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ランデブー(短編小説)

青春なんていくつもいらない。
彼と出逢ったとき、そう思えた。

彼はここの学校にはいない。
他校にいる。

だから、みんなには適当なことを言って
抜け出す。
そして、彼に会う。
密会だ。

密会。なんて魅力的な響きだろう。
スリリングでドラマチック。
道中、怪しくニヤニヤしてしまう。
だけど、マスクがあるから誤魔化せる。
だから、コロナ禍が継続してもいいと思う。

様々な柵から解放され、彼とのひとときを楽しむ。
バレないように。

彼のおかげで、ひとときが約2時間だと知った。
彼のおかげで、これ以上何もいらないと思えた。
彼のおかげで、このひとときのために、生きていけると思えた。
彼のおかげで、一つだけ、大きな幸せがあればいいとわかった。
彼のおかげで、ミニマリストの気持ちがわかった。
彼のおかげで、安心してぐっすり眠れる。
彼のおかげで、ダイエットできるようになった。
彼のおかげで、辛い勉強も耐えられた。
彼のおかげで、友人たちの憎まれ口も穏やかに流せるようになった。

まるで、羽が生えたような気分。

だけど、もう良い時間だ。
お別れの時間。

またね。といい、


ゲーム機の電源を切った。

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