ドリーム・シンバル試奏会 〜夢のシンバル探検隊〜

●はじめに

みなさんこんにちは。私はシンバルが大好きです。そして私にはシンバルが好きなドラマー仲間がおります。皆それぞれに演奏や楽器を模索し続けてきた強者ばかりですが、時々集まっては楽器屋を巡ったり、シンバルのハンマリングやレイジングの実験なんかも行ったりしています。このメンバーのことをここでは「夢のシンバル探検隊」と呼ぶことにします。これは大井澄東さんが命名したものです。いい大人がこんなこと言っていて良いのでしょうか、と思うところもありますが、皆良い演奏を目指して演奏や楽器を追求しているのですね。

さてそんな私達に、シンバル試奏の機会が巡ってまいりました。普段であれば、シンバルを持ち寄ったり、楽器屋に押しかけては迷惑も顧みず片っ端から試奏しまくる私達ですが、パッド・コーポレーションという楽器輸入代理店( http://www.pad-corp.com )の佐藤さんからお声掛けをいただき、ドリーム・シンバルという、まさに夢のシンバルを試奏させていただくことになりました。

ドリーム・シンバルというのは、カナダの会社がディレクションをして中国の武漢で作らせているシンバルとのことです。実はこれ、随分前にヴィンテージ・ブームが起こり始めた頃に登場し、Vintage Istanbul K Zildjian、いわゆるOLD Kのようなサウンドでありながら、メジャー・メーカーのラインアップに比べて価格の抑えられたシンバルとしてマニアには知られておりました。ウェイトの軽い、薄くて柔らかいモデルなどは、かなりヴィンテージ路線を感じさせるものでした。佐藤さんによればここ数年でさらにクオリティが上がって安定しているということです。

ドリーム・シンバルのサイト( http://www.dreamcymbals.com )を見てみると、Bliss, Contact, Enegy, Vintage Bliss, Dark Matter, Custom Dreams, Ignitionなどのシリーズがあります。今回試奏させていただいたのは、BlissとVintage Bliss。ジャズ〜アコースティックな場面に似合いそうな、いわゆるハンドメイドの渋カッコイイ系のようです。さて、それでは試奏の様子をお伝えしましょう。

●ドリーム・シンバルのBliss、Vitange Blissシリーズを叩く!

まず、今回の試奏メンバーを紹介します。河崎真澄さん、大井澄東さん、山本拓矢さん、そして私、山村牧人です。試奏は、足立区西新井にあるケン・ミュージック・スタジオで行いました。ここのスタジオはドラムセットを持ち込むのにとても便利なのです。そして私は、ここに併設されているリズム教育研究所というところで講師もやっています。私の担当は毎週土曜日です。皆さん来てね。いえステマじゃないです。実はパットコーポレーションの佐藤さんも、昔はこのドラム教室に来ていらっしゃいました。いろいろとご縁があります。

スタジオには、佐藤さんが持ち込んだシンバル達と、愛知県豊橋にあるシライ・ミュージック製作の「Keet」というドラムセットのプロトタイプを持ち込んで試奏しました。Keetについては、こちらをご覧ください( http://shiraimusic.shop-pro.jp )。このドラムセットの販売ページにはドリームシンバルのContactシリーズも掲載されています。「アコースティック・ドラムセット」と命名されたこのセットのコンセプトと、BlissやVintage Blissの相性は良さそうだなと感じておりました。

試奏したシンバルは以下です。

<Dream Cymbal:ドリーム・シンバル>

<Bliss Series:ブリス・シリーズ>
14” Hi Hat
15” Hi Hat
16” Crash
18” Crash/Ride
20” Ride
20” Crash/Ride
22” Ride
22” Crash/Ride
24” Small Bell Flat Ride
ブリス・シリーズは、伝統的なハンドハンマー製法によって作られています。ウェイトは控えめで柔らかく弾力に富んだ叩き心地で、ピアニッシモのレスポンスも非常に良好、倍音も豊かで、ジャズ〜アコースティックな演奏を意識したシンバルといえるでしょう。
http://www.dreamcymbals.com/instruments/cymbals/bliss


<Vintage Bliss Series:ヴィンテージ・ブリス・シリーズ>
20” Crash/Ride
22” Crash/Ride
ヴィンテージ・ブリスは、ブリス・シリーズからさらにカップを低く、ボウのテーパーを緩やかにすることで、より一層メローで深みのあるシリーズです。実際に叩いてみると、ヴィンテージ感溢れるしなやかさと、爽やかな明るさとのバランスの良さを感じます。
http://www.dreamcymbals.com/instruments/cymbals/vintage-bliss


<Drum Set>
Shirai Music Keet Prototype
18"BD, 10"TT, 14"FT, 14"SD
http://shiraimusic.shop-pro.jp その他、Slingeland 14"SD、他

全員でシンバルスタンドに立てた状態で軽く叩いてみてから、サイズ毎にドラムセットにセッティングしてみました。まずは20インチを中心に、左手側からBliss 14" Hihats → Bliss 20" CrashRide → Bliss 20" Ride → Vintage Bliss 20"で試奏。そして22インチを中心に、Bliss 15" Hihats → Bliss 22" CrashRide → Bliss 22" Ride → Vintage Bliss 22"、その後Bliss 16" Crash、Bliss 18" Crash、Bliss 24" Small Bell Flat Ride Cymbalなど試していきました。

試奏の動画をこの記事の一番最後に置きました。各ドラマーの試奏シーンを抜粋していますが、時系列に並んでいますので、上記の順番で演奏しています。

全員叩き始めると、奏法を変えたりスティックを変えたりしながら、そして自分が叩いている時よりも、他のメンバーが叩いてる時に、ドラマー側や正面、スタジオの隅などでどう違うかなど、実際にライブなどで使うときに気になるポイントをチェックしていました。

●試奏を終えて

ひとつのセッティングにつき、一人5分を目安に試奏を進めましたが、いろいろ試しながら発見もあり、そう簡単に終わるはずもありません。あっという間に時間が過ぎて行きました。その後、スタジオのロビーでシンバル座談会となり、今回の試奏に絡んで皆でディスカッションをしました。これを読んで頂いたあとに動画を見ていただくと、各ドラマーの試奏のポイントがわかるところもあるかと思いますので、どうぞお一読くださいませ。

<試奏後のシンバル座談会>

【山村】さて今日はドリーム・シンバルの試奏をさせていただきました。ここからは、座談会ということで感想を出していきましょう。よろしくお願いします。

【山本】BlissのCrashRide20と22が、非常にタッチが良かったですね。使いやすそうです。

【河崎】【大井】クラッシュライドよかったよね。

【山本】最初にざっといろいろ叩いてみて、結構サウンドが違うので個体のバラつきなのかなと思ったんですが、Blissの3枚の中で比較すると、サイズ違ってもキャラクターは同じだったので、かなり安定しているんだなと。

【佐藤】ドリーム・シンバルの全体的な印象についてはどうでしょう。叩かれたことはありましたか?

【山本】楽器屋に置いてあるのを叩いた時には、コンタクトとブリスと...みたいにシリーズの違うものが混在していたので、変わったシンバルなのかなと思っていたんですが、今日シリーズごとに、これはこれ、これはこれ、と区別して叩いたらよくわかりましたね。

【大井】パッと見て外見的にはあまり違いがないから、同じものなのかなと思って叩くと、ぜんぜん違うって感じはありすね。

【山村】確かに、カップあたりをよく見ないとわからないかもしれませんね。

【大井】ジャズにも使えるし、バランスよく使えるのかなと思います。

【佐藤】音量が小さいという人もいるんですけど、そのあたりはどうです?

【大井】ドリームを叩いた後に、スタジオにあったジルジャンを叩いてみても、音圧感の違いはそれほど感じなかったですね。イスタンブールやボスフォラスなんかだとやっぱり混在させるのが難しいと感じるときはあるけれど、割りとスッと混ざるんじゃないかと。

【河崎】ここでいう音圧っていうのはどういう意味合いなんだろう。

【佐藤】粒立ちが悪いとかそういう部分もあるんじゃないかと。

【河崎】そういう意味では、ちょっとそんな部分を感じたところはあって。スティックを選ぶというか、僕のスティックはチップが小さいんでアタックが出にくいところはあって。それはやっぱりスティックで解消しないといけないのかな。チップが少しでも削れてたりすると、アタックは出なくなるね。山本君の使ってたナイロン・チップ(REGAL Tip社のJAZZ Eという、チップにギザギザが入っているタイプ http://www.regaltip.com/products/drum-sticks/e-series/jazz-e----525--x-16--)は良かったね。

【大井】僕はいつもメイプルのスティックを使っていて、今日もその、少し使ったやつで試奏したんですが、コツンと行かないとコツンとは出てくれない感じ、まぁ僕はそういうのが好きですけども、慣れていない人が同じスティックでやったら、全然音出ないかもな、とは思ったりしました。

【佐藤】音を出すのに難しいとかそういうのはありますかねぇ。スティックにしろ叩き方にしろ。

【大井】意識してコントロールしていないと、ブーンっていう音だけになっちゃう、なんてことはあるかもしれませんね。

【山本】24インチのあのカップの小さいやつ、あれは堅めにいい感じで音色が出る部分が狭くて、メインで刻む位置に置くのは結構疲れるかなと。

【山村】大井さんはメインにしたいと言っていたようですけれど...(笑)

【大井】サンバを叩いてみたときに、スティックの位置を少し変えると粒が出なくなってきて、これはちょっとシビアだなとは思いましたね。スティックとの相性を考えると、ここが限界かなというところも感じたり。

【河崎】あの22のやつとかは、ライド感もすごくあっていいですね。叩いてる側とドラムセットの向こう側でも聴こえ方は違うとは思うけれど、やっぱりもう少しアタック出てくれるといいなぁとは思いますね。

【山村】今日叩いたものはドリーム・シンバルの中でも、特にアコースティック〜ジャズに向けた柔らかいサウンドのシリーズなので、そもそもがそういうサウンドではありますね。ドリーム・シンバルっていうのは、あれ独特の根っこがあると思うんですけど、それはなんだと感じますか?

【山本】薄くてやわらかい、ってことでしょうね。ボスフォラスなんかは薄くても硬い、ジルジャンはちょっと厚みがあっても柔らかかったり。

【河崎】【山村】なるほど。

【大井】僕はパイステのFormula602のような感じもしましたね。

【山村】打感とか似てますよね。しなやかっていうか。

【大井】意外と癖があるようでいて、そこまではないというか。

【山村】叩いている時に感じる癖とは裏腹に、他の人が叩いているのを聞いていると、押し並べて案外まとまったトーンなんだなとおもうところはあったなぁ。そのあたりは、どうですか、河崎大先生!

【河崎】僕はもろジャズっていうドラマーじゃないんで、そういう観点からいくと、スタジオなんかで音の粒の出し方っていう意味ではちょっと難しいかなとは思う。今日のシンバルはほとんどがジャズ寄りだとは思うんだけれども、多様性が必要になってくると、使える場所は限られてくるかなとは思います。

【山村】なるほど。その中でハイハットは意外と鋭い面があって、ファンクなんかにもいいんじゃないかと思ったんですが、クラッシュライド〜ライドというラインナップに対して、ちょっとキャラが違うのかなと。

【山本】ハイハットは、カップがちょっと大きめで、他のものと少し違うなとは思います。音量は抑えめですね。

【大井】14インチのハイハットは、踏んで音を出すのが難しかったですね。昔持ってたフォーミュラー602がそうだったんですけど、絶えずこうハイハットを手で回していないとパフってなってしまって、チッと出てくれなかったりとか。15は、自重でカチッとなるところが出てくるんじゃないかなと。

【山村】今日使ったハイハットのスタンドも、ちょっとがっしりしたタイプだったので、もう少し細いものを持って来るべきだったかもしれませんね。

【河崎】僕も、14インチを叩いた時は、13インチのような感触で、15が14インチくらいの感じでしたね。音量は確かに小さいほうかも。

【山村】ドリーム・シンバルって、躊躇なく薄くするところあるよね。初代の頃から。

【河崎】そうとう薄かったね、14はね。

【山村】これは使い込んでいったらどうなるんでしょうね。少しミュートして叩いてみたときに、いい感じにまとまるようなところもあったと感じたんですが、たとえばどこかのライブハウスなんかで15年位経ったらどんなになるかなぁ。

【山本】全体的に薄いですから、どこまで持つのかなっていうのはありますね。他のメーカーのもので、薄いシンバルで1セット揃えて使っていたんですが、半年くらいしたらそろそろ寿命かなぁみたいに感じちゃったんですね。だから、錆だとかっていうより、金属疲労的なものが結構あるんじゃないかなと。

【山村】山本君の腕っぷしもすごいからね〜。

【大井】スパァーン!!!ってね。シンバルが一瞬で揺れまくってたね(笑)

【山本】一応、割ったことは無いですけどね(笑)

【河崎】僕は、あんまりそういうふうに育てるって考えはあんまりないかなぁ、うーん、どうなるんだろう。

【大井】僕としては、使い込んでいくというより、最初からそういう枯れた感じを持ったシンバルという認識ですね。

【河崎】そうだよね、そもそもそういう音だよね。

【大井】パッとジャズっぽい音がして、枯れた感じでサスティンが強く残っちゃうことも無くて、鳴りすぎずスッキリしていて。ライブハウスにこれが新品で置いてあって、今日はこれ使って〜って言われたら全然それで良いかなって。

【山本】それは確かにありますね!

【大井】あの店にはアレがあるから持って行かなくていいやっていう。

【山村】ライブハウスに是非置いてくれと(笑)!それ新たな需要喚起ですね。他にはどうですか?シンバルの批評っていうより、シンバル遊びとして、たとえばあれを改造しようとか(笑)

【山本】Vintage Blissは、あれリベットたくさん打って、ちょっと止まってる感じとかやってみたいですね。

【山村】あ〜!それいいかもしんないね!もっと大穴開けたりして。

【山本】そもそも、穴空いてないのに穴開いてるような音しますもんね。

【大井】たしかに、Vintage Blissは、確かにあれこれやってみたくなりますね。あれでもっとカップが大きかったらなぁとか。

【山村】Blissには24"っていうのは無いんですか?

【佐藤】無いですね。あとはContactシリーズにありますが。

【山本】NAMMショーで紹介されていた、表面をレイジングしていないやつとかは無いんですか?

【山村】よく知ってるねぇ。さすが博士(笑)

【佐藤】Dark Matterシリーズですね。それはこっちには入ってきてないですね。

【大井】メーカー問わず、海外では比較的ポピュラーなモデルなのにこっちには入ってこないものっていうのは時々有りますね。

【佐藤】代理店は、オーダーして作って送ってもらうという形で発注してるから、全部が全部扱えない場合もありますね。

【山村】シリーズ、モデル、サイズ...途方も無い量がありますからね。

【大井】ヘッドなんかでもそういうのありますよね。

【山村】今日試奏したBlissやVintage Blissっていうのは、いわゆる使いやすいシンバル達だと思いますか?

【山本】一般的なミディアム・ウェイトのライドがあるより、これがあるほうが嬉しいですね。

【佐藤】それはどういうところで?

【山本】やっぱりウェイトですね。ジルジャンのコンスタンチノープルなんかでも、出すぎちゃう時があるんですよね。もちろんそれがあのシンバルのアドバンテージでもあるんですが。

【大井】僕的には、ゴーンって残るところが無いのが、やっぱり扱いやすいですね。

【河崎】以前、大井さんにセット借りて本番やったことあったよね。あの時はコンスタンチノープルだったよね。

【大井】22"のBounce Rideですね。

【河崎】俺は、あの時ももう少しアタック出てほしいなとは思ったなぁ。あと、ああいう大きなハンマリングの凹みがあるシンバルって、スティックのリバウンドが予測できないのがダメなんだよね。いろんな方向にリバウンドしちゃう。

【大井】僕の場合は、これぐらい打ったらこれくらい、これぐらいだったらこれくらいって予測ができればいいんですけど、ちょっと叩いただけでも「ゴワーン」「ジイ〜ン」ってなるのがダメなんですね。そういう意味では、ドリーム・シンバルはコントロール効きますよね。逆に減衰は速いのかな。

【山本】そうですね。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   

【山村】今日はこうしてシンバル遊びってことで集まっていただいたんですが、今後、こんなことしてみたいってのはありますか?

【佐藤】たとえば、今まで見たことが無くて、試してみたいシンバルとかありますか?

【大井】僕は、同じモデル、同じサイズ、同じウェイトのシンバルを何枚か用意して叩き比べて、どれが一番いいかずっと比較しながら、何日たっても決まらないみたいな(笑)

【山村】その決まらないのを楽しむわけですか(笑)なるほど、シンバルを選ぶ難しさってありますよね。

【河崎】ライブハウスとかホールとか場所によって変わるからね。ドラム・セットもそうだけど。良いバランスだなと思っても、違う現場に行くとダメだったり。昨日は良かったのに、なんてのは多いよね。これはもう、結局自分の好みで信じてあげるっていうか。俺はこいつが好きだからって思ってあげることが一番大事な気はするんだけど。

【山村】選ぶと言っても、今日はこうしてご厚意で試奏ができますけれども、普通はできないことも多いですよね。楽器屋に置いてないとか、あっても何枚も叩いたら悪いのかなと遠慮してしまうとか。ま、ここにいる人はガンガン試そうとする人達ばかりだとは思いますけど、(笑)

【大井】使ってみて、違ったなって言って返しちゃうとかね(笑)

【山村】わはは。さすがにそれはできないですけど(笑)自分にとって何が決め所なのかを知るというか。それはもうある程度使っていかないとわからないわけですが、今日みたいな遊ぶ機会がたくさんあるといいなと。ドラマーが集まって、自分の楽器を持ち寄って叩くのとかね、やる人はやってますね。そう言う事なしにカタログばかりで決めていくってのは、入り口としては現実的なのでしょうけれど。

【大井】やっぱり、これが一番っていうのが無いのが面白いところで、仮にこれがベストっていうものがあって、みんなそれ使って皆同じ音ってのはつまらないし、ていうよりもむしろ、これ使いにくいんだけど、こんなの使ってんの俺だけ、みたいなのが面白い。これは俺だな〜みたいな(笑) だから、一番大衆ウケするものしか入ってこないのはつまらないし、それこそ、これは日本には無いってだけで、海外のものを取り寄せてみたくなったり、他の人には合わないけれど、自分にはぴったりくるというものが見つかるんじゃないか、それはもう幻想とも言えるんですけど(笑)

【山村】なるほど。山本博士はどうですか。きっとかなりのシンバルを試したんでしょうね。

【山本】なんかあの〜、3ヶ月くらい使うと、新しいの試したくなるんですよね。このシンバル・セットは完璧だ〜と思うものがあっても、しばらくすると、あ、これ面白いな〜っていう1枚を見つけて、そしてそれに合うものをまた揃えていってしまって...の繰り返しなので(笑)

【山村】そのときどき、周りの人達の影響とかもあるもんね。

【山本】そうですね。ある程度、流行りについていくのも大事かなと。なるべく新しいものは取り入れようとは思いますね。

【山村】自分にとっての定番っていうものができて、そしてそれをまた壊すときっていうのがあると思うんですよ。そうして壊したけど、また戻ったとか。そういうのはありますか?

【山本】ありますね〜。買って売って繰り返して、今持っているの4枚目、みたいなのもありますね(笑)

【大井】CDみたい(笑)さすがにシンバルで4枚目は無いな〜(笑)僕は、最初に買ったのが残ってますね。ずっと使ってきて、ときどき浮気もするんだけど、やっぱりそこに戻る。コントロールできる感が違うんですよね。こいつのことは、もう生まれた時から知ってるぞ的な。

【河崎】僕はジャズだけ演奏するっていうドラマーではないけれど、戻るっていう意味で言えば、仕事始めた頃に最初に買ったK Zildjianの20"Rideには戻るなぁ(Early American Kと呼ばれるライドを所有)。オールラウンドに使える。もちろん、ジャンルにもよってロックっぽいのはパイステ使ったり、フォーミュラもいいし。逆にシンバルによってインスパイアされる面もあるけれど。録音された音とかを聴くと、キャラクターがハッキリしてるほうがやっぱりわかりやすかったり。

【山村】河崎さんは、そのときの演奏ジャンルによって、それぞれ使い分けるカテゴリがあるってことですよね。

【河崎】そうだね。ジルジャンのA Customなんかはすごく使いやすいよね。良いところをもっていて、それでいてしなやかでもあって。

【山村】山本君もいろんなジャンルを演奏すると思うけど、そういう使い分けはあるの?

【山本】そうですね。ジャンルもありますけれど、ライブハウスのキャパとか。自分としては、音量とかの面でなるべくストレス無く叩けて、自分らしい音っていうのを探していて。もちろん状況に応じてちょっとハイハットを重いのに変えたりとかはあるんですけど、なにをやっても自分の音になるように。キース・カーロックなんて、この音でロックやるんだ、みたいなところあるじゃないですか。

【山村】ジャンルを越えても自分の音っていうのが認められてきているのはすごく感じるんだけど、自分はミッシェル・カミロやるときに22インチの薄いライドは置けないなとか、やっぱり8インチのタムにスプラッシュほしいなとか(笑)。そういう意味では、自分も、広目の場所でジャンル混ざってやるときにはパイステ持っていっておくとか。なんでも同じセットでやるっていう世界の良さもあるけど、やっぱりこっち使ったほうがわかりやすくてラク、みたいな時もある。

【山本】僕はそれはドラム・セットがそうですね。YAMAHAのPHX使ってますけど、どんなレンジでも出ますから。

【山村】セットが変わるとシンバルとのバランスも変わるよね。

【山本】それは、シンバルのセットの中でのバランスが変わらなければ良いですね。

【山村】なるほど〜。

【大井】僕はもう、タイコに関しては行ったその場所にあるものを使う、だからシンバルはいつも一緒、みたいな。でもなんでそれができるかっていうと、フォルテシモに限度があるというか、フォルテより下での表現が多いからかな。20代の頃は、どこでも自分のセットを持って行ってましたけど、いつの頃からかしなくなって、必要性も感じなくなって。自分の演奏を変えて合わせる。もちろん、いつもと同じバンドで、ロックな箱で大きな音でやることになった時なんか、もうシンバルが全然ついていかないこともあって、この子はこんなに弱い子だったの?みたいな(笑) でも、そこでシンバルを変えても演奏できないので、それでやっちゃうんですけども。

【山村】河崎さんはどうですか。

【河崎】持っていかないんだよね〜俺は(笑) あの箱は、ライドはいいのがあるとか、ハイハットはいいのがあるとか。

【大井】じゃ、ライドがある場合はライドは持っていかないんですか。

【河崎】そう、なるべく持っていかない(笑)

【山村】そのサボり感というか、達人な感じですね(笑)

【河崎】初めて行くところは、電話して聴いたりね。前に一度、店にあるだろうと思って行ったらスネアが無かったことがあって。

【全員】(笑)

【大井】で、どうしたんですか?

【河崎】いやもうタムで。トーンって音するからミュートして。なんかツケたんだよなあ。5円玉だったか。

【山村】なんでもいいっていう面もあるでしょうけれど、河崎さん結構楽器にはうるさいじゃないですか。

【河崎】そうかなぁ。

【山村】自分の楽器のこと、これはちょっとあぁだとかこうだとか。

【河崎】自分の楽器はね。

【山村】やっぱり所有してしまうと気になり出すってことですかね(笑)

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   

【山村】では最後に、ずばり!今⽇持って帰るとしたらなんですか?

【山本】Bliss CrashRide 20"と22"、そしてVintage Blissの22"ですね。実際買おうかなと思いました。

【大井】僕は15"Hihatと、18"のCrash Rideですね。

【山村】おおっ!被ってない(笑)

【河崎】20"のCrash Rideと、15"のHihatかなー。

【山村】僕も18"と20"の Crash Ride、そして22"のRideは、ちょっと使い込んで勉強したいです。あとは14"のハイハット、Vintageキャラでありながらキレの良いところを使いたいですね〜。

●試奏動画

4人が試奏している動画はこちらです!ドラマーそれぞれにシンバルから引き出そうとしている音に違いがありますね。

●おわりに

今回試奏したドラマー4人は演奏するジャンル、音量やタッチ、好みなど様々です。同じシンバルを、スティックを交換し合いながら試奏をしていきましたが、感想もそれぞれというところが面白いですね。ドラマーにとって、楽器を選ぶというのは、楽器店の有無、在庫の有無、試奏の可否、財布の事情などいろいろと難しい面もありますが、ドラマーのネットワークを広げることで、お互いの楽器を持ち寄って試奏し合ったり、代理店や楽器屋のご厚意でサウンドを知る機会が増えていくと良いですね。今回の文章と動画がどこまで参考になるかはわかりませんが、まずは実験的に進めながら、枯れ木も山の賑いとしてドラム界のさらなる盛り上がりを願っております。長々と読んでいただきありがとうございました!今後もなにかしらドラム&ドラマーのお楽しみ企画を載せていきたいと思います。

(左から、大井、山本、佐藤、河崎、山村)

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#ドラム #シンバル #楽器 #音楽 #試奏 

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