[メモ]イスラエル人の傍系(3)ミディアンの祭司イテロ
ミディアンの祭司イテロは、ミディアン人とレウエル系統のエドム人との子孫ではないかと前のメモで推測した。そして彼はケニ人とも呼ばれ、ケナズ系のエドム人とも近しい可能性がある。(前投稿参照)
"モーセのしゅうとであるケニびとの子孫はユダの人々と共に、しゅろの町からアラドに近いネゲブにあるユダの野に上ってきて、アマレクびとと共に住んだ。"
士師記 1:16
ネゲブはケナズ人の居住地であり、アマレク人もエサウの孫ケナズの兄弟の子孫である。
"エサウの子らの名は次のとおりである。すなわちエサウの妻アダの子はエリパズ。エサウの妻バスマテの子はリウエル。エリパズの子らはテマン、オマル、ゼポ、ガタム、ケナズである。テムナはエサウの子エリパズのそばめで、アマレクをエリパズに産んだ。これらはエサウの妻アダの子らである。"
創世記 36:10-12
このエサウの家系の重要性は次の次のメモで触れたい。
さてミディアンの祭司イテロ(レウエル)は、モーセの妻ツィポラの父であり、当然のことながらモーセの兄アロンの子孫ではない。
モーセの律法では、祭司の役目をアロンの子孫に帰している。
"彼らの作るべき衣服は次のとおりである。すなわち胸当、エポデ、衣、市松模様の服、帽子、帯である。彼らはあなたの兄弟アロンとその子たちとのために聖なる衣服を作り、祭司としてわたしに仕えさせなければならない。
…
アロンとその子たちは会見の幕屋にはいる時、あるいは聖所で務をするために祭壇に近づく時に、これを着なければならない。そうすれば、彼らは罪を得て死ぬことはないであろう。これは彼と彼の後の子孫とのための永久の定めでなければならない。"
出エジプト記 28:4・43
"彼ら、すなわちアロンとその子たちに帯を締めさせ、ずきんをかぶらせなければならない。祭司の職は永久の定めによって彼らに帰するであろう。あなたはこうして、アロンとその子たちを職に任じなければならない。"
出エジプト記 29:9
"アロンの聖なる衣服は彼の後の子孫に帰すべきである。彼らはこれを着て、油注がれ、職に任ぜられなければならない。"
出エジプト記 29:29
それにも関わらず、イテロは祭司であるというので、普通は彼は異教の祭司であるとされることが多い。しかし彼は驚くべき行動をとっている。
"そしてモーセのしゅうとエテロは燔祭と犠牲を神に供え、アロンとイスラエルの長老たちもみなきて、モーセのしゅうとと共に神の前で食事をした。"
出エジプト記 18:12
イテロはイスラエル民族の中で燔祭を執り行っているのである。さらにこれをモーセもアロンも民も神も承認あるいは黙認しているようである。
燔祭する資格の侵犯は違反行為として重大なものだったということは、サウル王の例からわかる。
"そこでサウルは言った、「燔祭と酬恩祭をわたしの所に持ってきなさい」。こうして彼は燔祭をささげた。その燔祭をささげ終ると、サムエルがきた。サウルはあいさつをしようと、彼を迎えに出た。その時サムエルは言った、「あなたは何をしたのですか」。サウルは言った、「民はわたしを離れて散って行き、あなたは定まった日のうちにこられないのに、ペリシテびとがミクマシに集まったのを見たので、わたしは、ペリシテびとが今にも、ギルガルに下ってきて、わたしを襲うかも知れないのに、わたしはまだ主の恵みを求めることをしていないと思い、やむを得ず燔祭をささげました」。サムエルはサウルに言った、「あなたは愚かなことをした。あなたは、あなたの神、主の命じられた命令を守らなかった。もし守ったならば、主は今あなたの王国を長くイスラエルの上に確保されたであろう。"
サムエル記上 13:9-13
つまり燔祭行為を咎められていないイテロはどういうわけかモーセらにとってもある種の正統性を持った祭司であったとも解釈できる。そもそも、アロンがナダブを設けるまでの期間、アロンの子孫が祭司とはなり得ないので、アロンの祭司職の前身があるとすれば、非アロン系かつ、ヤハウェからみても何らかの正統性を持った祭司がいても不思議ではない。
さて、創世記には、アロンに先立つ有名かつ正統のような扱いを受けている祭司が登場する。サレムの王メルキゼデクである。
祭司イテロは、実は聖書において祭司王メルキゼデクのような立ち位置にあるのではないだろうか。このメルキゼデクについて、次のメモで考えてみたい。
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