「ボカコレ」で注目を集めた曲について分析してみる

お久しぶりのまきなLv39です。

今回はニコニコ動画で開催中のイベント「The VOCALOID Collection」についてのお話をしようかと思います。

昨今のボカロ界隈では珍しいレベルの大型イベントとなり、現時点で800超の新曲、および200超のREMIX曲がニコニコ動画にアップされています。(最終的に「ボカコレ2020冬」タグで978件、「ボカコレ冬REMIX」タグで272件)ボカロPってこんなにいるのかと改めて実感できたイベントですね。かくいうぼくもボカロPとしてこっそりデビューしており、このイベントにひっそりと新曲を引っ提げて参加しております。また、この期間中にいろいろなPさんの曲を知ることができ、とても有意義な時間を過ごせたかと思っております。

ニコ動さん次はいつ開催ですか!?2021年春ですか?夏ですか!?
→2021春にニコニコ超会議2021と合同開催だそうです。備えよう。


ところでこれだけの曲が一斉に上がると、リスナー側からしても「全部の曲を追いきれない」という切実な問題があります。雑に計算して1曲辺り平均3分としても、

1000曲×3分=3000分=50時間

これでは全曲ウォッチするのが難しいですね。一般のリスナーさんは100曲追いかけるのすら厳しいのではなかったでしょうか。また、P側としても「いつもより再生数の伸びが悪い」という状態に陥ってしまいます。(実力や知名度のあるPさんでも結構伸びが悪かったように見受けられました。この辺りでの運営側のカバーリングは次回開催以降の課題点なのかなと思います。)

ただ、その中でも注目される曲はしっかりと注目されており、躍進しているPさんもいましたので今回はそういった曲を中心に、「なぜこの曲は伸びたのか?」というのを主にマーケティングの観点から個人的に分析しようと思います。(曲自体の評価をしようとすると、ぼくの場合は大抵「わーすごーい!」で終わってしまうので評価にならないんですね…)

以下の分類軸で見てみようと思います。


1. 波に乗っている有名Pさんがガチ曲を持ち込めば優勝

いきなり身も蓋もない発言ですが、おそらく真理だと思います。波に乗っている有名Pさんというのはそもそもの注目度からして他のPさんとは一線を画す存在です。そんな方が大型イベントに合わせて新曲を出すというだけで注目されないわけがありません。

10分を越える大作「或世界消失」で鮮烈なデビューを果たした柊マグネタイトさん、「オートファジー」「エバ」「ボッカデラベリタ」とヒット作を連発している柊キライさん、現在大人気のゲーム「プロセカ」から新曲を引っ提げてきたR Sound Designさん。どの方も注目されるには十分な要素を備えています。

(追記)
柊マグネタイトさんルーキー1位&総合4位、
柊キライさん総合2位、
R Sound Designさん総合1位おめでとうございます!


2. 売れ筋の曲構成で、かつ誰もが納得するほどのハイクオリティの曲を仕上げれば優勝

ここからは少しマーケティングの要素も入るかと思います。まずはルーキー枠からこちらの曲を。

現時点で柊マグネタイトさんに続いて、ルーキー枠では2番目の再生数を獲得しています。(柊マグネタイトさんはルーキー枠でいいんでしょうか…?w)
この曲についての詳しい解説はFtyさんの以下の記事がとても参考になります。

こちらの解説記事を見てからもう一度「バッド・ゲイザー」を視聴すると2度楽しめますね!

マーケティングの観点から少しだけ付記しますと、昨今のボカロ曲は短い曲が好まれる傾向が強いです。ニコ動で「ボカコレ2020冬」タグの人気順でソートすると3分台の曲が非常に多いことが分かるかと思います。(今年大ヒットしたkanariaさんのKINGも2分ちょっとですね。柊キライさんはニコ動にアップしているすべての曲を3分台で整えています。個人的な見解ですと長くても4分前後に抑えるべきであり、5分からは敬遠される傾向が大きいかと思います。そこに敢えて10分強の曲を出して注目された柊マグネタイトさんは とても すごい)

この曲も例に漏れずしっかりと3分台にまとめておりますし、イントロがとても印象的です。(イントロも非常に大事であり、極端な話ですがイントロ以外がどれほど良くてもここで躓くとそのあとを再生してもらえない可能性が大きいです。リスナーとしても曲の視聴には時間をかけるわけなので、限られた時間でより好みの曲を探すにはイントロ切りは仕方のないことであるかと思います。)

(追記)
ルーキー3位&総合7位おめでとうございます!


続いてはまたまたルーキー枠からこちらの曲を。

先ほどの売れ筋をいきなり否定する5分強の構成です。5分以上の曲が何故受けないかといえば、単純に「飽きが来やすい」ことではないでしょうか。逆に言えば、リスナーを5分以上飽きさせずに聴かせ続けられる曲構成ができるというのはそれだけ実力がある証拠であるかと思います。この曲はイントロも勿論ですが、3分前後の飽きが来やすい時間帯にも非常に印象のある展開を組み込んでおり、そこからラストに繋げる流れがとてもすごいなと思います。

(追記)
ルーキー4位&総合10位おめでとうございます!


次もルーキー枠からこちらを。

今回のイベントで最も躍進された方々のうちの一人ではないでしょうか。売れ筋の構成をしっかりと抑えつつ、3分強という短い時間の間にやれるだけのことをしっかりと詰め込んでいる印象です。ラストの不協和音気味のピアノも良い味ですね~

(追記)
ルーキー8位おめでとうございます!


次はリミックス枠からこちらの曲を。

ボッカデラベリタ自体が今売れ筋の曲ではありますが、原曲をしっかりと活かしつつも中毒性のあるドラムンベースに仕上がっており、何度でも聴きたくなります。実際何度もリピってますので!とてもいいリミックスだなあと思います!(語彙力の消失

(追記)リミックスランキング最終4位おめでとうございます!


3. 圧倒的な1200万パワーで殴れば優勝

今の売れ筋でなくても、恐るべきほどのハイクオリティですべてをなぎ倒せば優勝できます。ぶっちゃけOSTERさん枠。

公開後、2日間にわたってREMIXランキング1位独走状態でした。しゅごい。(さすがに今は2位になっているみたいですが…)
全人類は3939回拝聴しましょう。

(追記)リミックスランキングで最終1位取りましたね…さすがです!


4. ある方面に突き抜けすぎれば優勝

一芸に秀でていれば大抵のことは何とかなるのではないでしょうか。音楽というものは自由ですから。

早速ですが、頭おかしい(誉め言葉)
どんな発想をすれば公開されているstemデータを繋ぎ合わせて「リンちゃんなう!」を再現しようと思うのでしょうか…言葉のチョイスや組み合わせも絶妙なのでこれは是非優勝すべきだと思います。これぞニコ動って感じですね。いいぞもっとやれ

(追記)リミックスランキング最終5位おめでとうございます!


これも頭おかしい(誉め言葉)
ぼくは坐骨神経痛ではございませんので!!!!!!!
ボカロを聴かぬものはあほだそうですので全人類はちゃんとボカロ聴きましょうね!!!!!

(追記)総合3位おめでとうございます!


5. しっかりと宣伝も欠かさなければ優勝

急にマーケティング要素が復活しました。
当然ながら、これだけの曲が一度に公開されると「全部の曲を追いきれない」という前述の理由から中小のボカロPさんの曲はそもそも聴いてすらもらえない、という状態が発生します。(それでも聴いてくれる方々にはとても感謝ですね…)
というわけで、この状態から脱却するためにはまず「人目についてもらう」、つまり宣伝が必要となります。
ではボカロ曲における宣伝方法とはどのようなものがあるのでしょうか。

・注目されやすいサムネイルとタイトルを設定する
・Twitter等のSNS上での告知
・「ニコニ広告」等の動画サイトのシステムを利用した宣伝
・他者の動画上で取り上げてもらう(YouTuberやボカロ系のニュース動画等)

こんなところでしょうか?
一つ一つ簡単に解説しますと、

・注目されやすいサムネイルとタイトルを設定する
検索からやってきた方々がメインターゲットとなります。そういった方々が思わずクリックしてしまうような魅力的なサムネイルおよびタイトルを設定することで動画への流入を促します。

・Twitter等のSNS上での告知
情報の拡散がメインとなります。より多くの方々に知ってもらうにはうってつけです。TwitterであればRTをしてもらうことで自分の認知していない層へのアピールもできます。

・「ニコニ広告」等の動画サイトのシステムを利用した宣伝
動画サイトにアクセスした方にアピールできるチャンスになります。今回、ぼくの新曲のアナリティクスを見ると「いきなり!動画紹介」がトップでしたので、「そもそも見てもらえない」という状態から脱却するには手っ取り早い手段であるかと思います。(下の方でちょろっと詳細出そうかと思います。)

・他者の動画上で取り上げてもらう(YouTuberやボカロ系のニュース動画等)
これもアピールできるチャンスとしては大きいです。特に紹介元の媒体が大きければそれだけチャンスが増します。


その中でも個人的に、今回特に成功したのではないかと思っている曲がこちら。

ネタのキャッチ―さもさることながら、投稿日時及びイラストもかなり大きなウェイトを占めていると思います。

まず投稿日時ですが、
「2020/12/12 11:58」
初日の投稿ラッシュが一段落して、落ち着きをみせた時間での投稿でした。同時間帯での投稿数が少なければそれだけ相対的な注目度は上がります。

そしてイラストです。
イラストには最近人気急上昇中のsakiさんのイラストが起用されています。とてもかわいいミクですね。
ちなみにsakiさんのTwitter上のフォロワー数は2020/12/13現在で27000人ほどであり、恐らく大多数のボカロPさんよりはるかに多いと思われます。ここが大きなポイントです。
sakiさんが宣伝するだけで、この曲は27000人+α(RTする人の数だけ増える)のTwitterユーザーの目に留まる可能性があります。これは大きな宣伝効果になります。

最近のボカロ曲の再生数の推移ですが、1日である程度の流れが作れればその後も順調に伸びていくケースが多いです。(注目された曲はさらに注目されるという循環を生み出しています。)この曲は「キャッチ―なネタ」「投稿日時」「イラスト」の3つの要素が巧く絡み合い、多数の曲が込み合うイベントの中でもスタートダッシュでぶっちぎることができた例かと思います。

(追記)ルーキーランキング最終2位&総合6位おめでとうございます!



番外:個人戦績

ここからは、今回投稿したぼく自身の曲の伸びを前作と比較してみたいと思います。

■今作(投稿日時:12/11(金) 18:39)

■前作(投稿日時:11/29(日) 18:39)


以下は今作と前作のアナリティクスです。

■今作

画像1

画像2


■前作

画像3

画像4


前作は第1回プロセカNEXT応募曲、今作はボカコレ参加曲という違いはありますが、それ以外の条件はさほど違いはないかと思います。
その中でも前作と今作の大きな違いは「いきなり!動画紹介」の割合の伸び方でしょうか。今作のアクセス元集計では「ニコニコ内検索」を抜いてトップに躍り出ました。ぼくは弱小ボカロPでありますが、そういった人でもこのような大きなイベントにおいて注目度を上げられるという点では「いきなり!動画紹介」は十分に利用価値はあるのかなと思います。(今回は90%OFFクーポンが当たったのでラッキーでしたね!)
あとデバイスについて「PC版ニコニコ動画」からの流入が安定多数を占めているため、引き続きこちらの方々に向けた導線設定を強く意識する必要はありそうですね。

再生数については直近2日間の合計では微減となっていますが、マイリス数やいいね数では既に上回っておりますので、結果としては良いフィニッシュとなったのではないでしょうか。これからも良い曲をより多くの方に送り届けられるように励みたい所存です。


総括

というわけで、今回は「なぜこの曲は伸びたのか?」ということについて見てまいりました。聴いた限りですがどの曲もクオリティがとても高く、しかしどの曲も押しなべてクオリティが高いが故に結果的に再生数が横ばい状態になってしまっている感もあります。何らかの手段でこの横ばい状態を抜け出さないと注目されないのは少々つらいところですね…
個人的には良い曲とたくさん出会えたので次のボカコレ開催も楽しみにしておりますが、一方で今回再生数が伸び悩んだ方々への一助となれば幸いです。(果たして一助となるのだろうか…)やはりPとしては再生数は気になっちゃいますもんね…

では今回はこれにて。次の記事はたぶん2020年下期のボカロ曲10選でしょうか?またお会いしましょう!

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