消費者金融からお金を借りた話 10

つづきです。

渡辺と一緒に働き始めて二ヶ月がたった。

新しい職場にも慣れ、せっせと働く日々を送っていた。

もちろん給料でお金は返済した。

そして4年目の大学がスタートした。

残りの単位はかなりあるが、留年が決まっていた私は残り2年あるのでマイペースで通っていた。

相変わらずパチスロには行っていたが+と-を繰り返し、借金をするほどではなかった。

真面目に大学に通っているうちにいつも隣に座る女性と仲良くなった。

彼女は私よりも二つ年下であるが年上の私に気を使いすぎることなくいい距離感のまま親交を深めていた。

そしてそんな毎日を過ごし、テストがおわり夏休みがはじまった。

夏休みと言ってもまわりの同級生は皆、就職活動で忙しく私はアルバイトをするかパチスロをするかであった。

ダラダラと過ごしていた私に大学のあの彼女から連絡がきた。

「暇なら遊びにいきませんか?」

あの旅行の一件以来すこしづつ傷口が癒えてきていた私は遊びにいくことにした。

彼女の最寄り駅まで向かい、駅と連結しているショッピングモールで1日を過ごした。

帰り際にまた遊ぶ約束をしその日は解散した。

帰宅すると彼女から連絡があった。

私は「例」のデートしたあとにある、今日はありがとう。また遊ぼうね。という連絡であろうと思った。

その通りであった。

しかし、そのあともメールのやりとりは続きその日から毎日連絡とりあう仲になった。

彼女と連絡をしつつも夏休みを過ごしていると大学から単位の通知がきた。

今学期はフルで単位をとることができた。

やればできるはずなのになぜやらなかったのだろう。

後悔したが、悔やんでいても進まないのですぐ切り替えた。

残りの夏休みもあとわずか。

ある日アルバイトをおえたあと一緒に勤務していた渡辺からパチスロの誘いがあった。

彼女とのデートも控えておりあまりお金がなかったがいくことにした。

長い時間ねばったが結果は所持金すべてを二人とも失った。

渡辺もそうとう負けこんでいるのか帰りは無言で、いつもの別れ道で手を振ることなくバイクで走り去っていた。

家に帰ると渡辺から連絡があった。

「明日もいこう。奨学金使う。まだ学費の納期まで日にちあるし。」

私はとめた。

もし奨学金を使ってしまうと学費が払えなくなってしまうぞと。

しかし彼をとめることはできず、私もついていくこととなった。

次の日、家まで迎えにきた渡辺は上機嫌だった。

支給された奨学金が財布にはいっているのだろうか。

渡辺は私に3万円渡してきた。

それを受けとりパチスロへとむかう。

昨日負けてるし今日は勝つだろう。
二人してそう思ったが、負けた。

奨学金をすべて使いきった渡辺はうなだれていた。

さらに私に3万円を貸し付けといて
すぐ返してくれるとありがたい
などと言っている。

もうしばらくギャンブルはやめようと二人して誓って帰宅した。

大敗をきっしてからしばらくして彼女との約束の日が近づいてきた。

お金がないので断ろうかと思ったが、ずいぶん楽しみにしてくれていたのでどうにか工面しようと思った。

またもや慣れた手つきで携帯を操作し友達にお金の催促をする。

今回は少し多目に借りることにした。

今思えば私の友達もよくお金を貸してくれたと思う。

だがそれは毎回きちっと返している「信用」があったからだと思う。

そして、彼女と遊ぶ当日がやってきた。

今度はこちらの家の近くにきてもらい遊んだ。

少し出費してしまったが楽しんで時間を過ごせた。

帰る時間になったが彼女がなかなか帰らないので私はそろそろ帰ろうかと提案した。

「うん…。」

と彼女はどこか寂しげだった。

私の家から彼女の家までは電車で二時間ほどかかる。

大学を中間地点としてちょうど反対の位置であった。

さすがに女性を一人で帰すのはあれかなと思い、車で送ることにした。

車で送っている最中、彼女は寝てしまった。

詳しい家の場所がわからない私は途方にくれた。

彼女の最寄り駅はわかるのだが、なんせその駅が大きいのでどっちの方向かもわからない。

仕方なくコンビニに車をとめしばらく待つことにした。

しばらくタバコを吸って待っていると彼女が起きてきた。

「ごめんね。寝ちゃってた。」

時間を確認するともう深夜の2時をまわっている。

道を教えてもらい家まで送ることにした。

彼女の家に着き、手をふって別れる。

そして私はナビを起動し車を自宅へと走らせた。

車内は音楽だけが流れていた。

次の日、彼女から連絡がきていた。

「昨日はごめんね。迷惑かけちゃった。一緒にいたかったから…。」

と照れるような内容だった。

去年の夏のことが少しトラウマになっていたのか、私は彼女に明確な答えを出せずにいた。

客観的に見ても彼女が好意を私に寄せているのはわかるが一歩踏み出すことができなかった。

まだはっきりとした関係になるのは私は無理だと判断し今のままの関係でいることを望んだ。

そして彼女もそのことを察したのかそのままの関係のまま接してくれた。

そしてセミが泣き止んだ頃、4回目の夏休みがおわった。

続きます。