように感じた。
この日はアルバムの曲順を逆にしたセットリストだった。ひょっとしてセットリストの判断を間違えたのかと思いながらライブをしていた。
戸惑いと焦りが先立ち、この日急遽スタッフが来れなくなって自分1人で物販を回さないといけない事を急に思い出したりなどライブには全く関係の無い無数の余計な事が頭の中を支配して、序盤は全くライブに集中できなかった。
MCやコントのおかげで少しだけ整い、少しずついつもの自分に戻っていく。お客さんも少しずついつも通りに戻っていってるように感じた。
最後のMCで「今日は曲がぬるく感じた」と言ったのは全くの勘違いだった。
ライブ後の交流で色んなお客さんが5人でのライブを褒めてくれて、中には目を潤ませて感動を伝えてくれる人までいた。
相変わらずライブと言うのはいつまで経っても水物なんだと感じた。
今思うと普通にお客さんとして楽しんでいる反応だったかもしれない。
ツアーでの狂気が普通に戻っただけで、今私たちはスタート地点に立ったんだと実感した。

私はくぴぽを辞めていったメンバーにずっと恋をしていたのかもしれない。
アイドルを始めてから恋愛感情というものが消えていって女の子を女の子として見る事ができなくなって自分の大切にしていたあの心はどこにいったんだろうと思っていたがたぶん今わかった。
それは形を変えてまた別の親心や友情や仲間意識みたいな感情と混じり合ってずっとそこにあったのだ。
厳密には恋では無いかもしれない。
けれど私は彼女たちを愛していたし、これからしばらくの間は情けない事にそこに憎しみの感情がどうしても入り混じってしまうだろう。
そしてそのうちそんな感情がどうでも良くなり、新しい恋が始まる。
「今まで付いてきてくれてありがとう」も「売れさせられなくてごめん」も伝える事ができなかった。
「2度と会えない訳じゃない」と人は言うが、誰が何と言おうと彼女たちとはもう2度と会えない。
私の中から彼女たちは消えていき、彼女たちの中から私は消えていく。
『いつか忘れてしまうのが悲しいな』と歌わせたが、それでいいのだ。
また新しい私と新しい彼女たちがいつか出会う日が来るかもしれない。
永遠に重ならないまま人生を終えるかもしれない。
人は全て忘れてしまう。
でも、何度もその機能に救われてきた。

私は今また新しい恋をしている。
あんなに裏切られ裏切ったのに懲りずにまた女の子を信じている。
彼女たちは決まって「私は違うよ。」と言う。
「私がまきちゃんを守るよ」
「私は辞めないよ」
「どんな事があっても死ぬ気で頑張るよ」
「何があってもまきちゃんに付いていくね」
「私がくぴぽを売れさせるよ」
「私は嘘付かないから」
そんな甘い言葉をこれまで何度聞かされただろう。
どうしてみんなそんな濁りの無い目でまきちゃんに言うんだろう。
どうしてみんな私を疑わないんだろう。
そして、
なんて可愛い子たちなんだろう。

こうやって私はまた新しく恋をする。
呪いのような恋だ。
恋と言う言葉は恐らく適切では無いが無理矢理辻褄を合わせないと整合性が取れないほど、私は愚かでかっこ悪い。
しかしもう、引き返す勇気は無い。
私はこれからも誰かのアイドルでいられるのだろうか。
こんな私でも夢を叶えたい。
「絶対結婚しような!!!!」
そんな決して報われる事の無いような愚かな願いだろうか。
ひとりじゃ何もできない。
だから私は今日も仲間と共に夢を見る。



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この文章を書くのにまた1ヶ月ほど悩んでました。
そんなのがいっぱい下書きに転がってる。
未だにこれを書いてよかったのだろうかと思っています。
誤解を招くんだろうなと思いながら、少しでも伝わってほしい部分が伝わればいいなと思います。
あえて詳しく触れなかったメンバーたちに関してはまたどこかの機会で。
ここには書き切れないほどの物語が1人ずつありました。
そしてもちろんこれは私視点のお話でそれぞれの視点から見たら全く違う景色だと思います。
読んで嫌な思いさせた人がいたらごめんね。
誰も悪者にならないように伝わる事を願っています。

いつも♡とサポートありがとう。
色んなSNSをしてますが、何よりも嬉しいです。
みんなから頂いたサポートでこの前は美味しいエクレアを食べました。
みんなの顔を浮かべながら「いただきます」するのってなんか支えられてる感をダイレクトに味わえて幸せな気持ちになります。

今、くぴぽは新しい体制でライブをしています。
良かったらライブ見に来てください。
4人とも、とても素敵な女の子たちなのでぜひ紹介させてください。
みんなにライブを見てもらってお話したいなって気持ちが日に日に増してきました。まきちゃんにしてはめずらしいでしょ。寂しいのかな。
ねぇ、みんな。身体に気を付けてね。
いつもありがとうー。
またね。
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