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「大丈夫」ってフクザツ……

つい先日のことだが、
<今晩、パスタなんだけれども。どう、食べられる?> と、旦那さんにLINEしたところ、<大丈夫!> と戻ってきた。
えーっと。この「大丈夫」は、「(今日は遅くなるので要りません)大丈夫です」という、"No,thank you." なのか、「(あ、食べられます)大丈夫」という "OK" なのか。
顔や声のニュアンスがわからないSNS上であるからして、こんなときは <食べるのね?>と、私から念を押さなくてはならない。

調べたところ、本来は "OK" という意味の「大丈夫」なのだが、最近は "No,thank you." で使われ始めて、辞書でも新しい用法として記載されだしている、とのこと。要するに若者コトバらしいのだ。

そういえば自分も「コーヒーもう一杯いかがですか?」と問われて、
「あ、大丈夫です」と答えること。よくある。
確かに「あ、いりません」とか「あ、結構です」とハッキリ断るよりも、なんだか「大丈夫です」のほうが、ぼやっとマイルドで、この曖昧好きな日本社会に向いているのかもしれない。
しかしそれにしても正反対の答えだから、ややこしいわ!


このように、タマムシ色の「大丈夫」という言葉は便利な反面、いろいろとフクザツな思い出がある。
特に疑問文。たまにだけれど、「大丈夫?」という言葉がけに自分がもやっと傷つくときがあるのだ。

近所の私の苦手ママは何かにつけて、いろんな人に「大丈夫?」と顔を覗き込んで聞いてくる。薄ら笑いを含んだ、優しさゼロ、助ける気ゼロの「大丈夫?」である。
ちょっと人がミスをしたり、笑いを取るために自虐的に喋ったりしたとき。心配するような体裁で見下してくる。
このマウント「大丈夫?」を浴びた場合、傷つくというよりかは、「またか」と苦々しく思う。ご近所付き合い&学校付き合いがあるから避けられないんですけどね……。
まぁ、これは論外のパターン。

それよりも私がもやっと傷ついたのは、人生で本当に本当に辛い時期に、「大丈夫?」と問われて困ってしまったときだ。だって、「大丈夫」としか返しようがないときって、あるじゃない? 弱音を吐きたくないときが。
そこで「大丈夫じゃない」と素直に ”HELP” を出せるのは、よっぽどの間柄であり、よっぽどの瞬間だと思う。踏ん張って頑張っていた自分が、無念の白旗を揚げるときなのだ。
個人差はあるだろうが、人間というのは、本当に辛いときほど助けを出せないものだと思っている。助けを求めることで、ずっと張り詰めたものが、まるでダムが決壊したかのように溢れ出てしまうという錯覚と、そこから自分を取り戻せなくなるような恐怖がつきまとうからだ。
もっと迷うのは、たとえ「大丈夫じゃない」と素直に答えたところで、相手だってどうしようもないとき。助けられないのに質問されても困るのだ。たとえば貧困だったり、病気だったり。正直に「大丈夫じゃない」と答えて相手を困らせても、こっちだってますます困惑する。
だから心を閉ざして「大丈夫」と答える。
まぁ、傷つく私もそのときは若かったのでしょうね。

そもそも、危なげだから「大丈夫?」と問われるのだ。
一人前にできそうにないだとか、なんだか苦しそうだとか、つらそうだとか、自分がマイナス地点にいるときが多い。だからプラスの地点にいる人から声をかけられると、余計に自分の立ち位置を意識してしまって劣等感で傷つく。
要は自分の心の余裕、心の持ちようなのだけれど。


もちろん、嬉しい「大丈夫?」もある。
たとえば道端でおばあさんがうずくまっていたら「大丈夫ですか?」と言葉がけをする。それはシンプルに「緊急の安否確認」だ。私も駅で倒れたことがあるが、「大丈夫ですか!?」という声がけにホッとしたことがあった。

私が大きな荷物なんかを持って困っているとき、「手を貸そうか?」という意味で「大丈夫?」と問われれば、「大丈夫! 自分でできそう! ありがとう!」だったり、「大丈夫じゃないみたい。お願い助けて〜」だったりと素直に言える。

こんなことをうだうだ考えているのも、私の友だちが今とっても苦しそうだからだ。
でも、私が助けられないことも知っている。近寄っても、元気のない彼女はいつもと違って心を閉ざしている。なんだかギリギリのラインで耐えているのも、肌でわかる。
私は彼女がふっと自分で乗り越え、「大変だったよ〜」とか「今、大変なんだよ〜」と言えるぐらいになるまで、見守るしかないのだ。

「大丈夫?」と問うのは実に簡単だ。誰でも優しさから気遣ってつい口についたこともあるだろうし、実際私もよく使う。
簡単に使いやすいフレーズだからこそ、よくよく相手を見て、一度立ち止まってから使おうと思う。

・ 手助けできないのに「大丈夫?」と聞かない。
・「大丈夫」と返ってくるのが前提で質問しない。
・ 相手が弱音を吐けそうな精神状態か、観る。
・ 声を掛けられそうだったら、「大丈夫?」の後に「一緒に考えようか?」など具体的に手伝う提案してもいい。「愚痴を聞こうか?」とか。
・ 私はあなたを気遣っているんですよ、という自分のパフォーマンスのためには使わない。

とかね。
私も、他人からの「大丈夫?」に傷ついている場合ではないのだ。
そう声を掛けられて、もやっとするときは、自分に凝り固まった自尊心があることに気がつくべき。
下手なプライドなどはさっさと捨てて、優しい手には「大丈夫じゃないみたい」と言ってみる。ときには、そんな柔軟さを持ちたい。



ここまで読んでくれただけで、うれしいです! ありがとうございました❤️