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女性が家事育児でキャリアアップするには

先日、オランダ時代に息子をベビーシッティングしてくれていた女性が日本に遊びに来ていたので、うちでのディナーにお誘いしました。

息子は当時、小学校中学年。わたしにとってとても苦しい時代でした。わたしはアレルギーや喘息からくる虚弱により、日本にたびたび長期避難していたのでした。元夫はフリーランスですがフルタイムに近い仕事があったし、わたしが息子のお迎えに行けないのは申し訳なく(オランダではセキュリティー上、小学生であればお迎えが必要)、それゆえベビーシッターが必要な状況に対して一方的に罪悪感を感じていました。

それに対して、彼女は言いました。「So what? 罪悪感を感じる必要はないわ。女だって男だって関係ない。稼がなければいけないのなら、そのためにベビーシッターを雇うのは必然でしょ。」

男女が完全に平等な、オランダならではの見解です。そんなオランダでさえ、アーティストのように中産階級以下であれば、ベビーシッターを雇うことは経済的にできず、女性がキャリアを犠牲にして育児をします。子供が10歳くらいになってようやく、パートタイムでじぶんのキャリアを取り戻す余裕が生まれます。彼女自身もまさに子育て中であり、その苦しみをよくわかってくれ、私の罪悪感を晴らしてくれました。(彼女をベビーシッターに持ち、ほんとうに良かった。)

日本には、女性の方が育児に向いているという社会的圧力が、厳然と存在します。確かにそうかもしれません。しかし女性にとって、いちばん苦しいのは「キャリアを犠牲にすることを当然とされる」ことではないでしょうか。キャリアとは、いちにちで築けるものではありません。それは、社会的な信用・信頼であり、それは他に変えられない唯一無二の価値です。「家庭のために」外に働きに出ている男性は、どれほどアクセク働かなければならないとしても、少なくともキャリアを築き続けることができます。

誰かがキャリアより育児を優先しなければならないなら、女性がそうするのが当然という風潮です。しかしキャリアをいったんやめてしまった女性には、社会はそれほど優しくはない。そこで気づくのは、キャリアは、「社会で自分を守ってくれる盾」だったということです。

夫の愛情にすがって生きる、つまり夫を「盾」とする生き方もあります。しかし男女の自由な出会いが許され、不倫が横行する現代、女性は常にそれが壊れるリスクに向き合うことになります。辛いですよね。保険をかけれるのなら、かけたいくらいです。だからといっていきなりベビーシッターを用意してキャリアを築き出すというのも、できない。

なので、この問題への解は、なかなか見つからない。であれば、女性はその立場を使い、「あたらしい学びの時間」と位置付けるのはどうでしょうか。つまり、じぶんのそれまでのキャリアにプラスアルファ、何かを加える、保険をかけるような感じです。

そういった考えから生まれたのが、香りソムリエ・アカデミーです。他でもない私自身が、家庭に入ってしまって悩んでいる間、その時間を使い倒して、香りや嗅覚、そして香水の勉強をしました。教材は日々の食材や料理であり、掃除(消臭・徐臭)であり、家事一般。嗅覚という新たな視点を家事に取り入れるだけで、とても面白い発見があり、毎日が楽しくなったのです。それまでのアーティスト活動に嗅覚という視点を加えた結果、「嗅覚アーティスト」のさきがけとなったのは、周知の通りです。

香りというレイヤーを、これまでのキャリアに足す。それだけで、ニッチでユニークなアイディアが生まれます。たとえばフラワーアレンジメントに香りの要素を足すとか。営業活動に香りの要素を足すとか。そうすると、人が寄ってきます(つまり、モテます)。キャリアを再開するとき、まったく違うスタンディングポイントから始めることができます。何より、香りは日常を彩り、楽しくしてくれます。

ちょっと長くなっていまいましたし、本題に沿わない部分もあったかと思いますが、香りソムリエ・アカデミーの設立意図をふと思い出したので、書き綴ってしまいました。

今日も明日も、香る一日を!


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