MAKIBRI

voice blue sky peaceヒカシュー巻上公一によるnoteです。

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マガジン

  • みんな旅をしてる

    マジカル・ヒカシューツアー!! フリーペーパーZipang Newsに連載中! 2013年12月から現在まで  ヒカシューやぼく個人の 海外の旅の話を書いています。

  • ヒカシュー

    ヒカシューのさまざま

  • 真帆片帆

    追風で走る真帆、横風を受けての片帆。 他のマガジンとは別テーマを集めました。 p.s. 嘗ての1970年代小田原高校新聞一面のコラムの名から取りました。

  • 虚空を掴む

    こぼれてしまった ことばをあつめてみる

  • トゥバ

    南シベリアに位置するロシア連邦トゥバ共和国。 独特な喉歌ホーメイのふるさとである。 そんなお話が満載。

最近の記事

81.オノマトペがざくざく

 日本語にはオノマトペ(擬音語、擬態語)が多いとよくきく。ぱらぱらといろんなものを読んでいると、擬音語もさることながら、擬態語がざくざくあるのだそうだ。  CM作曲家の桜井順は、面白い本を書いている。「オノマトピア―擬音語大国にっぽん考」である。軽妙な文章で、古事記の天地混沌をかきまわす音「コヲロコヲロ」から野坂昭如の「ジンジンジンジン血がジンジン」まで登場する。  桜井は、「オノマトピア」とは「オノマトペ=擬音語」と「ユートピア=理想郷」の合成造語である。と言っている。「オ

    • 80.イリヤ・カバコフの作品に会いたくて

       緊急事態宣言がでようとしている頃、越後妻有で開催している大地の芸術祭のイリヤ・カバコフの「16本のロープ」の特別先行展が見たくて、スターパインズカフェで毎月公演しているマンスリーヒカシューの後、吉祥寺に一泊して、関越道を走った。  昼頃に津峡渓谷トンネルに到着。トンネル全体がアート作品になっているマ・ヤンソン/MADアーキテクツ「Tunnel of Light」をまず見学した。全長750mのトンネルは、赤、青、緑とライトが変わり、途中には合わせ鏡のインスタレーションがあり、

      • 78.レディー・ガガの金色のマイク

         ワシントンで行われたバイデン新大統領の就任式典で、レディー・ガガが国歌を歌った。赤いスカートに、長袖の黒い上着、和解への希望を示したという巨大な金色の鳩のブローチ、そして金色のマイクに金色のコード。 「あれは、どこのマイクだろう」  なんとなく自分も使っているゼンハイザーのe935(単一指向性、ダイナミック)に似ているので、たぶんゼンハイザーには間違いないだろうと思い、「レディー・ガガのマイク」で検索をかけた。どうやらゼンハイザーは合っていた。だが聞き覚えのないMD43

        • 77.テルミン100年を記念して

          テルミンを演奏して何年になるだろう。 シンセサイザーの生みの親であるボブ・モーグ博士が、1996年にEtherwaveという名で、コンパクトで存分な性能を備えたテルミンをbig Briarブランドから発売したのを聞きつけた。注文したのは、翌年あたりだろうか。製造番号は50番だった。  テルミンは、ソビエトのテルミン博士が100年前に発明した世界初の電子楽器である。当時ニューヨークでも話題となり、クララ・ロックモアの素晴らしい演奏で、数々の映画音楽に使われている。  19

        81.オノマトペがざくざく

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        • みんな旅をしてる
          81本
        • ヒカシュー
          13本
        • 真帆片帆
          8本
        • 虚空を掴む
          2本
        • トゥバ
          3本
        • チャクルパ
          6本

        記事

          ヒカシュー45周年座談会

          ヒカシューの45年は着実な歩みの積み重ねだった。その間ヒカシューは、解散も休止もなく、毎年活動を続けていた。そしてその歩みは、世界的な大事件にあっても止まることはなかった。 前回の40周年と同じ場所、同じ顔ぶれで行われた座談会は、この5年間を振り返るものになったが、それは自然と、あの出来事に触れるところから始まった。 (聞き手 安達ひでや) ――40周年の座談会から5年が経ちましたが、その間に大変な出来事が起きました。新型コロナウィルスの流行によって世の中が一変し、ヒカシュ

          ヒカシュー45周年座談会

          5 旅人は誰もが、文化大使である

           黒澤明監督の映画「デルス・ウザーラ」は、ロシア人探検家アルセーニエフのシベリア探検記で、案内役の猟師デルスとの交流を描いている。設定では、デルスは先住民ゴリドであるが、デルスを演じた俳優マクシム・ムンズクは、トゥバ人である。  そのことを知ったのは、1995年にロシア連邦トゥバ共和国を訪問した時だった。ソ連邦の崩壊から4年。まだ新しいロシア連邦には22の共和国があることすら、ぼくは知らなかった。  ソ連時代の唯一の飛行機会社アエロフロートが分割されて、いくつかの飛行機会社が

          5 旅人は誰もが、文化大使である

          2 海の嘆きを映すランプシェイド

           何年前だったのか、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展という美術展をみた。そこに知り合いのヨーガン・レールが参加していた。残念ながら展覧会の少し前に急逝してしまい、この展覧会が遺作展のようになった。  ポーランド生まれのドイツ人ヨーガン・レールは、ナチュラルな素材の着心地のいい服のデザイナーとして知られ、「ヨーガン レール」「ババグーリ」というふたつのブランドを持ち、オーガニックな野菜中心のメニューの社員食堂はつとに有名だ。彼は石垣島に暮らしていて、海岸に流れ着

          2 海の嘆きを映すランプシェイド

          76.困難をよじのぼる

           この連載のテーマのひとつが移動である。それがこのコロナ禍にあって移動を制限されている。じっとしているのも悪くはないが、どこかへ行きたいとうずうずするのは性分だろう。   ドイツのメルケル首相は、東ドイツ出身だけに、ベルリンの壁の崩壊でようやく勝ち取った「移動の自由」を、あえて政府が制限しなくてはならない苦悩を国民に寄り添う声で訴えていた。  ぼくは1988年に、世界史の変貌をこの目でみたくて、ドイツに渡航したことを思い出した。Sバーンという地下鉄に乗り、西ベルリンから東ベル

          76.困難をよじのぼる

          75.コルネットのくしゃくしゃ

           コルネットの修理に銀座に行った。コルネットはヤマハ製、ヒカシューがデビューした頃、購入したので、かれこれ40年近く経つだろうか。ベルがつぶれ、三ヵ所がへこみ、バルブ近くのハンダが弛んでいた。コロナのおかげで楽器の修理の時間ができたともいえる。  1989年の3月に、作曲家でピアニストの三宅榛名のイベント「飛行船日誌vol3 偶発バンド」に、ぼくは参加した。ゲストは他にトランペッターの日野皓正。このイベントでぼくは、ベースを弾きながら歌ったのだけど、日野皓正との共演というめっ

          75.コルネットのくしゃくしゃ

          74.「天女の雪蹴り」にはじまる

           裾野には我が家からクルマで約40分くらいで行けるのだけれど、行くのは初めてだった。今年の春に第一回大岡信賞を受賞したことで、静岡連詩の会という大岡信がはじめたイベントに参加することになった。  連詩とは複数人で短い詩をリレーのように連ねていく創作現代詩で、連歌・連句の美学を下敷きにしてはじまった。21回目だという。  大岡信の後を継いで、2009年から「さばき手」をつとめるのは、詩人の野村喜和夫である。ぼくは、かつて野村喜和夫の長編詩「街の衣のいちまい下の蛇は虹だ」に篠田昌

          74.「天女の雪蹴り」にはじまる

          73. とんでもない声を遠隔で、5人はいまも歌っている。

           Five Men Singing が帰ってくる。 だれにも望まれていないのに。 みんなが知っている声の怪物たち。 スーパーな声の共演がまた実現する。 ドイツ、オランダ、英国、カナダ、そして日本から回線でつながり、 この度はオンライン上で。  Five Men Singingは、2003年カナダのFIMAVに出演するために結成した。メンバーは、フィル・ミントン、ヤープ・ブロンク、デビッド・モス、ポール・ダットン、そして巻上公一の5人である。たしかカナダのトロント在住の音響詩

          73. とんでもない声を遠隔で、5人はいまも歌っている。

          「アヴェマリア」が流れてる

           「アヴェマリア」が流れている。午後4時半だ。バッハのプレリュードにメロディを乗せたシャルル・グノーの名曲である。これは湯河原町の防災無線である。町の中から山の上まで、隣接するたいした性能ではないスピーカーから一斉に流れるので、音の配送のずれによってモアレを起こして、まったく美しくない「アヴェマリア」で町が覆われる。  その隣町の熱海市では、昼にシューベルトの「菩提樹」、夕方にはドヴォルザークの「家路」が、抒情を排した打鐘式音源のチャイム音で暴力的に鳴り響く。   わが家は、

          「アヴェマリア」が流れてる

          72.リスボンから雅なる

          前号で、大垣のIAMASを舞台に、フランスやオーストラリアと回線をつなげて、音楽を共有するISDNコンサートをしたが、うまくいかなかったことを書いた。それは1996年のことである。24年も前のことだが、妙な興奮をしたものだ。世界を繋げることは、以前に較べて格段に容易になった。  いまは、光回線や5Gという規格で、大規模なデータ通信が可能になった。コンサートの題名にもなったISDN(アイエスディーエヌ)という規格で、ようやく交換機・中継回線・加入者線まで全てデジタル化され、公

          72.リスボンから雅なる

          71.ラビリンスドアを覚えてる?

           熱海の人口の白い砂浜サンビーチに突如現れたルネ・マグリット風の青空が描かれたドア。さて、今年も設置しようと目論んでいる。  ご存知コロナ禍の中、これほどまでにパフォーマンス界隈の規制が強く、そして長く続くと、人々の心も怖じ気づいて、出かけて何かを観ようという気概が失せている。ミュージシャンたちの中にも「今年はずっと家にいる」という選択をしている者もいる。  だけどそんな不甲斐ないことでいいのだろうか。  そう思い、いつものようにはいかないけれど、なんとか生のパフォーマンスを

          71.ラビリンスドアを覚えてる?

          70.例外を管理し、これを補足する宇宙を説明する演劇

           松本にはかねてからまつもと市民芸術観の芸術監督をしている串田和美がいて、コロナ禍の発信には共感するものがあり、そしてまた今回の公演で出てくるであろう「パタフィジック」に興味があるので、松本まで小説家で劇作家のアルフレッド・ジャリ(仏: Alfred Jarry, 1873年9月8日 - 1907年11月1日)をテーマにした「じゃり」(小川絵梨子脚本・演出)を観に行ってきた。  数日前に新宿の小劇場で新型コロナ騒ぎがあったので、劇場は、いつになく入場から慎重だった。整理番号

          70.例外を管理し、これを補足する宇宙を説明する演劇

          69.エストニアで天手古舞

           さて、前号からの続きです。ヒカシューのメンバーはエストニアのタルトゥでの公演前に立ち往生。コロナ禍の政府対応がはじまったようなのだ。   スタッフのTiuuさんは、電話でいろいろ確認をしている。「なんだかパニックなのよ」政府から緊急事態宣言が出て全ての公演が禁止になるようだという。しかしそれは3月13日からということだったので、お客さんもまばらにやってきて、ギリギリ間に合ってライブを行うことになった。タリンから車で駆けつけたヤヌス氏は、伝説のギタリストでもあるが、テレビのプ

          69.エストニアで天手古舞