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ムムリク問題_追記

かつてラクーアにあったムーミンカフェで
開催された「夜の読書会」のメモが出てきたので
ムムリク問題の追記をば。

2019年8月新版『ムーミン谷の夏まつり』の刊行&「ムーミンの日」イベントでした

新版『ムーミン谷の夏まつり』6章で
ちびのミイが歌う「すべてちっちゃな
生きものは しっぽにリボンをむすんでる」
という歌の中の
「ムムリクの家のまわりには
赤いチューリップがゆーらゆら」について。

ムムリクといえば、スナフキンの
スウェーデン語名であるSnusmumrikが
思い浮かぶ。Mumrikは元々は
「変わり者で、嫌な奴」とか
「無礼で乱暴で粗雑な愚かな男」
という意味がある。
Snusは「嗅ぎタバコ」だが、Snusmumrik
という言葉は辞書的には「薄汚れたジジイ」
の意味になる。
しかし、これは辞書的な意味であって
Toveは悪い意味では使っていないのではないか。

スナフキンのモデルはToveの元彼である
アトス・ヴィルタネンで、この人がまた、
こざっぱりとした格好では全くなかった。
特に帽子はヨレヨレのものを大事に被っていた。
そして帽子の色は緑。
スナフキンの帽子はアトスの帽子…と考えると
Snusmumrikは親しみをこめた表現
なのではないかと。

そして
Atos - en vänbok という本に収録されている
Toveの文章にこんな記述がある。

スウェーデン語系フィンランド人作家のChristina AnderssonとClaes Anderssonの編集で2012年に発行されたAtosの追悼本。

ある日のこと、私の企みから取り返しのつかないことになってしまった。アトスの帽子と似たようなものを買ってきて、ふざけて帽子を交換しようと「ホテル カンプ」の前で持ちかけた。そして、手に入れたアトスの帽子をクリーニングに出したのだ。きれいになった帽子を見たアトスは、怒ったりはしなかったけれど、静かに、でも きっぱりと言った。「これはもう僕の帽子じゃない」と。

翻訳:畑中 麻紀

 『ムーミン谷の彗星』で描かれている、
「その古帽子を新しくしたら?」と言われて
怯えるスナフキンそっくりだ。

また、"Muminvärlden och verkligheten"
というヴィジュアル本には
Toveの家族がアトスの帽子を
「カビでできているカビカビ帽子」
と呼んでいたエピソードも収録されている。

https://www.bokus.com/bok/9789171263049/muminvarlden-och-verkligheten-tove-janssons-liv-i-bilder/


前述のAtos追悼本に収録されている
作家・ジャーナリストのGustaf Widénの
エッセイにこんな記述がある。
”アトスの墓碑はオーランド諸島(アトスの故郷)の
御影石にヴィクトル・ヤンソン(=トーベの父)
制作のブロンズ像で装飾されている。
これはトーベからの最後の「はなむけ」である。
ふたりの恋愛関係は解消されてしまっていたが
友情が途絶えることはなかったのだ”

アトスのエピソードは他にもトーベ評伝で色々と言及されているので、ぜひ。


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