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ペソア屋(MERCADO PESSOA)、始めました

「どうやらペソアが好きらしいんですよね。」

ふと、そんなことをあらためて思ったのは、つい最近でした。

どうしてそんなことを思ったのかというと、実は好きすぎてペソアの本とかグッズを売るサイトを作っちゃったからでした。


「なんでそんなの作っちゃったの?」と自分でも思う。
これはペソア好きな私が、ペソアを売るためのECサイトを作っただけの話。
お時間よければ、少しお付き合いください。

そういやなんでペソア好きになったんだっけ?
私は本屋→出版社→保険→出版社→出版社、みたいなキャリアを歩んでるのですが、少し前にペソアを売ってた出版社は辞めて、現在は海外文学や人文とはまったく関係ないジャンルの出版社で働いてます。働きアリ並みに働いてます。

私はそもそも人文や海外文学、そして本が好きだったので出版社を志望していたのですが、
大学を卒業したものの、出版社にはなかなか入れず(当時の応募の仕方を考えると当たり前だといまは思う)、書店を経て、最初に入ったのはサブカル系の出版社でした。まぁ本好きと公言する学生の常で、当たり前のごとく編集希望で入ったものの営業に配属され、働いてみたら編集になるような知識がないことに気づき、同時に出版社営業の楽しさを知ったため、そこからずっと営業をやっています。

私が営業が好きな理由に、本の話がいろんな人とできるというのがあります。
「どんな本が好きですか?」と聞くと大概の取引先の人が好きな本とかおすすめの本を答えてくれる仕事というのは、世の中にそうないと思います。
もちろん「本は別に好きじゃない」という人もいるんですが、私としてはそれはそれで面白くて、数多ある仕事からなんでそれを選んだのか?というのも気になるし、
同時にそういう人がいることこそ、本屋とか出版業界の本来の幅の広さというか余裕がまだあるんだな感じられるいい話だ、と思えてそれがちょっと楽しいんですよね。
実際、もし本好きばかりしかいない業界だったら、なんかちょっと気持ちが悪い気がするんですよね。
いろんな人が、お金を稼ぎたいとか、いい本を出したいとか、楽したいとか、本を通じてなにかしたいというような思いやアイディアが出すから、今の形があるんだと思います。もちろんシステム面で旧弊というか、悪いこととかもたくさんあるんですけど。だから本屋や出版社の若い人の多くが辞めて、別業界にいってしまう現状はすごく厳しい現実だと思うし、まずいと思ってますし、若い人に報える業界にしたいなぁといつも思います。
という俺にもお金で報いてくれ!頼む!!

は!いかんいかん、つい本音が漏れ出てしまった。
とにかく私が「どんな本が好きなんですか?こんな本が私は好きなんですよね」と話をしながら営業していたあるとき、中央線沿線の海外文学好きの読書会にお声がかかるようになったんです。
そしてその読書会で、あるときペソアを取り上げる回があったのです。

言葉には力がある、と思います。
いや、なんか突然スピリチュアルみたいな表現になってるけど、そんなつもりのやつじゃないですよ!

私は言霊というものは信じていないのだけれど、自分が好きだと話すことで自分が更に好きになっていって、誰かがそれを聞いて人が集まってきたり、話が集まってきたりして、さらにそれが好きになる、という循環みたいのはあると思っています。
そういう意味で、言葉にすることには意味があると思うんです。

私の場合はまさにそれで、「ペソアを好きだ」と話していたら人との縁があり、そこから更に自分が好きになり、物とも縁ができて、とにかく好きになる、という循環でした。

私とペソアの出会いは紀伊國屋書店新宿本店で働いていたとき、先輩社員に声をかけられたときだった。
その先輩社員は海外文学と本に詳しく、とにかく私にいろいろ教えてくれた。路上喫煙してたら路上喫煙取締のおじさんに罰金請求されたものの、口でとにかく戦って無理矢理説得(?)して逃げ切ったような反骨心を持った大変良い先輩だったが、その先輩が私にペソアのよさを教えてくれた。
同時に別の先輩にも良さを語ってもらい、また共有したことでペソアがすごく良いということを知りました。
人からの紹介って大事ですね。

そんな話があったあと、ポルトガルへ行く機会があって、ペソアがいかにリスボンでリスペクトされてるかを知り、お土産にペソアTシャツを見つけて買って、家に帰って読み直したときに、ペソアのことを好きになったのでした(ここら辺の話は前にも書きました)。

話はここで中央線の読書会に戻ります。
ペソアの読書会に、私はペソアTシャツを着て参加したのだ(今思えばなんでそんな馬鹿なことしたのかと思うのだが)。
これが割とウケた(滑ってもいる)ことで、「あ、私はペソア好きなんだな」と、自分を好きに追い込んだのでした。

縁というのは不思議なもので、そんな話があったあと転職で入った出版社が、まさかのペソアの単行本を初めて日本で出した出版社という奇跡があり、しかもそこでペソアの本を復刊することに関われたことが、私を決定的にペソア好きにしました。

ところで好きってなんだっけ?
で、こんなことまで書いておいてあれなんですが、そもそも「好きというのはなんだろう?」って思うわけです。
果たして自分は本当にペソアが好きなんだろうか?と。

私は別にペソアに詳しいわけでもないし、ペソアの本を毎日読んでるわけでもないし、ましてや死ぬほど読み込んだわけでもない。ポルトガル語もできないし、英語もできないので、本来詩の音律の良さみたいなこともわからないわけです。
世の中には本当に"マスター"みたいな人がいて、寝食を忘れて好きなものに没頭する人がいるじゃないですか。
私が知っている世界的に見たらとっても小さな関係内でさえ、「好き」を公言してる人は文字通りすごい熱量で、睡眠を削ったり、他の何かをする時間を削って、創作したり勉強したりしてその道を究めている。
ところがどっこい私は、お酒を飲む時間も、睡眠時間も、ゲームする時間も削れやしない。
熱の温度が低すぎる、と自分でも思います。世の中の「好き」の温度が220℃のケーキ焼けるオーブンだとしたら、私の好きはちょっと風邪引いたときの38℃の人くらいかな、と思うのです。
焼けないどころか自分がちょっとつらいだけ!

そんな熱意から考えると本当に何かを好きなことってあるのか?と思います。
私はゲームも好きですが、それもかなりながらです。お酒は飲むのがすごく好きですが、かといってお酒に詳しいわけじゃないし、居酒屋とかもたくさん知ってるわけじゃない。
飲んだら全部忘れる、そこがお酒のいいところ!

また話が逸れた!
そんなわけで「何かを好き」と公言するのも憚られるというか、なんというか、上には上がいる、みたいなことを自覚してしまうがゆえに、口幅ったい気がしてしまうんですよね。

で、そんなことを思いながら最終的な自分の答えは、「まぁでも誰になんと言われようと、誰と比較しても、やっぱり私はペソアが好きなんだよな」ということでした。
「うわぁ…すごくつまらないし、なにより陳腐」ですよね!
私も思います!
でも、みんながこうやってすぐに出せる回答にぐるぐる迷ってたどり着く性分なんだ!
みんながすぐにできることができなくて、でもプライドばっかり高いから傷つきながらもなんとかやってきてるんだ!
不器用なんだ、許してくれ!

私は結構「好きを口にする」いうのはずっと心に真摯な言葉だと思ってきて、それでいて苦労したと思うのですが、実際には多くの人の「好き」という感情は悪く言えば浅薄で不正確だけど、よく言えば大丈夫もっと多面的で多様な気がする。

特に好きでも嫌いでもない人にも好きだと言えるわけです。たとえば、恋愛対象にしてなかったけれどとりあえず付き合うか、みたいなのがいい例で、
私は昔はそういうのが真摯じゃないし、純粋ではないし、良くないことだと思っていたので、逆に人間関係がうまくいかないことの原因の一つだったと思います。
特に好きでもない人間は、仲良くない、みたいな形で敢えて友達にならなかった(なれなかった)人も結構います。

自分の嫌いな先輩が、恋愛とか関係なく後輩として自分のことを気に入ってくれているとき、先輩からの好意を感じて、それに気を使って好きと言える。(まぁちょっとこれは特殊かもですが)
もちろん、本当に心から好きな人にも好きと言える。
そういう風にいろんな人にいろんな「好き」という言葉が拡がりがあることを最近知りました。
いまでもそういうことができる人がうらやましい、と思っています。

そんなわけでペソア売る場所を始めました
盛大に話が逸れてしまったので戻します。
まぁ私のペソア好き度合いなんて、人と比べたら全然大したことないかもですし、詳しくもないんですけど、それでもやっぱり自分の心に「好き」は残るわけでこんなショップを立ち上げてしまいました。

読書会でペソアシャツを着たことから始まっているため、私にとってのペソアはそもそも本だけじゃない、というのもあって、ショップでは本だけじゃなくグッズも扱う予定です。

これはもう私の性癖みたいな感じだと思うんですが、なんかアイドルやキャラが好きなのと一緒で、ペソアのなにかを欲しくなっちゃうんですよね……
サラマーゴの『リカルド・レイスの死の年』も好きだし、ペソアのシャツも好きだし、ボールペンも欲しいし、ペソアの異名を使ったバンドAlexander Searchも好きだし(Spotifyで聴いたらめちゃくちゃかっこよかった)、マンガもいいし、ボードゲームもいいし。こんなに拡がりのある作家もなかなかいないなぁと思います。
ペソアが主人公のシュミレーションゲームで、選んだ選択肢でエンディングが違う異名者になってくゲームほしい。誰か作ってくれ!
(グッズ作るためのデザイナーの方も探してます、よろしくお願いします。)。

私は本屋でバイトしてたことがあるとはいえ、社員だったわけではないので、仕入れのことや経営のことを習ったわけでもないし、棚揃えのことがわかるわけでもないので、ほんとおこがましい話なんですが、少しでもペソアの良さを人に広める力になりたいという気持ちと、自分がやっぱりペソアに関わっていたい、という気持ちでこのサイトを始めました。

(残念ながら私は100億を持って毎日プライベートビーチで酒を煽るような豪遊生活をしてるわけではないので)生活のための本業もありますし、私生活もあり、なにより心の中のルフィが「よし、とにかくやってみっか!」と言って、勢いで始めたものですので、更新が遅くなったり、サイト名とかロゴとかいろいろ変わるかもですが、ほそぼそとでも続けたいなぁと思っています。

いろんなペソアの本やグッズが集まるといいな、

そんなわけでこれからどうぞよろしくお願いいたします。


※今後こちらのnoteはMERCARD PESSOA用に順次移行しようかと思ってます。

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