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日本初の「地域おこし協力隊」のサポート会社(新潟県十日町市)

地域おこし協力隊の募集、採用、サポートは一般的に自治体が行います。

しかしながら、地域が求める人材と採用した隊員との間でミスマッチが起きたり、隊員が日々の活動を行う中で適切な相談相手がいないため、気づいたら孤立してしまっているなど…せっかくの人材を活かしきれていないケースは全国的に散見されます。

地域おこし協力隊の先進地として知られる新潟県十日町市。ここでは全国初となる地域おこし協力隊のサポート会社が存在します。その名は「里山プロジェクト」。行政と行政慣れしていない協力隊の間に入ってサポートを行うことを目的にした組織で、同市の協力隊OB・OGによって構成されています。

代表の小山友誉さん(右)、前代表の髙橋治夫さん(左)

里山プロジェクトは市から地域おこし協力隊に関する全ての業務を委託されています。地域おこし協力隊の経験者ならではの知見が活動でフルに活かされているのがポイントです。

まず協力隊を募集したい集落のことをよく知っているため、その集落にどのような人材が必要なのか深く認識しています。そのうえで集落とよく相談して、協力隊の募集・面接・雇用を行います。だからミスマッチがおきません。

採用された隊員は里山プロジェクトの社員となります。自治体の会計年度任用職員(通常の地域おこし協力隊の雇用形態)ではないので、月~金、9時~5時のような働き方は求められません。地域のニーズに合わせたフレキシブルな働き方ができます。まさに地域ファーストです。

隊員から受ける相談はかつて自分も経験したことばかりなので、適切なアドバイスができます。前のめり過ぎて、地域とうまくいかなくなっちゃった隊員がいたら、間に入ります。

さらには受け入れ地域の世話人(意見が偏らないよう1人ではなく3人置く。その内1人は女性)、拠点施設管理者(行政の窓口)、隊員、里山プロジェクトの面談も定期的に行っています。そして退任後の進路まで。万全なフォロー体制です。

里山プロジェクトがサポート事業を始めた結果、現在の十日町市の地域おこし協力隊員数は22名で過去最多。任期終了後の市内定住率も72%(里山プロジェクトが設立した2012年は50%)と過去最高値となっています。

見逃せないのが、里山プロジェクトならではの独自の研修です。

主なものとして、中山間地域で農業をするうえで重要な「中山間地直接支払制度」の制度理解研修を新人隊員に行っています。

高齢化や人材不足で補助金の申請ができない集落は少なくありませんので、事務作業を隊員が支援できるようになれば大きいです。耕作放棄地対策になります。


代表の小山さん 私と同じ1978年生まれ

代表の小山さん(東京出身)は総務省の地域おこし協力隊制度が始まった2009年に十日町市の地域おこし協力隊に着任しました。

3年間の任期中は「新聞配達以外に目立った実績はない」と話されていましたが、豪雪地帯の新聞配達は想像を絶するものがあります。

そもそもなぜ新聞配達をするのかというと、十日町の山間部では一軒一軒の家が離れているため、新聞販売店が各家に配れないからです。地域のどこか一カ所にまとめて配達された新聞を仕分けして、それを誰かが各家に届けなければなりません。

小山さんは高齢で体力の限界を感じた前任者に頼まれて始めたそうですが、現在まで13年間続けています。それが地域の信頼につながっています。

小山さんから地域おこし協力隊で活動している方々にメッセージをもらいました。受けとめ方は人によって異なると思いますが、とても印象に残りましたので、以下に転記します。

生活のことを考えない。勇気をもって地域に飛び込む。素直に地域の人の話を聞いて、自分ができることを一生懸命やる。それだけだと思います。

どうしても今の人たちは今月あといくらないと暮らせないと考える。それやっちゃうと自分のことばっか考えちゃう。それも大事だが、地域のために頑張る方がいっぱい仕事はあるし、結果的にお金もたくさん稼げるようになる。自分の生活のお金を稼ごうと思っているうちは、その小さなものの中に収まってしまう。

お金って気になると思うが、一回それを切り捨てて地域のために自分が何をできるのか。思い切りやってほしいです。ていうところが私の場合、新聞配達だったり。自分の利益を考えない。自分の時給を考えない。

どこまで成果が上がっているのかに全力を尽くしてみると、あとに道ができていたり、お金がついてきたりする。できる人、できない人いると思うが、ぜひチャレンジしてほしい。


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