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15.はじめてのサンクトペテルブルク

ラトビアでは、ウペという民族楽器屋さんで木のトランペットを買ったり、新鮮な蜂蜜を買ったり、ステンダースという自然派の素敵な石鹸を買ったり、思いがけず買い物をたくさんした。ここはとてもいいものを売っている国である。
サンクトペテルブルクまでは、もう目と鼻の先。夕方の飛行機に乗り、夜の10時頃到着した。オーガナイズをしてくれるエブゲニーと彼の友だちのナターシャが出迎え。
ところが、エブゲニーがいきなり、
「チケットが売れていなくてね」
ここまでツアーが順調だっただけに予想外のコトバに耳を疑った。
「それにほくは明日のライブ途中までしかいられないんだ」
「ん?」
「大丈夫、ナターシャがいるから」
なんだか大丈夫じゃなさそうだけど、
ナターシャは、イワノバというバンドの歌手でアコーディオン弾き、超美人だが、「いいか」という訳にはいかない。これは大変だ。慌ててメール作戦。オーガナイザーのエブゲニーがシベリアの町バルナウルに住んでいるのも問題である。サンクトペテルブルクの宣伝ができるわけがない。
次の日、会場に行ってみると、そこはレストランライブハウスといった風情で、大きさはクラブクアトロぐらいある。これで人がこなかったらみじめだ。
ジャガーというクラブで、スタッフは素晴らしく、ミュージシャンに提供されるふんだんな食事もおいしい。あとはお客さんだが、なんとか友人たちが集まったという感じ。
はじめてのサンクトペテルブルク、これも勉強だ。
だが、演奏が続くに連れ、まったく関係なく来たお客さんも巻き込んで、最後には客席は熱気を帯びていた。まずまずだ。
さて、サンクトペテルブルクではもう一本ライブが入っている。
それは国際音楽フェスティバルと銘打った大胆な企画で、なんと名門サンクトペテルブルク音楽院の中の会場である。ところがそこにはピアノがなく借りてきたエレピは足がなく、テルミンスタンドは斜めっているし、ドラムはかなりな状態だった。
フィンランドから来た音楽家なども参加し、不思議な催し感たっぷり。
セッティングを終えたヒカシューメンバーは、スタローバヤ(定食屋)でごはんを食べて、町を散歩。偶然通りかかったナボコフミュージアムで、ナボコフの短編ドキュメンタリーや蝶の標本、ナボコフが使っていたインデックスカードなどを見た。
これはヒカシューの作品『万感』に多いに役立った。
その日のライブが異様に盛り上がったのは言うまでもない。(2012.10.18)




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