見出し画像

17. ウメオからコペンハーゲン

ウメオというスウェーデンの町で、開催されているMADEフェスティバル。演劇と音楽とマルチメディアとが交じり合ったフェスティバルのようだ。2013年、友人のデビッド・モスがディレクターになった。そこでぼくを呼んでくれるというので、考えた末、モリイクエさんが中心になって作った『KIBYOSHI』を推薦した。それは江戸中期の漫画の元のような「黄表紙」をコンピュータを駆使したアニメーションに転化したオリジナルな作品である。
DVDで発売になっている『KIBYOSHI』は、コンセプトとビジュアルとモリイクエさん、演奏は、イクエさんとぼくとマーク・ナシーフのトリオ。マーク・ナシーフさんは、ハードロックファンには知られたドラマーだが、ここでは繊細なパーカッションをプレイしている。ぼくは語りを中心に口琴の演奏を加えている。ウメオでは、予算の関係で、ぼくとイクエさんのふたりだけでやることにした。


ウメオの劇場のホワイエには、声にフォーカスした様々なインスタレーションが設置されていた。ヴォイスパフォーマーのデビッド・モスがディレクターだけに声が大きなテーマのひとつだ。演劇では、イギリスから来たパペットシアターBlind Summit Theatreが秀逸だった。ダンボールでつくった簡易的な人形を文楽風に3人で動かしていた。ただ太夫はおらず、メインの人形師が語る。内容はモーゼへのインタビューだ。ポール・サイモンのグレースランドで一躍有名になった南アフリカのコーラスグループ、レディスミス・ブラック・マンバーゾも見ることができた。
ウメオの町の中心にこれといった特徴はないけれど、フェスティバルのプログラムには目を見張るものがある。もう何日か見ても面白かっただろう。
 そう思いつつ、ぼくとイクエさんは次の町、コペンハーゲンに飛行機で向かった。ジャズハウスというライブハウスで、サクソフォニストのロッテ・アンカーが企画したコンサートに出演するためだ。チェロのフレッド・ロンベルクホルムも加わったカルテットでの演奏だった。その日もうひとつはGASHというスウェーデンのトリオで、マッツ・グスタフソン、ステン・サンデル、レイモンド・ストリッドというメンバー。そういえばマッツは、ウメオ出身だった。「前日はウメオだったよ」と言うと、「奇遇だね」とばかりにこっとしていた。ステン・サンデルには前の年、渋谷のホテルのロビーで会ったことがあったけれど、この時はすっヵり忘れていた。すばらしいピアニストである。
 さて、ぼくはこれからニューヨークを経由してトロントへ向かう。そしてヒカシューのメンバーと合流する。

(2013.5.10)

ジョセフ・シャバララとデイビッド・モス


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?