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親バカのはじまり

自分の子どもはかわいい、という感覚、いったい私には来るんだろうかと少し不安に思っていた。

というのも、前のダンナさまと犬を飼っていた時、私はすごくその子を客観的にみていて、もっと見た目が愛らしい犬はいるなあなんて思っていたからだ。自分達の犬だからもちろんかけがえのない存在なのだけれど、「見た目」という点ではかなり冷静にジャッジしていた。だからお腹の子をあの時のように「まあうちの子より〇〇ちゃんの方がかわいいな」なんて思ってしまったら、いやだなあ、とちょっと不安に思っていた。

そんな不安が一気に解消されたのは、妊娠7ヶ月目に入ってはじめての妊婦検診だ。私が通っている産院は毎回4Dエコーをしてくれるのだけど、検診のたびにどうも位置がイマイチで、だけど今回はじめてお顔をみせてくれた。

そこにうつっていたのは、彼にそっくりの鼻筋を持つ、なんとも可愛らしい女の子だった。あまりにも可愛いので、速攻でスマホに保存した。そしてことあるごとに眺めては、ひとりニヤニヤと悦にひたっている。
が、この写真、彼を始め、見てもらった人の反応はかなり微妙だ。たしかに努めて冷静に眺めてみると、顔の造形が分かるほどではないかもしれない。へその緒やらなんやら、見慣れてない人には結構グロいだろう。
どうも私がみている「彼女」と皆がみているものは違うらしい。これが親バカか、とハッとした。

妊娠7か月の今でも、時々「産まない人生」に思いを馳せる。「産まない」を精一杯楽しんで、そんな人生も素敵だ、てことを自分の人生を通して証明しようと燃えていた、半年前の、私。
だから今の状況に時々感情がついていかない。あまりにも人生が変わってしまったことに、時折呆然とする。

それでも「産む人生」、これはこれでよいものだとも思う。少なくとも「親バカ」という感情を、妊娠することがなければ知らなかった。「自分の子は特別」というこの愛しい感覚を知ると、ちょっと世の中が今までと違ってみえる。

なにかを失えばなにかを得る。人生に無駄なことなんてなに一つない。そう思う。

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