[メモ]イスラエル人の傍系(2)カレブの家系

前のメモでイスラエルの傍系には

ハラン系統(ロトの子孫)
ナホル系統(アラム人)
ハガル系統(イシュマエル人)
ケトラ系統(ミディアン人など)
エサウ系統(エドム人)
があり、互いに姻戚関係などを持っていたことを復習した。

さて、イスラエルの民の中にも、特にケトラの子の子孫とエサウの子孫と近しい関係を持った(かもしれない)人物がいる。

ユダ族のヘツロンの子カレブである。

"ヘヅロンに生れた子らはエラメル、ラム、ケルバイ(七十人訳 : Χαλεβ, カレブ)である。"
歴代志上 2:9

今のところいちおう、家系不明のユダ族のリーダー「エフンネの子カレブ」とこの「ヘツロンの子カレブ」が同一人物かどうかは不明、ということにしておく。実際、不明。タルムードでは同一視されているらしい。

"ヘヅロンの子カレブはその妻アズバおよびエリオテによって子をもうけた。その子らはエシル、ショバブ、アルドンである。カレブはアズバが死んだのでエフラタをめとった。エフラタはカレブによってホルを産んだ。ホルはウリを生み、ウリはベザレルを生んだ。"
歴代志上 2:18-20

カレブのエフラタ系の子孫には工芸従事者ベザレル(ベツァルエル)がいる。

"「見よ、わたしはユダの部族に属するホルの子なるウリの子ベザレルを名ざして召し、これに神の霊を満たして、知恵と悟りと知識と諸種の工作に長ぜしめ、工夫を凝らして金、銀、青銅の細工をさせ、また宝石を切りはめ、木を彫刻するなど、諸種の工作をさせるであろう。"
出エジプト記 31:2-5

歴代誌上2章では、ヘツロンとカレブの子孫のリストがいくつか続いた上で、再びエフラタ系の子孫に言及している。

"これらはカレブの子孫であった。エフラタの長子ホルの子らはキリアテ・ヤリムの父ショバル、ベツレヘムの父サルマおよびベテガデルの父ハレフである。"
歴代志上 2:50

ホル(フル)はアロンと並ぶモーセの代行者であり(出エジ17:12, 24:14)、ヨセフスによればモーセの姉ミリアムの夫であり、タルムードによればミリアム(エフラタと同一視)の子とされる。いずれにせよ、この家系は重要なメシア預言に関わる家系である。

"しかしベツレヘムエフラタよ、あなたはユダの氏族のうちで小さい者だが、イスラエルを治める者があなたのうちからわたしのために出る。その出るのは昔から、いにしえの日からである。"
ミカ書 5:2

ヘツロン-カレブ-ホル(フル)-サルマ-ベツレヘムの家系はおそらくエリメレクに繋がる家系であり、その嗣業はルツを通してヘツロン-ラム-アミナダブ-ナフション-サルマ-ボアズ-オベデの家系に継承される。エリメレクの子に対してボアズはレビレート婚の第二権者、つまり近い親族であったはずであり、同名の祖サルマが同一人物の可能性も検討が必要かもしれない。(ルツ記参照。) この話はまた今度。

さて、ここからが重要。

"サルマの子らはベツレヘム、ネトパびと、アタロテ・ベテ・ヨアブ、マナハテびとの半ばおよびゾリびとである。またヤベヅに住んでいた書記の氏族テラテびと、シメアテびと、スカテびとである。これらはケニびとであってレカブの家の先祖ハマテから出た者である。"
歴代志上 2:54-55

カレブの家系はケニ人(Κιναιοι)と関係があるらしい。レカブ家は列王記下10章やエレミヤ書35章でも言及されている。このユダ族の首長の家とケニ人の関係はおそらくカナン侵攻の頃から近しかったのだと思われる。

"ユダはまずヘブロンに住んでいるカナンびとを攻めて、セシャイとアヒマンとタルマイを撃ち破った。ヘブロンのもとの名はキリアテ・アルバであった。またそこから進んでデビルの住民を攻めた。(デビルのもとの名はキリアテ・セペルであった。)時にカレブは言った、「キリアテ・セペルを撃って、これを取る者には、わたしの娘アクサを妻として与えるであろう」。カレブの弟ケナズの子オテニエルがそれを取ったので、カレブは娘アクサを妻として彼に与えた。アクサは行くとき彼女の父に畑を求めることを夫にすすめられたので、アクサがろばから降りると、カレブは彼女に言った、「あなたは何を望むのか」。アクサは彼に言った、「わたしに贈り物をください。あなたはわたしをネゲブの地へやられるのですから、泉をもください」。それでカレブは上の泉と下の泉とを彼女に与えた。モーセのしゅうとであるケニびとの子孫はユダの人々と共に、しゅろの町からアラドに近いネゲブにあるユダの野に上ってきて、アマレクびとと共に住んだ。"
士師記 1:10-16

カナン侵攻時に、エフンネの子カレブに率いられたユダ部族はキリアテ・アルバを奪い、のちにヘブロンの名が付けられることになった。ヘブロンとは、ヘツロンの子(エラフメエルの兄弟)カレブの、孫の名前である。

"エラメルの兄弟であるカレブの子らは長子をマレシャといってジフの父である。マレシャの子はヘブロン。"
歴代志上 2:42

ヨシュア記からすると、ヘブロンを奪取したのはエフンネの子カレブであり、ヘツロン家とは明示されていない。しかしヘツロン家のヘブロンの名が土地に着けられたということは、おそらく、エフンネの子カレブは、ヘツロンの子カレブと同一か、もしくはヘツロンの子カレブの子孫であると思われる。歴代誌2-4章の系図ではヘツロンの子カレブの子らを列挙しているなかで唐突にエフンネの子カレブの話が始まり、このカレブの父エフンネとは誰のことか全く不明となっている。

さて、ここで活躍しているオトニエルは、ヨシュアの次の士師である。彼はケナズの子で、エフンネの子カレブの弟かつ、カレブの娘アクサの夫であることがわかる。

"しかし、イスラエルの人々が主に呼ばわったとき、主はイスラエルの人々のために、ひとりの救助者を起して彼らを救われた。すなわちカレブの弟、ケナズの子オテニエルである。"
士師記 3:9

"ケナズの子らはオテニエルとセラヤ。オテニエルの子らはハタテとメオノタイ。メオノタイはオフラを生み、セラヤはゲハラシムの父ヨアブを生んだ。彼らは工人であったのでゲハラシムと呼ばれたのである。エフンネの子カレブの子らはイル、エラおよびナアム。エラの子はケナズ。"
歴代志上 4:13-15

ケナズの家系にケナズが出てくる。他のレビ族などの系図を見ても、同じ家の先祖の名を継がせる例は多くあったようである。(ここにも工芸従事者が出てくるが、フル-ウリ-ベツァルエルとは何か関係があるのだろうか?)
ここで、おそらくオトニエルの父ケナズは、エサウの首長ケナズの子孫であろうと推論してみる。

"エサウの子らの中で、族長たる者は次のとおりである。すなわちエサウの長子エリパズの子らはテマンの族長、オマルの族長、ゼポの族長、ケナズの族長、コラの族長、ガタムの族長、アマレクの族長である。これらはエリパズから出た族長で、エドムの地におった。これらはアダの子らである。エサウの子リウエルの子らは次のとおりである。すなわちナハテの族長、ゼラの族長、シャンマの族長、ミザの族長。これらはリウエルから出た族長で、エドムの地におった。これらはエサウの妻バスマテの子らである。エサウの妻アホリバマの子らは次のとおりである。すなわちエウシの族長、ヤラムの族長、コラの族長。これらはアナの娘で、エサウの妻アホリバマから出た族長である。
-創世記 36:16-18

それで、ケナズの子オトニエルはアクサの発言によれば「ネゲブ」の人である。ここにはモーセのしゅうとの家系であるケニ人が住んだとある。ケナズ人とケニ人の近しさはわからないが、とりあえずこの両氏族は同じ地域(ネゲブ)に住んでおり、両者ともヘツロンの子カレブとエフンネの子カレブの家系に近しかったと思われる。

さて、ケナズ人はおそらくエサウの家系だが、ケニ人とはだれの系統だろうか。これは簡単で、ケニ人はミディアンの家系である。

"さて、モーセのしゅうと、ミデアンの祭司エテロは、神がモーセと、み民イスラエルとにされたすべての事、主がイスラエルをエジプトから導き出されたことを聞いた。"
出エジプト記 18:1

そしてエテロの別名はリウエル(レウエル)である。

"彼女たちが父リウエルのところに帰った時、父は言った、「きょうは、どうして、こんなに早く帰ってきたのか」。"
出エジプト記 2:18

さて、レウエルもエサウの子の中に名がある人物であり、ミディアン人レウエルがエサウの子レウエルの子孫である可能性は十分にありうる。すでに、ミディアン系のケニ人と、エサウ系のケナズ人が近しい関係にあることはカレブ周辺の系図から読み取れるし、イシュマエルとエサウの系統が近しい関係にあったことも直接的に書かれている。ケナズの家系とレウエルの家系が近しい関係にあったとしても特に不思議はない。

というわけでちょっと強引だが、「ケナズ人、およびカレブの弟オトニエルの父ケナズは、エサウ系の首長ケナズの子孫である」「ケニ人、およびミディアンの祭司レウエルは、エサウの子レウエルの子孫である」と想定してみよう。

さて、ここで話はカレブの家系から、このミディアンの祭司の話に移る。

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